現代ビジネス

失われた20兆円
 '12年の年末、アベノミクスが始まった当初、日本のGDP(国内総生産)は順調な成長を続けていた。アベノミクス開始時のGDPが約517兆円。これが、'14年3月には実に約535兆円にも達した。

 ところが、'14年4月の8%の消費税率導入を境に状況が一変した。'14年度第2四半期までに、GDPが一気に約14兆円も急落してしまったのだ。

 その後もGDPは伸び悩み、直近の'15年7-9月期の数字は約530兆円。私の試算では、仮に消費増税さえしていなければ、GDPはその後も右肩上がりの成長を続け、今頃は約550兆円まで達していただろう。

 差額は20兆円。これだけの金額が、増税によって失われたのだ。

 この20兆円分の伸びがあれば、物価も上昇し、賃金も消費も好調という、良好な循環が生まれ、昨年中には「デフレ脱却宣言」ができただろう。日経平均株価も2万円台、為替も1ドル=120円の水準は保てたはずだ。

 そもそも、GDPの6割を個人消費が占めている以上、増税による消費減退でGDPが下がるのはわかりきっていた。

 増税の影響で失われた20兆円のGDPを国民一人頭で割ると、約15万円。所得が15万円も下がったと考えれば、買い物をする気が失せるのも当然だろう。

 いま、日本では格安商品ばかりが売れる、デフレ時代と同じ状況が生まれている。アベノミクスの目標である、2%の物価上昇に相反する事態が起きているわけだ。だが、経済学の常識からして、増税すれば物価が下がるのは自明の理だ。

 優秀なはずの財務官僚たちはそんなことすら理解できていなかった。自分たちの歳出権を拡大するため、なんとしても消費増税を可決させようと、「増税をしてもGDPは下がらない」という机上の空論を組み立て、押し切った。

5%に戻すしかない
 失われた20兆円のGDPから試算される消えた税収は約5兆円。一方で、消費増税で増えた税収は約8兆円。

 「3兆円多いのだから、増税のほうがいいのでは」と思うかもしれない。

 しかし、冷静に考えると、増税によって税収を8兆円増やすのと引き換えに、一人当たり15万円のGDPを吹き飛ばしてしまったのだ。これが日本経済に与えたダメージは、計り知れない。

 収益が上がらないのに税負担だけを増やしたので、企業は苦しみ、賃金も上がらない。消費も当然伸び悩む。アベノミクスの理想とは真逆の悪循環にはまりこんでいる。

 結局、無知な財務官僚が身勝手な思惑で推し進めた増税で、国民は8兆円を取り上げられたあげく、本来、得られるべき所得までを失ったのだ。

 この状況に、本来であれば、「責任をもって2%の物価上昇を達成させる」と明言している日銀の黒田東彦総裁こそが、「増税で物価が上がらないのなら、失敗を認めて減税するか、景気対策をしてください」と政府に強く進言すべきだろう。

 だが、黒田総裁は「消費増税で成長が大きく損なわれることはない」と繰り返し発言してきた手前、今更もう何も言えない。起死回生のマイナス金利政策も、消費増税のダメージが大きすぎたため、いまのところ本来の効果が出ていない。

 もし、安倍政権が予定通り、'17年の春に10%への増税を実行すると、どうなるか。8%増税の時と同じくらい、いや、それ以上の致命的なダメージを引き起こすだろう。

 3%の増税でGDPが14兆円急落した。ということは、上げ幅が2%なら、単純計算で約10兆円のGDPが一瞬で失われる。さらに、今回は中国経済失速などの要因も加わるため、長期的に考えれば、8%増税時を上回る規模のGDPが失われる可能性がある。

 消費増税が引き起こした負の連鎖から脱却するには、いますぐにでも消費税を5%に戻すのがベストなのは言うまでもない。だが、政府もいまさら引き返せないだろう。

 それでも、本気で景気回復を目指すのならば、取れる策は消費減税の他にもいくらでもある。

 例えば、国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を使う手だ。

 「外国為替資金特別会計」には円安の含み益の約20兆円、「労働保険特別会計」には約7兆円もの埋蔵金がある。これを原資に、国民に10兆円規模の給付金を配り、増税の痛みを和らげる。

 この「埋蔵金10兆円バズーカ」をぶっ放し、景気に良好な刺激を与えて上向かせたところで、日銀が一気に金融緩和を推し進め、国債の購入量を今の80兆円から100兆円まで増やす。

 極端な話に聞こえるかもしれないが、ここまでしてようやく、「8%増税の呪縛」は払拭される。

 それほどまでに、消費増税が日本経済に与えたダメージは大きい。

 「週刊現代」2016年2月27日号より



下の声明は幸福実現党の幸福実現党の 党首 釈 量子の2013年の時の意見です。正しかったことがわかります。



安倍首相の消費増税決断の表明を受けて

2013.10.01

2013年10月1日

 本日、安倍晋三首相が来年4月からの消費税率引き上げを正式表明しました。2009年の立党以来、私たちが一貫して訴えてきたように、消費増税が招くのは日本経済の沈没にほかならず、消費増税を中止に追い込めなかったことは残念でなりません。

 アベノミクス効果により景気は回復基調にあるとはいえ、大企業に比べ、中小企業の景況感の改善は遅れています。「増税されても価格には転嫁できず、会社の存続自体が厳しくなる」との切実なお声にも数多く接しています。

 賃金も上昇しておらず、景気回復を実感している方はまだまだ少ないはずです。ましてや、折からの円安進行や原発稼働停止の影響で電気料金や生活必需品の値上がりが相次ぐなか、ここに消費増税まで加われば、家計負担の増大で消費への悪影響は避けられません。

日本のGDPの約6割は個人消費であり、増税で可処分所得が減り、個人消費が落ち込めば、日本経済全体が大きなダメージを受けることは明らかです。

 また、1997年に消費税率が引き上げられた際は、翌98年に自殺者が急増しています。消費増税による経済的苦境から自ら命を絶つ方が増えるであろうことも想像に難くありません。宗教政党として、国民に不幸を呼び込む消費増税を決して認めることはできません。

 消費増税が景気の腰折れを招くのは明らかであることから、安倍首相は5兆円規模の経済対策を表明しましたが、これは本末転倒も甚だしいと言わざるを得ません。

必要なのは、増税ではなく経済成長です。私たち幸福実現党は、強力な金融緩和や法人税の大幅減税、高付加価値の未来産業の育成や、東京五輪開催を契機としたリニア新幹線の早期開業など交通革命の推進を提言しています。経済成長によって税収アップを図ることで財政が健全化し、また抜本改革を前提として社会保障制度を維持できると考えます。

 安倍首相に対し、消費増税は誤りであることを重ねて指摘するとともに、幸福実現党として、さらなる税率引き上げに断固反対を表明いたします。国民不在の意思決定により、日本沈没がもたらされようとするなか、私たち幸福実現党は夢の未来を切り拓くために、今後とも力強い活動を展開していく所存です。

幸福実現党 党首 釈 量子

http://info.hr-party.jp/press-release/2013/2292/