初めまして、コサインと申します。
今日は辻村深月さんの小説、「冷たい校舎の時は止まる」の感想を書いていきたいと思います!
ネタバレ有りですので本を読んでいない方は読んでからご覧ください。








本作は、今や本屋大賞作家となった辻村深月さんのデビュー作です。

この物語は登場人物の描写と、他の生徒が見当たらないことへの違和感を描写する登校のシーンをメインに話が進んでいきます。 

そして登場人物が全員、舞台となる校舎に到着してから少しずつ、いつもと違う校舎の様子が明らかになっていきます。そして彼らが辿り着いた結論に思わず鳥肌が立ちました。

「この中の一人が実はもう自殺しているのではないか。」

ここからの校舎への違和感や生徒たちに襲いかかる恐怖の描写は凄まじく、文章全体から何となく漂ってくる不穏な雰囲気と相まって一人で部屋にいるのが怖くなってくるほどです。

そして止まっていたはずの時計が動き出し、5時53分になるたびに一人また一人と姿を消していく。

彼ら一人が消えるごとに彼らの回想シーンが入ってくるのですが、それがこの本の分量の多さに貢献しています。

正直ここの回想シーンは物語の結末と関わらないものがほとんどであるため、恐らく賛否両論のある部分だと思うのですが、個人的にはこの回想シーンは必要不可欠だと思うし、この物語において重要な役割を果たしていると思います。

実際にこの物語に密接に関わる回想シーンは、最後に出てくる"菅原"のもののみでありましたが、それ以外の回想シーンも単純に物語として面白かったです。

それにここからは勘違いかもしれませんが、先の気になるストーリー展開に水を差すように回想シーンを挟んでいくという構成を"菅原"の回想シーンまでにパターン化して読者に認識させておくことで、

「回想シーンはあまり重要ではないし、本編の続きが気になるからここは軽く読むか。」

という読者の姿勢を形成しようとしているのだと思いました。

要するに、読者に、「物語の肝となる"菅原"の回想シーン」を熟読させない作戦です。

自分はこの作戦にまんまと引っかかり、"菅原"の回想シーンを軽く読んだ結果、最後のシーンで驚きまくることになってしまいました。

でもこういう物語はきっちり犯人を当てるよりも作者に素直に驚かされる方が楽しいと思うので、結果的には良かったかなと思います^_^

それにしてもデビュー作でこのボリュームにこの衝撃。
本屋大賞作家はすごい。辻村深月はすごい。