チエの悩みは、その年齢時に遭遇するもので、少なくない文系進学女子は、そうして大学生になる。
日本文学部に籍を置いたTの周囲の数割の女子大生もそうだった。
Tが書籍に触れ始めたのは5歳のときだった。それまで、弱くして産まれた弟は3歳になり、産後の日達のすぐれない母親の傍で活発に甘える体力を付けた。
それでもTが離れようとすると、弟は声を上げ泣きながら後を追った。
それを振り切って同年代の子供と外で遊ぶ決断をTはできなかった。
そんな姿を毎日目のあたりにしていた母親は、2冊の少年文庫を取り寄せTに与えた。
Tは弟と寝ころび、母親のかたわらで本を読み聞かせた。
何度も繰り返し少年文庫は読まれた。
途中途中で歓声をあげるのは弟だけだった。