昨日、山形の実家に私とリリーだけ帰ってきた
あの日の事を記録しようと思う…
たくさんの事がありすぎたから…
11日の午後、リリーを預けて産婦人科に行く
実は、一週間前に妊娠が判明
ただでさえ大変なのに妊娠なんて
っと、喜べずにいた
喜べない自分に腹が立った
産婦人科に行くまでの一週間、やはり母親
お腹の子がだんだん愛おしくなる
産婦人科に行くと、まだはっきりと映像では確認できないから
10日後にまた来るように言われる
タクシーを呼んで、実家に帰る
実家に着いて、1階の接骨院に顔を出そうと思ったその時
地震がおきる
棚から物がどんどん落ち
駐車場に止まっているランクルが激しく揺れていた
みんながいるところになんとかたどり着くが
3分は揺れていただろうか
ただ事ではないと思った
揺れがおさまり、すぐに2階の自宅に走った
階段は割れて
向の家のブロック塀は崩れ落ちていた
家の中に入ると
物という物が倒れていた
足の踏み場なんかなかった
リリーはおばあちゃんがダイニングテーブルの下で覆いかぶさって守ってくれていた
激しく泣くリリーを抱きしめてなだめる
余震は続いた
床は割れたグラスだらけで危険で
リリーはずっと抱っこしているしかなかった
大きな余震がくるたび、テーブルにもぐる
津波警報が出る
海や河口から離れるようにと
家の近くには、北上川がある
もともと水捌けが悪い地区
どんどん水は上がってきた
津波の勢いはないものの
気づけば道路は2m近く水没
2階の自宅に取り残される
懐中電灯と石油ストーブをかき集め
テーブルの下に布団を敷いてリリーを寝かせた
お腹が痛かった
きっと精神的なものだと思った
余震に怯えほとんど眠れず朝が来る
午前中、少量の出血をする
お腹が痛くて、ほとんど動けなかった
産婦人科に電話しようと思ったけど
通じる電話が一つもなかった
もうダメだと思った
きっと流産した
私も死ぬかもしれない…
ずっと抱っこだったから負担がかかったんだろう
また夜がきた
痛みでもう横にもなれなかった
リリーをなんとか寝かしつける
津波警報が解除される
『誰かいませんかー?』
自衛隊のボードだった
主人が病院に連れていってほしいと交渉してくれた
20分後にむかえに来ることになった
リリーを置いていけないから連れていくつもりだった
連れていけないなら私も行かないつもりだった
でも家を出る寸前で、とっさに置いていく決断をした
朝目を覚ます前に家に戻ろうと思って。
ボートに乗って陸地にむかい
自衛隊の車に乗って石巻赤十字病院にむかう
病院はすごい人
私は車椅子で産婦人科に連れていかれ
すぐに診察してもらえた
内診の結果は、
子宮外妊娠
すぐに入院してすぐに手術をするように
理解が出来なかった
卵管を取るって??
娘のところに帰らなきゃいけないんです。
一緒に入院出来ませんか?
パニックになってた私に先生は
母体を優先しましょうね
すぐに手術の準備がされた
夜中に全身麻酔で手術し、気づけば朝だった
主人は歩いて家に帰っていった
リリーの事お願いね。何度も言った
しばらくたって主治医の先生が病室に来た
私の子宮外妊娠は卵巣妊娠で珍しかったこと
卵巣をくり抜いたので、卵管、卵巣ともに残っていること
700cc位出血していたこと
それと、もう少し遅かったら命が危なかった
っとお話されていった
1週間の入院中も、物資がなく
食べ物も、パックのおかゆと缶詰など
シーツが汚れても、取り替えることも出来なかった
ベッドも足りず、小児科の子供用のベッドですごした
薬も不足して満足に出してもらえなかった
母乳が止まらないように、ビニール袋に搾乳して捨てた
リリーの事を想い、涙が溢れた
1週間リリーに会えない日が続き
大量出血による貧血でフラフラになりながらも退院する日がきた
家に着いて、感動の再会をするはずだった
リリーは私を忘れていた
疑うような目で私を見た
きっとすごくショックだったんだろうと胸が痛かった
わたしもショックでおっぱいがほとんど出なくなってしまう
すっかりパパっ子になってしまい
私を拒んでいたけれど
おっぱいを飲ませたりしているうちに
少しずつ距離は縮まり
次第に母乳も出るようになった
9日間目、電気がついた
ずっと、お風呂にもいれられず
きっとストレスが溜まったよね
ママもお腹の傷をかばって、なかなか抱っこできなくてゴメンね
私の実家に来てからは、ひどい人見知りで
私から一切離れず
大変だけど、慣れるまで
おもいっきり甘えさせてあげたい
子宮外妊娠…
確かにお腹の中にあった命を考えると悲しくて毎日泣いた
小児科と産婦人科の病棟が同じだったため
赤ちゃんの泣き声やお産している声
妊婦さんの姿
毎日辛かった
リリーの存在だけが救いだった
リリーを傷つけた分も、沢山の愛情を注ぎたいと思う
復興にむけて、これからまだまだ大変だけど
《車で5分も行けばこんな景色が果てしなく広がるんです》


前を向いて進んでいきたい