「あなたの体の軸は、どこにありますか?」

そう聞かれたら、多くの方は頭のてっぺんから足の間を貫く、一本のまっすぐな棒のような線を思い浮かべるのではないでしょうか。いわゆる**「中心軸」**です。

私たちは、この一本の軸を頼りに立ち、歩くのが当たり前だと思って生きてきました。しかし、もしその「正しい」と思っていた感覚が、知らず知らずのうちに膝や腰に負担をかけ、歩くたびに自分にブレーキをかけている原因だとしたら……。

今日は、私たちの歩き方を劇的に変える**「二軸感覚」**の物語をお話しします。


「立つための軸」と「動くための軸」は違う

そもそも、なぜ私たちは「中心軸」を信じて疑わないのでしょうか。

それは、私たちが四足歩行から二足歩行へと進化した証でもあります。立ち止まっている時、おへそのあたりにある重心から真下に下ろした線が両足の間にあれば、私たちは安定して立つことができます。

中心軸は、いわば「最高の安定をもたらす静止の軸」なのです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。多くの人が、「立つための軸」のまま「動こう」としてしまうのです。


中心軸の罠:体の中で起きている「ねじれ」の正体

中心軸を意識したまま一歩を踏み出そうとすると、体はどう動くでしょうか。

  1. 後ろ足で地面を強く蹴り出し、体を前へ押し出す。

  2. 軸を保とうとして、振り出した足を体の中心(一本線上)に着地させようとする。

  3. すると骨盤が無理に前へ回り、バランスを取るために肩が逆方向に振れる。

学校で教わった「地面をしっかり蹴る」「太ももを高く上げる」という歩き方は、実はこの中心軸に基づいたもの。歩くたびに、体の中では**雑巾を絞るような「ねじれ」**が発生し、それが腰や関節への負担となって蓄積していくのです。


「竹馬」のように風を切って歩く

そこで登場するのが、今回の主役**「二軸感覚」**です。

これは、一本の棒ではなく、「左の肩甲骨と左の股関節」「右の肩甲骨と右の股関節」を結ぶ2本の並行な軸を意識する歩き方です。

イメージしてほしいのは、「竹馬」に乗っている感覚です。

右の軸、左の軸と交互に体重を乗せ替えていくことで、骨盤の余計な回転が消え、体はねじれることなくスッと前方へ運ばれます。地面を蹴る力に頼らず、重心の移動だけで自然に足が前に出る。まるで氷の上を滑るような、あるいは風に乗るような、驚くほど軽い感覚です。


私たちは、もともと「二軸」で歩いていた

「難しそうだな」と感じるかもしれません。でも、安心してください。私たちはみんな、この歩き方の達人だった時期があります。

よちよち歩きの赤ちゃんや、園庭を駆け回る子どもたちを思い出してみてください。彼らは肩をゆさゆささせながら、自然と二軸で歩いています。

二軸感覚とは、新しく習得する技術というより、私たちが本来持っていた「自然な身体操作」を思い出す作業なのです。


人生100年時代、歩き方は「最強の投資」になる

若い頃は、筋力や体力という「貯金」があるため、無理な歩き方をしていても痛みは表面化しません。しかし、年齢を重ねるごとにその代償は関節の痛みや不調となって現れます。

歩き方は、一生付き合っていく「技術」です。

  • 「中心軸」で耐えながら歩くのか

  • 「二軸」で解き放たれて歩くのか

この小さな感覚の差が、10年後、20年後のあなたの膝や腰の状態を決めると言っても過言ではありません。

人生100年時代。いつまでも自分の足で、行きたい場所へ、軽やかに。今日から、あなたの中にある「2本の軸」を感じてみませんか?