結局あたし達の出逢いはさ。


運命ってほど、大げさなものでもなくて。

奇跡って呼べるほどキレイなものでもなくて。

必然って思えるほど当たり前なものでもなかったよね。




単なる“偶然”。


気まぐれにいつもと違う道を通ったら、ちょっとお洒落なカフェを見つけてラッキー!

そんなのと同等の価値くらいのくだらない感覚だったはずよ。



だからさ。

二人の終わりだって別に大したことなくていい、って思うんだよ。


自然にさ、流れるようにさ、
なかったようにできる、してもいい、きっと、そんな二人だったんだよ。



――そんな二人だったはずなのに。


なんで、今、そう思えないんだろう。


私だけが。




初めて会った時のことは、今でもちゃんと憶えてる。

私たちは同じお酒を頼んで。

コンビニで、同じ飲み物を手にとった。


甘い甘いお酒。
甘い甘いカフェオレ。




でもこれからは、『仕事終わりのビール、最高だよね!』
なんて喉を鳴らせるようになるつもり。

真っ黒なコーヒーを相棒に、パソコンに向かうつもり。



喉が焼けるほど甘いカクテルなんて、居酒屋で二度と頼まないし。

ミルクたっぷりのカフェオレなんて、コンビニで二度と手に取ったりしないし。




そうやってさ。

全部全部、私を消すんだ。



君とのお揃い。


君とお揃いの、“私”。




二人が好きな、あの子の話。
二人口遊んだ、ちゃちなあの歌の話。
毎週二人で観た、あのドラマの話。

二人お揃いの記憶も何処かに飛ばしてしまうつもり。




こうして振り返ってみたら、二人のお揃いがたくさんありすぎて、なんだか自分が消えちゃいそうね。


ひとつひとつ、

記憶を辿って消していったら、
そのうちもう、私じゃなくなっちゃうかもね。






そうだな、それは少し淋しい気がするから。

無かったことにする前に、少しだけ呟いてもいいかな。





多分、私、

君のこと、

好きすぎたね。


多分、多分だけど、今も、まだ。



今更なんて、ただの独り言でしかないんだけど。



どうか幸せで。
どうか元気で。




情けなくて、辛くて、切なくて、

でも愛しくて。


届かない想いを胸に閉じ込めた。




――そんな深夜1時5分。




photo:01


写真提供:和月


センチメンタルな夜に降りたSSです。

和月Photo、創作意欲を掻き立ててくれます。


いつもありがとう!





ねぇ、ねぇ。


あの町の夏の匂いとか。

あの日に捨てた宝物とか。

あの時離れたあの子とか。



過去に失ったものたちが、眩しく見える夏の朝があって。

なんだか胸が落ち着かなくて、寝返りをうつ夜更けもあって。


少しばかり胸の奥が痛む、そんな瞬間が来たなら、

それは私が、新しい何処かへ進もうとしてる合図。


今私が居る、この街の夏の景色を刻むために。

傍の宝物を、胸にしまいこむために。

いつの間にか大切になった、目の前の手を、握るために。



今はもう、この手では届かない大切な想い出は、遠くへ、遠くへ、飛ばしてしまおう。

そのひとつひとつを大切に、大切に、折りたたんで。


色褪せる前に。

塗り潰される前に。



それは捨てるでも、消し去るわけでもなく。

ただ自由に放った想いは、いつかまた、何処かで出逢うかもね。



じゃあね、ばいばい。

またね、ばいばい。


…なんて、緩やかに別れを告げて。



ふわふわ風に乗ってゆく小さな想いたちを見届けた、夏の終わり。



新しい風の中を歩き始めた、午後の独り言。


さて。

君と笑い合う、秋が始まる。


二人で過ごす、初めての季節ね。


photo:01


写真提供:和月


久々に和月の写真を借りてSSを書かせてもらいました。



これから新しい道に進む…

その一歩の瞬間です。