結局ベンチは空いてなくて、川原の脇の石畳に座って屋台で買ってきたものを食べた。
そろそろ花火が打ち上げられる頃だ。
特等席とは言わないけれど、充分綺麗に見える位置だ。
焼きそばを食べ終え、あんず飴食べながら口が赤くなってる紅深がなんとも可愛い。
「...紅深。さっきはありがとな。」
「...えっ? なにが?」
「沢村の誘い、断ってくれて。」
「...当たり前じゃない。」
「...そうなのか?」
「翔くんと2人で...みたいんだもん。花火。」
ストレートにくるね。
そういうのさ...
止めらんなくなるから...
「.....あんず飴ごと、キスしていいか?」
「...だ、ダメ。 こんなに人いるのに。」
「...じゃあ、花火が上がったらな。」
「な、なんで?」
「花火みてるから、誰もみてないだろ?」
「……」
紅深がスッと、胸の中に入ってきた。
ぴったりと頬を胸につける。
……な、//////////
急な行動に心臓がドキドキしてきた。
両手の居場所を模索する。
「...翔くん。少しこうしてていい?」
「...いや、心臓に悪い。けど、、いい。」
その時、
ドーン
と 花火大会開始を知らせる大きな花火が上がった。
紅深が胸の中から体を起こし、花火を見上げる。
オレはその横顔をみつめる。
紅深の瞳が花火でキラキラ輝く。
「すごーい。大きかったね。綺麗だね。」
一気に、はしゃぐ紅深。
周りもザワザワと、盛り上がる。
「...翔くん、どうしたの? 今のみた?」
オレの視線が空ではなく、自分をみてることを疑問に思っている。
「...ああ。綺麗だよ。」
振り向いた紅深に
チュッと...唇に微かに触れるキスをした。
途端にまたしても真っ赤になった。
「...オレの紅深が、一番綺麗だ。」
ゆでダコ紅深が胸の中に戻ってきた。
それからオレの手を握り、
「...来年も一緒にこようね。」
可愛らしい約束ゴトをしてくるから。
「...ああ。来年だけじゃなく、ずっと...な。花火をみたり、旅行に行ったりして。ずっと...2人の思い出を積み重ねていこうな。」
心のままを言葉にして、手を握り返す。
コトノハ
言葉に宿るものがあるなら
オレの言葉に宿るのは
紅深への変わらぬ愛
ただその想いだけを紡いでいこう
オレはずっと...
『紅深の翔くん』だから
【 花火大会 】完