お茶の最盛期、子供たちにとってもまた忙しい毎日が始まった。
毎朝行われる祖父のラジオ体操から一日がスタートし、お手伝い、学校、そしてまたお手伝いの繰り返し。
お茶の分、普段は大人の仕事もありがたくまわって来る
K子の大好きな日課である、読書の割合も若干減るのは間違いない。
(「ながら読書」はとっくに懲りた)
・・だが、それでもK子はうれしかった。
なぜなら母トミ子がとっても生き生きとして元気だから。
なんでも気になるK子は、お手伝いしながら母の様子を伺っていた。
「やっぱり、おばあちゃんが来ていてうれしそう・・」
と・・・・・次の瞬間、K子は我が目を疑った
夕飯の支度をしているトミ子だが、どう見ても祖母に味見をしてもらってる様子??
そして更に我が耳を疑った。
トミ子:「お味はどうですか?お母さん」
祖母:「そうねえ。良いけどもう少しお味噌を足しましょう・・」
・・・K子は愕然とした
自分にとって、大人とは、そして母トミ子とは、完璧な人であるはずだった。。
今日のたった今の瞬間までは。。。
それがどうした 祖母に味見をしてもらっているではないか!?
私がお味噌汁の味を見てもらうのとはわけが違う!
だって大人の母親なのに・・?
なぜ何故?どうして??? 七不思議中、最強の難題
まるで鋭い瞳で大きな口を開けた得体の知れない黒いもやもやが、頭の上に襲い掛かってきたようだ。
更に夕食の時間になると、そこにはいつもと変わらない、おいしいお味噌汁。
とりあえず思い切り飲み干してみたが、ますます意味がわからない。。。
「ごちそうさまでした」
もやもやの夕食に疲れたK子は、意を決して切り出した。
「おかあちゃん、あのね、、、さっきはどうして味を見てもらったの? もう大人なのに・・」
・・するとトミ子は静かにこう言った。
「あのね、K子。。 上には上がいるんだよ、、 何でもそう。
どの世界でも上には上がいるものなの。
・・そのことを絶対に忘れなさんな!」
・・ああ、なんてすごいんだ。 本当にそうだ。
自分もお味噌汁はもうできる気になっていた。。
そう、、せめてトミ子の次、2番手気取りでいたのだ。
たった家族の中だけの、狭い世界のお話である。
その言葉にしばらく動けない自分がいた。
小学生なりの素直な質問だったが、とてつもなく大きい、大切な答えが返ってきたのだ。
そしてK子はそれをちゃんと理解できた。
「この言葉を一生忘れずにいよう・・」