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まもなくして、東京での智くんの個展も始まった。
テレビで見る度、ますます好きになって智くんの、優しい笑顔が頭から離れない。
潤くんにも、素直になれ!って何度も言われた。
東京の個展が終わる頃、智くんからメールがあった。
《少し時間が取れそうなので一緒に画材を買いに行きませんか?》
私は迷ったけど、これで最後にするつもりで会う約束をした。
待ち合わせの場所まで行く途中で電話が鳴った。
智くんだ。
―もしもし?
―トモちゃん。ごめん、急なんだけどウチに来てくれるかな?
―えっ?
―急で悪いんだけど。
―うん。わかった。
私はちょっとドキドキしながら智くんのマンションまで向かった。
途中でタクシーを拾って乗り込んだ。
なんだろう。改めてウチまで来て欲しいって。
ものすごく鼓動が早くなって自分の心臓が止まっちゃうんじゃないかとさえ思った。
マンションの少し前でタクシーを止めて人目につかないように入口のドアを開けてもらいエントランスに入った。
智くんの部屋の前まで行くと更に鼓動は早くなった。
どうしよう。ドキドキして手まで震えてる。
チャイムを鳴らすとすぐに鍵が開いて智くんが顔を出した。
『いらっしゃい』とニコッと微笑む。
私は久しぶりに会う智くんと顔を合わせるのが恥ずかしくなって目を合わせられなかった。
『久しぶりだね。』そう言いながら視線は足元を見ていた。
『入って。』智くんが中へ入るように促した。
『お邪魔します。』まだドキドキしていて手も震えていた。
細い長い廊下の先にリビングがある。
私がリビングに入ると、智くんは『そこに座ってて』と言ってどこか違う部屋へ行ってしまった。
リビングにあるテーブルの前に座って待っていると智くんが『ちょっと来て 』とリビングの入口から手招きをした。
『なに?』
『いいから、ちょっと。』
私は言われるままに手招きしてる方へ歩いていった。
リビングから出るとすぐ左に部屋のドアがあった。
ここは、智くんが絵を描く部屋だ。
彼がドアを開けて私を中へ通した。
『?!』
『びっくりした?』智くんが勝ち誇ったように微笑んで私を見た。
『うん・・・どうしたの?』
『ふふふ、ちょっと内緒でね。本当はもっと早く見せたかったんだ。』
私は泣いてしまった。
そこには大きなキャンパスに私が描かれていた。