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次の日も大野は起きるとカズを探した。
ちゃんといると安心する。
起きてカズがいると必ず抱きしめる。
「大野さん…?」
「なに?」
「最近どうしたの?」
「なにが?」
「なんか、いつも不安そう。違う?」
「ん…いや。カズがどこかへ行っちゃうような…そんな気がして。」
「大丈夫だよ。オレはずっといるよ。大丈夫だからね、大野さん。」
「うん…」
大野は強く抱きしめている腕を少しだけ緩めた。
カズがどんなに「一緒にいるよ」と言っても不安は消えなかった。
それから毎日、カズを探しながら起きるのが日課になった。
毎日、毎日、カズがいると安心する。
俺、どうしちゃったんだろうか…
こんなに好きになるなんてな。
やっぱりカズは俺の世界を変えた。
そして…
心配していたことが現実になる。
起きるとカズの姿がなかった。
ソファに座っていたのかそこに寝ていたのか…
ほんのりカズの温もりと匂いがした。
さっきまではいたんだろう場所。
コンビニでも行って来たって帰ってくるかもしれない。
そんな風に思いながらキッチンへ行きお湯を沸かした。
帰って来たら一緒にコーヒーでも飲もう。
嫌な予感を振り払うように朝食の準備をした。
テーブルに頬杖をついて壁にかかった時計を見る。
起きてからすでに1時間経った。
カズ、遅いよ。
まだかな?
一人ポツリと呟くと自然と涙が頬を伝う。
あれ?
なんだろう。
おかしいな。
どこ行ったんだよ。
カズのやつ。
その時、テーブルの上のスマホが音を立てて震えた。
カズ?
大野はスマホをパッと取って画面を見た。
みわちゃん…?
『もしもし、どうしたの?』
『大野さん!二宮くんは?そこにいる?』
『えっ?今はちょっと出てるけど…』
『帰ってないの?』
『帰って…って?なに?』
『朝早くね、二宮くんがお店に来て、大野さんをよろしくお願いします!って、そう言って…』
『カズが?どうして?』
『分からないんだけど…よろしくお願いしますってどういう意味かな?大野さん?』
『みわちゃん、それでカズは?あとはなんか言ってた?』
『特には…それだけ言って帰っちゃって。』
『そっか…』
『あ、大野さん?二宮くん、いつもとちょっと違う感じがしたの。だから…』
『分かった…ありがと。』
大野は電話を切ると急いでスウェットからジーンズに穿き替えた。
上着を来てポケットにスマホと鍵を入れると靴を履いて玄関から飛び出した。
カズ…
どうして。
「ずっといるよ」ってそう言ったじゃないかよ。
大野はマンションから出て走り出した。
続く