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二宮が帰ってからしばらくするとみわが出勤して来た。
「えりかさん、おはようございます。」
「あ、みわおはよう。」
「今日もよろしくお願いします。」
みわは、そう言って荷物を置きに休憩室に入って行った。
しばらくして、みわが休憩室から出てくるとえりかはみわと開店の準備を始めた。
「えりかさん、昨日は長々と失礼しました。」
「うん…もう大丈夫?…な訳ないか…」
「今日は、ちょっと目が腫れてるんです…」
「休む?バイトの子もあとから来るし…こっちは大丈夫だから。」
「大丈夫ですよ、仕事してる方が気が紛れるし。」
「本当に?」
「本当に!」
「じゃあ、今日も頑張ろうか?」
「はい。」そう言って笑うみわの笑顔はちょっと悲しげに見えた。
二人で店の準備をしていると「えりかさん、私…やっぱり諦めきれないかも…」と言って準備している手を止めてえりかを見た。
「みわ…?二宮くんのこと?」
みわは小さく頷いた。
「みわ、このままずっと好きでいるつもり?」
「辛いですよね…」
「うん。辛いよ、いいの?」
「分かんない」そう言ってみわは少し笑った。
二人はそのまま黙って準備を続けた。
バイトの子も来ていつものように仕事をしている内にいつの間にか夕方になっていた。
パンもほとんど売り切れたし今日は早めに閉める事にして店を閉めた。
帰り道、みわは考えていた。
このまま二宮くんを好きでいることがどういう事か。
叶わない恋。
ロマンティックな気もするけど…
二宮くんは、大野さんが好きで。
きっと、私を好きになることは一生ないんだよね。
好きになればなるほど辛くなる。
えりかさんは、やっぱりすごいな。
どうやったら諦められるんだろうか。
続く