13
オレは大野さんの手を握っていた。
「大野さん…」
「な…に?」
ちょっとびっくりして二宮を見た。
「オレ…あの、もう少し一緒にいて…」
大野は潤んだ茶色い瞳に吸い込まれそうだった。
「大丈夫だよ。まだ いるから。」
大野は二宮をゆっくりとベッドへ寝かせると「ちょっと待ってて」と洗面所へ向かった。
大野さん、どこ行くんだろ…
少しすると何かを持って大野さんはオレの所に戻って来た。
「二宮くん…体、拭こう。」
「えっ?」
見ると大野さんは濡れたタオルを持っていた。
「汗もかいてるし。着替えた方がいい。」
「でも…」
「なに?」
オレはなんだか急に恥ずかしくなった。
「あ、自分でやるんであっち向いててもらえます?」
「はっ?なんで?背中拭けないだろ?拭いてやるよ?」
「えっと…じゃあ、お願いします。」
オレはベッドからゆっくりと体を起こした。
背中を向けると大野さんはオレの着ていたTシャツを捲った。
優しく丁寧に拭いてくれる。
「まだ、だいぶ体熱いよ。薬飲む?」
背中を拭きながらオレに話しかける。
「はい…」
「よし、背中は拭けた。前向いて。」
「えっ、背中だけで…」
「いいから。」
大野さんはオレをクルっと前に向かせた。
「バンザイして。」
「はっ?」
「着替えるから。Tシャツ脱いで。着替え、どこ?」
「あの、えっと…そこの引き出しに」
オレがもたもたしているとあっという間にTシャツを脱がされた。
そして、新しいTシャツをチェストから持って来てオレに着せた。
「あ、下は自分で着替えてね(笑)」そう言って大野さんは笑った。
「あはは、はい。」
オレは熱のせいか横になると眠くなってまた寝てしまったようだ。
大野は、眠っている二宮の顔を見つめた。
綺麗だな…
色も白くて。
綺麗な白い背中…だった。
それにどうして、そんなに綺麗な瞳なんだ。
男だよな…?
俺は思わず、二宮のまつ毛をそっと触った。
長いな。
髪を優しく梳いた。
眠っている顔がなんだかとても愛おしく思えた。
二宮…和也
カズ…そう呼んでもいいかな。
そう思っていると、またベッドの脇に顔を伏せて眠ってしまった。
オレは寝苦しくて目を覚ました。
やっぱり熱が下がらないせいで体が熱い。
また、汗をかいて寝ていた。
ベッドの脇で眠っている大野さんを起こさないようにベッドから出た。
トイレに行き、キッチンで水を飲んだ。
なんだかフラフラする。
オレはベッドの脇に腰を下ろした。
大野さん、よく眠ってる。
この人…えりかちゃんの彼氏…なんだよな。
やっぱり、好きだな。
でも…
きっと片想い。
当たり前だ。
相手は男だもん。
熱のせいか…オレは大野さんの頬にそっと触れた。
そして…唇にもそっと触れてみた。
ものすごい早さで心臓が鳴っていた。
大野さん、やっぱり好きだよ。
こんな恋愛あるんだな。
体が熱い。
もう、本当に辛かった。
熱があるのが辛いのか、好きな気持ちが膨らみすぎて辛いのか。
大野さん。
その手に触れたい。
なんか、ダメだ。
意識が遠のく…
その時、大野は目を覚ました。
えっ!
ベッドの脇に倒れている二宮を見つけて慌てて抱き起こした。
「カズ!」
遠い意識の中で大野さんが「カズ」って。
夢かな。
「カズ、しっかりして、ほらっ」
大野さんがオレの体をしっかり抱きしめてくれてるのが分かった。
やっぱり夢…?
「ねぇ、大野さん、好きだよ…」
オレは遠い意識の中でそうつぶやいていた。
続く