「キス」
今日もまた君が来ていた。
俺のベッドの上で今日はご機嫌だ。
「あのさ、それ俺のベッドだから。」
ゲームをしながらベッドの上の君に話しかける。
「いいじゃん。ここさ、すごく居心地いいの。」
ゲームの画面から目を離して彼女を見るとニコリと笑う。
「でもさ。」
「でも何?」
彼女は不思議そうに俺を見た。
俺は今日ははっきり言おうと思っていた。
「やっぱりさ。俺も男だしさ。」
「それってどういう意味?」
彼女は分かっているが分からないと言う素振りをした。
「だから~」
俺は今日は絶対に言おうと決めていた。
携帯ゲーム機をテーブルに置いて彼女に近付く。
「こういう事。」
俺は高鳴る鼓動の音を悟られないように君に近付く。
君が座っているベッドに手を付き君の顔に自分の顔を近付ける。
彼女とものすごい至近距離で見つめ合った。
「ちょっと何?」
君が戸惑っているのが分かった。
「俺も男だって事。」
彼女は俺をジッと見つめたまま何も言わなかった。
このまま顔を近付けたらキスが出来る。
そう思いながら躊躇する自分がいた。
ほんの何秒かの出来事なのにものすごく長い時間そうしていたように感じた。
君が俺の視線から外れてベッドから降りた。
「カズ?」
「へっ?」
俺はベッドに手を付いたままマヌケな声を出した。
「私だってカズが男だって事ぐらい意識してる。でもね。カズは絶対そんな事しないって信じてるから。友達として。」
君はきっぱりと俺にそう言った。
なんだか自分のした行為が恥ずかしくなり俺はそのまま動けなかった。
そして、そのままベッドにゴロンと仰向けになった。
「そっか。そんなに信頼してるの?俺の事?」
「当たり前。だってカズは大切な友達だからね。」
そう言いながら君は仰向けになってる俺の鼻をつまんだ。
上から俺を見下ろす君の髪が俺の顔に少し当たった。
その時ほんの少しいい香りがした。
俺がこんなに好きだと思ってるのにな。
片想いってやっぱり辛い。
彼女は俺が仰向けになってるベッドに座った。
そして、俺の横に無理やり仰向けになる。
「ちょっと・・・これはまずいでしょ?」
「カズ?私はね、大野くんが好きなの。だから間違ってもカズとはそんな事にはならない。だからこうやって一緒のベッドに横になっても平気なの。」
俺は鼓動の音が聞こえるんじゃないかと思うほどドキドキしていた。
「俺は無理だよ。」
そう言って君の方を向いた。
彼女を抱きしめようかと思った瞬間君が起き上がった。
「やっぱ男だね。カズも(笑)」
君はふふと笑ってベッドから降りた。
俺は完全に君に遊ばれてる・・・?
君は本当は俺の気持ちを知ってるんじゃないかと思った。
そして、同時に完全に男としてみられていないんだと思い知った。
あわよくばキス出来ると思った自分が恥ずかしい。
本当に。
バカだな。。
本当。
でもさ。
それでもさ。
俺はまだしばらくは君に恋してるだろう。