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潤は、少し早めに街に出て少し歩いていた。
その時、遠くで救急車が誰かを運んでいるのを見かけた。
救急車に乗り込む男が見えて、あれ?と思った。
この前、マンションの前であけみと一緒に帰って来た男だった。
あいつ、なんで救急車なんかに?
誰か具合悪くなったか。
この暑さだ。
熱中症とか・・・?
潤は、大したことじゃないと思った。
まさか、あけみが運ばれたなんて知る余地もなかった。
約束の時間までまだあったので1人でランチを食べてから待ち合わせのカフェへと向かった。
約束は14時だった。
コーヒーを飲みながら本を読んで彼女を待つことにした。
そろそろ時間だ。
潤は腕時計を見てソワソワしていた。
ところが、10分待っても来ない。
あけみのことだ。
また支度に手間取ってるに違いない。
でも、30分待っても来ない。
40分待っても来ない。
50分待っても。
1時間待っても来ない。
どうしたんだろう。
あけみは、約束を破るような子じゃない。
潤は急に不安になった。
まさか、あの救急車・・・?
そんなわけないか。
約束の前にあいつと会ってたなんてな。
ないよな。
まさか・・・。
潤はいてもたってもいられなくなりカフェから飛び出した。
さっきの場所に行ってみる。
近くのお店の店員にさっきここで救急車が来てなかったかと訪ねた。
「あぁ、なんか騒がしいから見に行ったら女の子が救急車に運ばれてたよ。なんでも階段から落ちたとかで。かなり上から落ちたみたいだからなぁ。どうなったか・・・」
「本当ですか?女の子が?」
「なんか、男女で揉めてたみたいでね。」
「ちなみにどんな女の子でしたか?」
「いや、そこまでは。。」店員は首を傾げた。
「そうですか。ありがとうございます。」
潤は、あけみの携帯に電話をしてみた。
出ない。
もし、救急車で運ばれたのがあけみならどうして。。
階段から落ちたって・・・。
この高さから?
まさか・・・。
潤は階段の上から下を見た。
結構な高さだ。
あけみ。
どこに行けば会える?
あけみ・・・
どうして・・・。
潤は、その場に頭を抱えて座り込んだ。