前回の記事で、手術(皮膚腫瘍摘出術)の流れについて説明しました。

分かりやすいとご好評をいただいたため、今回は皮下・軟部腫瘍の摘出術について説明します。

 

〜皮膚・皮下腫瘍切除術について〜 の回でも説明したように、「皮下腫瘍」は皮下の組織由来の細胞で構成された腫瘍であり、腫瘍の成分は皮膚表面とはくっついていません。そのため皮膚の切除は必要なく、皮膚は切開を加えるだけ(incision)で大丈夫です。

「皮下腫瘍」と「軟部腫瘍」の違いは難しいのですが、診療報酬上は「浅筋膜」という脂肪層にある膜より深くに存在するものを「軟部腫瘍」と定義しています。イメージとしては筋肉の近くの深い部分に存在するものは「軟部腫瘍」と理解すればよいでしょう。

 

手術の前にエコー検査などの画像検査を行い、位置(深さ)を同定します。

位置が深いものや、大事な血管や神経などの組織が近くに存在する部位はMRIなどの検査も行います。今回の症例では画像検査の結果、背部の皮下・軟部腫瘍を認めました。

 

まず腫瘍の位置をマーキングし、切開線をマーカーでデザインします。

切開線はシワのラインに一致するようにデザインします。((注)部位によってはこの限りではありません)

次に局所麻酔をします。

 

メスで皮膚を切開し、剥離剪刀というハサミで鈍的に剥離していきます。

浅筋膜 (白矢印の部分、モスキート鉗子で把持している部分)に切開を加えると、腫瘍が同定できました。

腫瘍を周囲組織より剥離し摘出します。このときに止血も同時に行います。

 

浅筋膜を縫合します。

 

ペンローズドレーンというシリコンで出来た管のようなものを、創部に浸出液や血液が溜まらないように挿入します。本症例では浅筋膜下に挿入しています。中縫い(真皮縫合)、皮膚縫合を行います。

 

ガーゼで圧迫固定し手術終了です。

翌日もしくは翌々日に出血が少ないことを確認できたら、ペンローズドレーンを抜去します。抜糸は術後約1週間で行います。

 

今回の症例の病理結果は、脂肪腫という良性の腫瘍でした。