■復興 国家予算32年分投入
ベラルーシの首都ミンスクから南東へバスで約5時間、延々と続く直線道路の先に同国で2番目に大きいゴメリ州がある。
同州は1986年4月、史上最悪の原発事故を引き起こした旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発が国境をはさんだ南側にあり、最も近い場所でみるとわずか20キロしかない。原発から30キロ圏内は現在も立ち入り禁止。地図から消えた町もある。
東京電力福島第1原発事故後、医療や教育にかかわっている34人で構成された福島市の視察団が当地を訪問したのは11月下旬。車外の気温は日中でも氷点下だった。
◆汚染地域「今は発展」
「汚染された地域は今、発展している。あのような悲劇があったにもかかわらずだ」。一行のバスに同乗した同州執行委員会チェルノブイリ事故対策局のリシュク・リュドミラ副局長は胸を張った。
原発から約90キロ離れた同州モズィリ地区の場合、事故発生直後、政府から汚染地域に指定されたが、それも今は解除された。同地区の中心・モズィリ市にある大規模国営農場「ソフホーズコンビナート」では年間約4万トンの肉や4500万個の卵を生産。1250人を雇用し、平均収入はミンスクの労働者よりも高いといわれている。
事故後、ベラルーシでは国家非常事態省が医療、産業などあらゆる問題を統括した。2006年には放射線学研究所など事故関連施設を移し、ロシア・ベラルーシ情報センターが情報管理を担った。汚染地域に設置された50カ所の地域情報センターでは、データや対策などを国内外へ発信している。
リュドミラ副局長によると、現在も政府の事故関連予算の約6割が同州の復興に回っている。また、ベラルーシ全体でみると、事故後26年で国家予算32年分に匹敵する費用が復旧・復興につぎ込まれたという。
全被災者への住宅提供、子供のいる家庭への生活費補助、医療費や出産費の原則無料-。汚染地域で暮らす子供は毎年、24日間の保養プログラムが設けられ、医療施設で甲状腺や内部被曝(ひばく)の検査、ぜんそくに効果があるとされる塩セラピー、アレルギー対策など多様な治療が受けられる。
◆社会主義の名残
汚染地域の雇用確保が進まないといった問題は残っているものの、こうした実績は国家主導による徹底した復興政策の結果であり、旧ソ連の社会主義体制の名残ともいえる。
それは情報の出し方にも垣間見られた。期間中、視察団は常に全員一緒に行動するよう求められた。産院や小児がんセンターで甲状腺がんと原発事故との因果関係について質問すると、同行した政府関係者とみられる人物が回答をさえぎったり、担当者が言葉を濁したりする場面がしばしばあった。現地関係者によると、政府の考えに異を唱える市民には厳しい対応をとるともいわれている。
そんな現実はあっても、視察団の副団長を務めた福島大学の清水修二教授は「地理的条件や社会制度、政治システムに違いはあるものの、ベラルーシの人々は福島の痛みを理解してくれている。今後、どういう形で交流を生かしていくかを考えなければいけない」と話す。
チェルノブイリ事故で国土の3分の2を放射能で汚染されたベラルーシ。その復興の歩みには福島の参考になる部分が多いのは間違いない。(ベラルーシ・ゴメリ州で 大渡美咲)
【用語解説】ベラルーシ共和国
東ヨーロッパに位置し、首都はミンスク。人口は約948万人。1991年にソ連(当時)から独立した共和制国家だが、国営企業が温存された旧ソ連的な管理経済体制を維持する。大統領の権限が強く、2011年の経済危機で国際通貨基金(IMF)に支援要請するなど厳しい状況にある。
関連記事
落選組、淡々と退場 議員会館 「時間ない」「再就職先を」
エドナ・パーヴァイアンスはチャップリンが関わっていない映画に一度でも出演した...
Fire Alpaca のバケツ塗り機能の調整?を教えて下さい。
皆さんよろしくお願いしますm(_ _)m自分の親が僕の名前を勝手に借用書に書いて、...
この子誰ですか?