安倍首相は命令がお好き? 「同一労働同一賃金」にひそむ危うさ
http://the-liberty.com/article.php?item_id=10996

政府から、新たな「命令」が出されるかもしれない。

同じ労働に対しては同じお金を払うべきとする「同一労働同一賃金」だ。

安倍晋三首相は23日の一億総活躍国民会議において、「同一労働同一賃金」に向けた指針の策定を指示した。これは、同じ労働に対して、雇用形態に関係なく同じ賃金を支払うよう企業に命じるもの。政府から指針として出された後、労働関連法の改正を通して実現を目指す。

ここには、本欄や本誌で取り上げてきた「携帯料金値下げ」や「企業への賃上げ」要請と同じ危うさがひそんでいる。企業の裁量で決めるべき領域に政府が踏み込みすぎているからだ。


◎仕事の付加価値は単純に測れない

仕事の内容によっては、同じ内容であっても、生み出される付加価値を単純に測ることはできない。例えばサービス産業においては、仕草や表情、言葉をかけるタイミングが違っただけで、大きな差が出ることもある。同じ仕事内容だから同じ賃金というのはあまりにも大雑把だ。

もちろん、熟練度も判断能力も生み出す価値も、全く変わらないのに賃金に差があるのなら改善すべきだろうが、それは国が命令することではない。


◎総人件費の増加でリストラされる危険も

首相の狙いの一つとして、消費の冷え込みからの脱却がある。すでに行っている正規雇用の賃上げに続いて、非正規雇用の待遇を改善することで、消費を増やしたいということだ。

しかし政府の命令で賃金や待遇を改善したとしても、総人件費の増加につながり、リストラによるコストカットで失業者が増えて景気が悪化する可能性もある。しかも、人件費増加で会社が潰れても政府は責任をとってはくれない。

もう一つの狙いは「格差是正」だ。非正規雇用の正規雇用に対する賃金比率が7割~9割である欧州に対して、日本は6割弱と差がある。政府はこの格差を縮めようとしているが、格差を悪と決めつけて他国を真似しても、根本的な解決にはつながらない。

マルクス主義的な労働価値説や「格差=悪」といった考え方に基づく「命令経済」はもうやめるべきだ。消費税や規制、政府の介入といった経済発展を妨げるハードルを取り払い、自由な経済活動ができる環境をつくることこそ、経済発展につながる政府の仕事だ。(祐)

【関連記事】
2016年1月13日付本欄 携帯料金の「官製値下げ」が具体化 電波の自由化が政府のやるべき仕事
http://the-liberty.com/article.php?item_id=10