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智があまりにも楽しそうに話すので翔は何だか面白くなくてソファーの前のテーブルに置いてあるコーヒーをがぶ飲みした。
「アチっっ!!」
「ちょっと、大丈夫?」智は慌ててキッチンから雑巾を持ってきて溢れたコーヒーを拭いて、洗面所からタオルを持って来た。
「翔ちゃんこれ。ズボン濡れちゃったよ。」
「ありがとう。」翔はズボンをタオルで叩きながら拭いた。
「シミになっちゃうかな?やけどは?」智は心配そうに翔を見た。
「大丈夫、大丈夫。自分でやったから。」
その様子を見ていたニノが「大野さん、夕方から仕事でしょ?少し寝た方がいいんじゃないですか?」と言った。
「あぁ、そうだな。」
翔はその会話を聞いて「ねぇ、なんなの?昨日は二人とも寝てないの?寝ないでずっと釣りゲーム?!」
「ん?私は寝ましたよ。大野さんのベッドで。」ニノは何やら含み笑いをした。
「なんで智くんのベッド?!」
「まさか、二人は?!」
「そんなわけないじゃん。」智は翔を見て笑った。
「大野さんのあのハンモックチェアに寝てみたいんだけど、ダメって言うしさ。仕方なくベッドですよ。」と寂しそうに言った。
「あれは、ダメだよ。あれに入って33歳を迎えたかったんだから。」
智は恥ずかしそうに笑った。
「智くんらしいな。」翔はそう言ってアハハと笑った。
「あっ、そうそう、昨日のZERO見ましたよ。相変わらずのなで肩で。」ニノはニッと悪戯っぽく笑った。
「見た見た、頑張ってたね。メール見た?」
智は嬉しそうに翔を見た。
「見たよ。メールありがとう。嬉しかったよー。」
翔はポケットから携帯を出してメールを見た。
「俺も送ったの見たでしょ?おめでとうメール。」
「ふふ、見たよ。オイラのメールと入れ違いで入ってきてびっくりだったよ。」
「大野さん、いつの間にメールしてたの?」
ニノが不思議そうに聞いた。
「ZERO終わってしばらくしたらね。翔ちゃん今日も素敵だったよってね。」
「ふ~ん…いつの間に…」
ニノはちょっとつまらなそうな顔をした。
「やっぱ、あのオレンジ色のネクタイ似合ってたわ。」
「あれね。智くんが選んでくれたやつね。」
楽しそうに話す翔と智を見てニノは「先週のネクタイは俺のプレゼントだもんね。」と、会話に入った。
「えっ?そうだっけ?」
「そうですよ。翔ちゃん忘れちゃったの?!」
「先週のネクタイまで覚えてないなー」
ニノはつまらなそうに口を尖らせた。
「それよりさ、翔くんは何持ってきてくれたの?」
「あっ、画材セット。使ってよ。最近描いてないでしょ?」
「あっ、うん。」
ニノはそれを聞いてちょっと複雑な表情をした。
「あれ?ニノは何持って来たの?まだ開けてなかったね。」
「えっ?あぁ、それは開けてからのお楽しみって事で。」と、ちょっと笑った。
「ふ~ん…何だろ?」智がそう言った時、翔が立ち上がった。
「翔くん、どうした?」
「帰ろうかなと思って。」そう言って翔はコートを着た。
「えっ、もう帰っちゃうの?」
「だって智くん、夕方から仕事なんでしょ?」
「じゃあ、私も帰ります。」とニノも立ち上がった。
「えっ、二人とも帰っちゃうの?」
「なに?寂しいんですか?」
「昨日ずっと一緒にいた仲じゃんっ。」
智はニノの腕にくっついた。
「まぁ、まぁ。それはまた今度ね。」
「え~」
「なんなの?二人とも。怪しいわ」翔は半ば呆れ顔で二人を見た。
翔とニノは玄関で靴を履くとドアを開けて外へ出た。
「じゃあ、智くんおめでとう。またね。」
「大野さん、昨日の続きはまた今度ね。」と小声で言った。
「ほら、また誤解を招くから。」智も小声で答えた。
「ちょっと、やっぱり二人とも一緒に寝たんだ。」
「いやいや、オイラはハンモックに入ってたから。」
「へぇー。そっか」
翔はちょっと安心したような表情をした。
「あっ、今ホッとしたでしょ?」
ニノに突っ込まれて翔はドキッとした。
「そんな事ないし…」
「じゃあ、本当に智くんまたね。 」
「大野さん、風邪引かないようにねー。」
そう言ってドアは閉まった。
智はリビングへ戻り翔が持ってきたプレゼントを開けてから、ニノのも開けて見た。
あはは…
智は見てちょっと笑ってしまった。
ニノも全く同じ物を持ってきていたのだ。
「結局二人とも同じプレゼントかよ。」
二人とも気が合うね。智は可笑しくて笑った。
続く