振り向いて
ここへおいで
美しい人
足りない欠片はここにあるよ
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チャンミンからそう告げられたのはツアー中、日本の宿舎でハードなリハを終えて、まったりとリビングで寛いでいる時だった。マネヒョンたちは買い出しやらで出かけていてリビングには俺たち2人きりだった。
ツアー中で日本の15周年も控えていてのこのタイミングにおれは一瞬驚いたがプライベートはまた別だし、しっかり両立出来たら考え方は人それぞれだし、元々チャンミンは綺麗な人と素敵な家庭を作りたいとずっと言っていたからな。
「おお〜そうか、やったな!チャンミナの事だからきっと綺麗な人なんだろうな。それにしても忙しい中でよく知り合えたな」
「ええ、トレーナーの紹介で知り合ったんですが、綺麗なだけじゃなくて性格も良さげだったので思い切ってお付き合いする事にしたんです」
「そうか、良かったな。兄として応援するよ。でも東方神起のリーダーとして言うならプライベートと仕事はきちっと分けてくれよな。今だってツアーの真っ只中だし、タイミング的にびっくりしたし、そこは頼むな」
「……はい。もちろんそれはわかってます。ファンにも漏れないよう気をつけますから」
「わかってるならもう言わない。ただ、恋愛が漏れてファンを悲しませる事だけはするなよ。チャンミナの事だから信用してるけど、万が一漏れた時は彼女を守る為にチャンミナ自身が傷つく事にもなる。そうなる事も覚悟しないとな」
「……はい。」
「あーはーはー、なんだよ~そんな暗い顔して、別に悪い事してるわけじゃないじゃん。気をつければいいだけの話だろ。俺だって言わないし、他に知ってる人は?」
「マネヒョンだけです。」
「そっか、ならサセンさえ気をつければ問題ない。大じょーぶ。な、チャンミナ」
「ユノ………」
「さ、この話は終わり、俺お腹すいちゃった。チャンミナは?何か作ってよ」
「いいですよ。僕もお腹すきました。確かカルボナーラの材料なら冷蔵庫にあったと思いますが、カルボナーラでいいですか?」
「おっ、いい、いい、チャンミナのカルボナーラ食べたい~♪チャンミナのカルボナーラおいし~から~♪」
ユノがおかしな歌を歌い出すから思わず吹き出した。
「じゃ、今から作りますからシャワーでも浴びてきます?」
「えー、いいの!?チャンミナありがと~♪」
そう言ってユノはスキップでもしているかのように身体全身で喜びを表わし、「たっのしみ♪たっのしみ♪チャンミナ~のカルボナーラ♪」と陽気に歌いながらバスルームに向かった。
その後ろ姿を見送り僕はユノに聞こえないよう大きなため息をついた。
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ユノは僕に彼女が出来た事を応援してくれると言ってくれた。
ユノは俺の事を出来た弟だと思ってるけど、俺はユノが好きだった。いや、過去形ではなく現在進行形。好きの種類でいうと…憧れや尊敬を超え、ユノを抱きたいと思うくらいに恋愛感情で溢れている。
はじめは憧れだったと思う。
カッコいいリーダーでいつかユノに追いつきたい、認めてもらいたいと思っていた。初対面から印象が悪く、誤解から怖い人だと思ってたけど、関わりを持つようになって随分とイメージが変わった。カッコ良くて頼りになるリーダーに変わりないけど、人懐こいところもあってすぐに打ち解け、誰とでも仲良くなれる…俺にはない、所謂「人たらし」だった。
ユノを知るにつれユノに対する親愛の気持ちが強くなりヒョンパボと言われるくらいには慕っていた。
ユノヒョンが色んな人達と仲良くしてるのを見ると大好きなヒョンを取られるみたいですごく嫌だったし、特にジェジニヒョンとベタベタ仲良過ぎなのはもっと気に食わなかった。なぜ気に食わないのか…薄々気付いてたと思う。だから自分も敢えてジェジュニヒョンに絡んだりした。絡んでわかったこと…2人はビジネスパートナーだったって事。ジェジュ二ヒョンは相当ユノの事が好きみたいだったけど、ユノはカメラがない所では必要以上に絡む事はなく、あまり興味なさ気にも見えた。逆にジェジュ二ヒョンが可哀想に思える程だった。
可哀想だけど、特別な関係に見えたけど、そうじゃなかった事が堪らなく嬉しくて…その時にもしかしてユノに抱いてる気持ちは憧れだけじゃないのかも知れないと思うようになった。
5人から2人になってよりユノと向き合う時間が増えた事で今まで見えなかったところがお互い見えるようになった。
もちろん、はじめはユノと居られる事がただ単純に嬉しかった。けど、性格が全く正反対なんだとわかって、まだ子どもだった俺はユノに対して上手く折り合いをつける事が出来ず、なんでユノはそうなんだ、理解出来ないと言って生意気な態度をとっては衝突していた。
2人になったばかりの頃、誹謗中傷の嵐で俺よりユノの方が辛い思いしてたに違いないのに、めいいっぱい盾になって守ってくれたのは他でもないユノなのに…どれだけ俺が救われたか感謝しかないのに、まるで自分が一番正しいと言わんばかりに優しいユノに甘えて責め立てた事もある。傷つけた自覚はあったけど、そうする事で自分を見てくれてると勘違いして…それでもユノは突き放す事なく受け入れてくれた。人それぞれ違うとユノに言っておきながらあの頃の俺は本当に自分でも嫌になるくらい最低な奴だった。今思えば「俺の事わかって、もっと俺の事見てよ」って必死にもがいていたのかも知れない。
それは好きだと言えない自分の独りよがりだとわからずに…
ユノが男友達を宿舎に呼んだり、遊んでる様子を目聞きすると嫉妬で気が狂いそうだった。ユノは寂しがり屋だからすぐ仲間と会う。「なんで?なんで俺じゃダメなの?」って気持ちが常にあって、いつもイライラしてた。だから「ユノはゲイなんじゃないかって思ってた」なんて自分の気持ちを棚に上げて言ったここともあった。本当はユノの事が好きな自分自身がゲイなんじゃないかって思ってた事。でもユノが好きなだけでゲイじゃないと自覚するとユノには申し訳なかったけど、男友達だけでなく女友達にも牽制になったんじゃないかと我ながら最低だけどよく言ったと思う。
そんな卑怯な奴をユノが好きになんてなるわけないのに…
兵役もあり、ユノに会えなくなる事がこんなに辛く苦しいものだと思わなかった。自分が思ってた以上にユノの事を愛していたんだと改めて思い知る。
シウォンやドンヘを見て衝撃を受けた。同じグループでベタベタ、スキンシップも多い、お互い素直に何でも言い合える関係が羨ましかった。俺は本当に冷たい弟だったな。ユノは距離感が近い。2人しかいないグループでスキンシップが多いなんてファンから何言われるか想像もつくし…恥ずかしさから素直になれず、敢えてスキンシップは嫌いというスタンスでいた。その事でもユノを傷つけたと思う。本当に最低だな。もう少し素直になってユノに優しくしよう。兵役が俺を変えた。それからはユノとの関係も良好だった。
ユノは年上なのに可愛い。少女かってマインドをもってるし、顔も黒目勝ちの奥二重で、瞳を閉じた時のまつ毛の長さもいい。鼻筋が通って綺麗だ。口元のホクロがエロいし、ぽってりした下唇はかぶりつきたくなる程官能的だし。
もちろん、舞台の上ではカッコイイのだけど、内面的なものも相まって最も「美しい」という言葉が似合う人だ。
その美しい人がいつかのインタビューで自分の半身と言ってくれた時はすごく嬉しかった。
だから今日の報告はユノがどんな反応するのかちょっとだけ期待してたのに…
あっさり嬉しそうに応援してくれるなんて…
怒るとか寂しがるとかあってもいいんじゃないの?まるで関心ないみたいでため息が出た。
まだ彼女でもないし、ユノ以外に愛する人はいないのに……
こんな感情はユノに知られるわけにはいかないけど。
俺はもう一度大きなため息をついた。
振り向いて
僕の美しい人
