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今日も仕事に行くとタケルくんは先に来ていた。
「あけみさん、おはようございます。」
爽やかな笑顔で挨拶してくるこの子のどこを気を付けた方がいいんだろ?
大丈夫だよね。
「タケルくん、おはよう。」
「あけみさん、今日はお昼一緒に食べませんか?」
「えっ?あー、別にいいけど。どうしたの?」
「あの、今日お弁当作って来たんです。」
「お弁当?タケルくんが?」
「そうです。なんか変ですか?」
「ううん。お弁当男子?タケルくん料理出来るの?」
「はい。ちょっとだけですけど(笑)」
私はちょっと迷ったけどせっかくだしと一緒に食べる事にした。
でも、本当は今日は自分もお弁当を持って来ていた。
潤の手作りのお弁当。
仕事中も楽しそうに私に話し掛けてくるタケルくんに「今、仕事中だよ。私語は禁止。」と何度も言った。
私とお昼を食べるのがそんなに嬉しいのかな。
やっぱりちょっと可愛いかも。
そんな事を思いながら仕事をしているとあっという間にお昼の時間になった。
事務所の奥にお昼を食べたり少し休めるようにテーブルと椅子がある。
二人はそこに座った。
「ねぇ、タケルくん。このお弁当も食べない?」
私は潤に作ってもらったお弁当もテーブルの上に出した。
「わぁ。これあけみさんが作ったんですか?」
「ううん。これは私の彼が作ったの。」
「えっ?」タケルの表情が見る見るうちに曇ってきた。
やっぱりまずかっかなと思ったがあけみはそのままそのお弁当箱の包みを開いた。
「ほら。タケルくんのお弁当も見せて。」
タケルはカバンからお弁当箱を出して蓋を開けた。
卵焼きやウィンナー。可愛く握ったおにぎりが入っていた。
「美味しそうだね。」
「良かった。朝から一生懸命作ったんですよ。」
タケルはニコッと笑った。
「あけみさんのは?」
「あぁ、これはサンドイッチかな。」
朝、潤が作っているのを見ていたので中身はわかっていた。
蓋を開けると美味しそうなサンドイッチが並んでいた。
「あけみさんの彼氏さんは料理出来るんですね。」
「うん。そうだよ。何でも出来るの。味も美味しいし。料理もね、イタリアンとか和食も出来るし。すごいんだよ。ちょっとした、おつまみもサラッと作っちゃうの。私なんかより家事が出来るし絶対いい旦那さんになるよ。」
「あけみさん?」
「何?」
「彼氏さんと結婚でもするんですか?」
「へ?」
「今、いい旦那さんになるって。」
「あ、ごめん。夢中になって喋ってて。変な事言っちゃったね(笑)」
「別にいいですよ。あけみさんが彼氏さんをどれだけ好きかってすごく良く分かりましたから。」
「あー、ごめんね。」私は、タケルくんの顔を覗き込んだ。
「大丈夫です。なんかちょっと傷つきましたけど。。」
「えっ?やだ本当にごめん。」
「いいんです。それでも俺はあけみさんが好きですから。」
「あのね、タケルくん?」
「何ですか?」
タケルくんの爽やかな笑顔とこの何とも言えない雰囲気に飲み込まれそうになる。
気を付けてってこの事だったのかな。。