君と歩く未来を36
『意地悪』和side~
待ち合わせは10時。
久しぶりに楓に会える。
俺はちょっと浮かれていた。
楓が時間より少し遅れて来て俺に謝った。
「カズくん、ごめん。ちょっと遅れちゃった。」
「すげぇー待ったけど?」
俺はちょっとだけ意地悪した。
「えっ?本当に?ごめんっ」
「ちゃんと時計見てる?」
「見てるよー!もぅっ!」
「今日の待ち合わせ、何時だったか覚えてる?」
「えっ?10時だったよね?」
「えっ?」
「えっ?違った?」
楓が慌てて俺を見ながらスケジュール帳を出した。
「カズくん、約束は10時で合ってるはず。」
「バーカ、誰が違ってるって言った?」
「えっ?もぅー、カズくん!」
楓がむくれて俺の腕を叩いた。
「痛いっ、やめろって。」
「カズくんが意地悪言うからっ!」
「ごめん、ごめん、それよりタクシーで行く?」
「うん。」
「翔ちゃんより早く着かないとね。平日だしまさか出迎えなんてあると思ってないだろうし。驚くよね?」
「うん。驚く顔、早く見たいね。」
翔ちゃんから、先週、帰って来ると連絡があった。
俺たちは、翔ちゃんが着く前に迎えに行って脅かそうと話していた。
空港までタクシーで向かうことにして二人でタクシーを拾って乗った。
「翔くんに会うの久しぶりだよね?」
「うん、見送った時以来だから…あれ?もう半年…?」
「そんなになる?」
「うん…いつの間にかそんなになってたな…」
「そっか、気付けばそんなに翔くんに会ってなかったんだね。変わってるかな…?」
「どうかな?翔ちゃん、恋人でも出来てたりして。金髪の(笑)」
「まさかぁ(笑)でもあるかも!」
楓がうふふ、と俺を見て笑った。
俺もつられて、ふっと笑った。
「楓?もしさ、本当に翔ちゃんに彼女が出来てたらどうする?」
「えっ?」
俺が真剣な顔で聞いたら楓は物凄くびっくりした顔で俺を見た。
「どうする?楓。」
「どうって…」
「翔ちゃんはさ、楓の事きっと好きだよ。だから向こうで彼女なんて作らないと思うんだ。」
「カズくん、何言ってるの?!恋人が出来るかもって言ったのはカズくんだよ?」
「楓はどう思ってる?翔ちゃんの事?」
「翔くんが私を好きなんてあるわけないでしょ?」
「なんでそう思うの?」
「だって…あるわけないよ。」
楓が物凄く真剣な顔をするから何だか悪い事をしてる気分になった。
「ごめん、冗談っ!」
俺が楓の顔をのぞき込んでそう言うと楓はまたびっくりした顔をした。
そして、笑った。
「もぅー、カズくん?やっぱり意地悪だな。」
「意地悪?俺が?」
「そうだよ、カズくんはさ、出会った時から意地悪だった。」
楓は、ちょっとツンとして窓の外を見た。
「そんな事ないでしょ?」
「そんな事あった!」
窓の外から視線を外さず楓が答えた。
「そんなに?!」
「そんなに!!」
「じゃあ、謝るから。ごめん!」
俺が楓の顔を覗き込んで顔の前で両手を合わせるとむくれていた楓が、プッと吹き出した。
「なんで笑うんだよ、じゃあ謝んないよ?」
「うふふ、もう辞めよ?」
「そうだな(笑)」
「翔くんに会うの楽しみだね。」
楓が嬉しそうに微笑んだ。
楓、本当にさ。
翔ちゃんは楓が好きなはずだよ。
半年経った今でもきっと。
でも、楓は…?
楓の気持ちはどこにあるんだろう?
てっきり翔ちゃんが好きだと思ってたけど、違うのか?
俺は楓に会うたびに苦しくなるんだ。
どうしようもなく…
しばらく走るとタクシーは空港へと着いた。
続く