櫻井はゆっくりと病室のスライドドアを開けた。
中へ入って驚いた。
こんな部屋あったんだ?
松本と大野も櫻井に続いて部屋に入る。
「わっ、すげー」大野は思わず声が出た。
「何これ?ホテルみたいじゃん。」松本もびっくりしていた。
松本は部屋の中にあるベッドを見た。
「雅紀、眠ってる。」
三人はベッドの横へ行った。
よく眠っている。
「雅紀?」松本が呼びかけてみた。
相葉は、少しだけ動いた。
「相葉ちゃん、なんか辛そうな顔してるよ。」
大野が不安そうに相葉を見つめる。
櫻井が相葉の手を取って握る。
「雅紀?俺たちの事分かる?」
問いかけてみたが返事はなかった。
相葉は、遠い意識の中で自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
あれ?
俺、今どこにいるの?
みんなが呼んでる気がする。
『相葉くん?』
『ん?』
『相葉くん!』
相葉は揺すられて目を覚ました。
『また、寝てたよ?大丈夫?』
美紀が相葉を見て心配そうにしていた。
『あ、ごめん。昨日仕事でちょっと疲れちゃって。』
『また、ノート写すでしょ?貸すからね。』
『ありがと。』
授業が終わっていつの間にか休み時間になっていた。
『また美紀はノート貸すの?』
『だって、相葉くん寝ちゃってるし。』
『また?』
『ごめん、なんか疲れちゃってて。』
『相葉、大丈夫なの?ちゃんと休めてるの?』
『大丈夫。ありがとね。』
『ねぇ、帰りちょっと寄らない?』
『おっ、いいね!行こうか?』
三人は、よく学校帰りにファーストフード店に寄った。
そこで軽く食べてたわいもない話しをするのが楽しかった。
―放課後―
『今日はさ、やっぱり最近出来たドーナツ屋さんに行きたい。』美紀が嬉しそうにそう言った。
『ドーナツ屋?そういうのはさ、女子同士で行けばいいんじゃないの?』
高橋が嫌そうな顔をした。
『えー、ドーナツ屋行きたいもん。』
美紀がむくれる。
『女子の友達いないのかよ?』
すると、そこへ『美紀?今日ドーナツ屋寄って行かない?』と女子が何人か美紀に声を掛けてきた。
『ほらー、行けよ。』高橋が美紀を見る。
『えー、でも。』
『行ってきなよ。』
相葉も美紀に行くように促した。
『いいの?』
『いいよ、行っておいで。』
『うん。じゃあ、三人で行くのはまた今度ね。』
そう言って美紀は女友達と教室を出て行った。
『なぁ?』
高橋が相葉を見た。
『ん?』
『美紀はさ、相葉と一緒に行きたかったんじゃない?』
『えっ?なんで?』
『いや、何となくさ。美紀って、相葉が学校へ来ると嬉しそうだし。』
高橋はちょっと膨れたような顔をした。
『何?焼いてんの?』
『バカ、美紀とは幼馴染だ。女として見たことなんて一度もないよ。』
『またまた~。』
『それより、どうする?二人で行く?マック?』
『あぁ、そうだな。行こうか!』
相葉は、高橋と二人でファーストフード店に行ってたわいもない話しをして楽しんだ。
次の日もその次の日も。
ずっと三人一緒だった。
楽しかったんだ。
あれ?
でもいつから美紀はいなくなったんだ?
そう言えばいつからか高橋と二人になった。
卒業式には美紀はいなかった。
どうしてだろう…
留学したと聞いていた。
でも。
考えてみればおかしな話しだ。
そんな突然、留学だなんて。
『相葉、おまえのせいだ。』
『えっ?』
『美紀はおまえのせいでいなくなったんだ。』
『どうして?』
『まだ、分からないのか?!』
『うそだ。』
俺は真っ暗闇をひたすら歩いた。
美紀はどこにもいない。
教室を探した。
いなかった。
図書館も探した。
体育館にも行った。
三人でよく行ったファーストフード店も行った。
誰もいない。
高橋が立っていた。
やっぱりおまえのせいだ。
ナイフを持っていた。
高橋...?
どうして?
どうして...?
「ねぇ、相葉ちゃん、唸ってる、大丈夫なの?」
大野は心配そうに相葉の顔を覗き込んだ。
「雅紀?」
相葉は眉間にシワを寄せてうなされていた。
松本は「雅紀?大丈夫?大丈夫だよ。」そう話し掛けた。
それでも、相葉は苦しそうにうなされていた。
続く