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チホは会社にいてもなんだか仕事が手につかなかった。
潤の話したい事。
それが気になっていた。
ケンカの理由もつまらない事。
ただの私のヤキモチ。
チホは仕事が終わると真っすぐにマンションの部屋に帰った。
部屋に帰るとすでに潤が帰って来ていた。
『潤?』
チホはキッチンにいた潤に呼び掛けた。
『おかえり』
潤は少し微笑みながらそう言った。
『…ただいま』
『食べる?』
潤がテーブルを見る。
『作ったの?』
『久々にパスタ作ってみたんだ。』
『うん。』
チホはテーブルに置いてあるお皿を見て何故か悲しくなって泣きそうになった。
涙が落ちそうになるのを我慢して、席に着いた。
『チホ、ごめんな。』
『うん』
チホはその言葉で、我慢していた涙がポロっと落ちた。
『泣くなよ。』
『だって…』
チホは涙を手で拭った。
『バカだな。とりあえず食べよ。』
『うん。』
チホは一口食べると、これしょっぱい、とちょっと笑った。
『アハハ、チホが泣いてるからしょっぱいんだよ。』
潤はそんなチホが可愛くて笑った。
『ふふ、本当だ…』
チホは泣いたままの顔で笑った。
食べ終わると、潤は空になったお皿を流しまで運んだ。
『潤?話しって何?』
『ん?うん。』
潤はキッチンからマグカップを二つ持ってテーブルまで戻って来た。
テーブルにそれを置くと潤は席に着いた。
『俺達もう3年になるよね?』
『うん…』
『この間みたいな事も、またあるかもしれない。』
『ごめんね…私…ヤキモチばっかり焼いて。潤、嫌だよね?』
『どうして?』
『だってヤキモチなんて。潤は仕事なんだし、仕方ないよね。』
『ごめんね。俺も誤解されるような噂…何度も言うけどあれは本当に違うから。』
『わかってる。本当はわかってるの。潤は私を裏切らないって。だけど…
不安なの。潤がたまに遠く感じる。なんでかな…』
チホは下を向いたままマグカップを見つめていた。
『チホ?』
チホはまだ下を向いたままだった。
『ね?こっち見てよ。チホ?』
潤はチホの顔を覗き込んだ。
『やっぱり、私じゃダメだよね。』チホは顔を上げ、潤の顔を真っ直ぐに見た。
『どうしてそう思うの?』
潤もまた、真っ直ぐにチホを見つめた。
『潤はアイドルで、私は普通のOL。釣り合わないよ。今日の話しも別れるって事でしょ?』
『チホはそう思ってたんだ。少なくとも俺は違う。ずっと一緒にいたいって思える相手だよ、チホは。』
チホは真っ直ぐに潤を見つめた。『本当?』
『もう3年も一緒にいて分からないの?俺の言う事が本当か嘘かって事ぐらい。』
チホの目からはポロポロと涙が落ちていた。
『わかるよ…潤ごめん。』
『もう泣かないで。』
潤は席を立ちチホを後ろからそっと抱きしめた。
続く