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タケルは憂鬱だった。
えりがまた連絡をしてくるようになったからだ。
こんな事なら早めに電話番号も変えておけば良かった。
えりとはずっと一緒だった。
小さい頃からずっと。
よく一緒に外で遊んで真っ黒に汚して怒られた。
えりの両親は家をあけることが多く一人だったえりを母親が預かった。
えりの母親と俺の母親が職場が同じだったと言うだけの知り合いだった。お人好しの母親が可哀想に思ったえりを預かるようになった。
えりの母親は夜の仕事もしていて、父親も家にいない事が多かった。
そのうちにえりの母親は男を作って出て行った。
父親も酒グセが悪くえりを育てられる環境にはなく、俺の家でずっと過ごすことが多かった。
兄妹のようにして育った。
だから、えりに「好きだ」と言われても妹みたいにしか思った事がないえりに対してどうしていいのか分からなかった。
えりはよく俺に好きだと言っていた。
でもある時真剣に男として好きだと告げられた。
俺は15でえりは14だった。
「えりが俺を?またまた冗談だろ?そんな事より早く彼氏でも作りなよ。クラスに好きな奴くらいいるだろ?」
「タケル!違うよ!私は男としてタケルを見てるの。もう限界だよ。好きなの。」
「えり・・・ごめん。妹みたいにしか思ったことはないんだ。」
「もういい!」
「おい、えり!?」
えりは泣いていた。
母さんにも怒られた。
「また泣かせたの?タケル?」
「おばさん、大丈夫だよ。タケルを叱らないで。」
俺はえりと一緒にいるのが気まずくなり家を出ることした。
高校生になりバイトを始めてお金を貯めて一人暮らしをするようになった。
もちろん父親はすごく反対した。
「高校生が一人暮らしってなんだ?!」
「バイトもしてるし、いいだろ?高校だってここから通うのは遠いんだ。」
「・・・」
俺が家を出る本当の理由は母親には話した。
いや、本当の理由は・・・違った。
母親も父親にそれとなく話してようやく分かってもらえて俺は家を出た。
バイト代だけでは足りず最後は父親にも少し援助してもらっての一人暮らしだった。
えりに出て行ってもらうわけには行かないな・・・。
父親はポツリと言った。
えりを一人にはやはり出来なかった。