彼女が言った。
「
サミュエルっていうラブブみたいな子かわいい、ほしいな〜」
うさぎで、耳がたれてて、ピンク色。
もう頭の中では完成している理想像。
その一言を胸に、検索したが
買えない!?
そこで
僕はフリマアプリの海へ潜った。
……あった。
新品未使用。しかもラスイチ。
これはもう運命だろ、と思って即購入。
勝った。
完全勝利。
そう思った、その直後。
彼女が続けて言った。
「でも目は黒目じゃなくて、キラキラ目のがいいな〜」
……え?
スマホをそっと伏せる僕。
発送準備中の文字が、やけにまぶしい。
言えない。
今さら言えない。
数秒の沈黙のあと、
僕は苦し紛れの言い訳を口にした。
「……あ、これ?
姪っ子にあげるために買ったんだよ」
すると彼女は間髪入れずに、
「えー!
私が欲しいのに!いじわるー!もういい!サミュエルにも興味なくした!」
(え、そう来る??)
慌てて僕は言う。
「いや、でも黒目だよ?」
すると彼女はすぐさま——
「……それでも、もらえるならほしい!!!」
そして始まる、軽めの駄々。。
僕は笑いながら、真実を明かした。
「違う!違う!違う!
黒目だから、もらってもいらないかな?って思ってww」
すると彼女。
「いじわるー!ずるい!
ラスイチ買うなんて!!」
その怒りはなぜか笑顔付き。
この瞬間、僕は理解した。
目の問題じゃない。
色の問題でもない。
新品未使用でもラスイチでもない。
これは
「私のために選ばれた」という事実を巡る物語。
この出来事を通して、
僕はふと気づいた。
最近僕は、仕事で
周りにたくさん気を遣って、
完璧じゃない自分を責めて、
「ちゃんとしなきゃ」「失敗しちゃいけない」って
ずっと力が入っていた。
でも彼女は違った。
欲しいって言って、
拗ねて、駄々をこねて、
感情をそのまま出して、
それでもちゃんと笑っている。
それを見て思った。
あ、もっと素直でいいんだ。
完璧じゃなくていい。
言い訳してもいい。
ズレてもいい。
サミュエルは黒目のまま、
そんなことを教えてくれた気がする。
おしまい。笑