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俺は、自分でも何を言っているのか分からなかった。
「幸せにするのは、俺じゃない…」
俺は、もう一度潤くんに言った。
しばらく黙っていた潤くんがスッと立ち上がった。
「なぁ?それ本気で言ってる?」
いつもの潤くんとは違った。
怒っているのが、すぐに分かる顔だった。
「本気。」
俺が小さくそう答えると潤くんは、俺に掴み掛かってきた。
「どうして、そんな事が言えるんだよっ!」
俺の胸ぐらを掴む。
俺は、その拍子に少し後ろに反った。
返す言葉がなく黙っていると、潤くんはさらに続けた。
「あかりだって、俺だって苦しんで答えを出したんだ。今更、戻れるわけないだろ。よく、考えろよっ!!」
俺は、潤くんの腕を掴んだ。
「離せよっ!俺は、ただ、あかりを幸せに出来るのは俺じゃないって、そう思ったんだ。ただ、そう思ったんだよ…」
「なんで…何でも完璧に出来るのに、なんで…恋愛に関してはそんなに不器用なんだよっ」
そう言って潤くんは、俺の胸ぐらを離した。
「早くあかりのところに行けよ。待ってるよ、きっと。」
「でも…、潤くんのあかりを想う気持ちには勝てない…きっと、俺なんかよりずっとあかりを想ってる。」
「もぅ…なんなんだよ…人を好きな気持ちに勝ち負けなんてないだろっ」
「だけどっ、俺はそこまであかりを…潤くんのようには想えない気がして…」
「どこまでバカなんだよ…二人とも想い合ってる。それで充分だろ…」
確かにそうだ。
お互い想い合ってるなら、それで充分じゃないか。
俺は、それ以上何を求めていたんだろう。
俺は、静かに立ち上がった。
「翔くん?あかりは、ずっと翔くんを見てたんだ。俺なんかよりもずっと…翔くんを見てたんだ。」
「…うん」
「これ以上…俺に惨めな思いはさせないでくれよ…。頼むよ…。」
「俺、あかりを幸せに出来るかはわからないけど、やっぱりあいつが好きなんだ。この想いは変わらない、だからちゃんとあかりに気持ち伝えるよ。」
潤くんは何も答えなかった。
俺は、静かに玄関へと向かった。
続く