パラマハンサ・ヨガナンダによる『あるヨギの自叙伝』とマーシャル・ゴーヴィンダン(ババジの孫弟子)の著書「ババジと18人のシッダ」により、世に知られるようになったとされる、マハー・アヴァター・ババジの話。

 マハーとは「偉大な」アヴァターは「神の化身」ババジとは「聖父」という意味です。
伝承としては西暦203年11月30日インド、タミル・ナドゥ州のカーヴェリー川の小村に生まれ、神のシヴァ神により不老不死の身体を与えられたといいます。彼の父親はこの村のシヴァ神を祀る寺院の僧侶でした。彼の生来の名前はナーガラージ(蛇の王)を意味し、神聖なるエネルギーと意識である「クンダリーニ」を表しています。5歳の時にある商人に連れ去られ、奴隷として売られる為に現在のカルカッタに向かったのですがナーガラージを買ったお金持ちが直ぐに彼を開放してくれたのです。その後ナーガラージは様々な地を行脚するサンニャーシンの小集団に加わります。彼等と共に旅をしながらインドの聖典を学んでゆきます。そしてもっと学びたくなったナーガラージは偉大なシッダを求めて巡礼の旅に出るのです。やがてアガスティアという偉大なシッダの弟子、ボーガナタルの元で4年間熱心にディヤーナ(瞑想)とシッダーンタ(シッダの哲学)を学びました。次に15歳の時にボーガナタルの奨めで、タミル・ナドゥのコートラッラムの地で48日間のヨガの苦行を行い、師であるアガスティアからクリヤー・クンダリーニ・プラーナヤーマを伝授されるに至ります。その後ヒマラヤ山脈の高地にあるバドリナート洞窟て18ヶ月間アガスティアとボーガナタルから教わった全てのヨガの技法を1人で実践しました。そうすることでナーガラージの体の全てのレベルにおいて神聖が降臨したのです。それは神の意識と力の為に存在するシッダとなったという意味でした。彼はもはや肉体が病に冒されることも、死を迎えることも無くなった、つまり、彼は神そのもののように、もしくは霊的な指導者そのものになったのです。
自分の肉体の物質化も、非物質化も意のままに行い得たと言われています。

 偉大なシッダとなったナーガラージは苦しんでいる人類の向上のために自分自身を捧げることを決意します。そのため、ババジは9世紀にヒンズー教に大改革をもたらしたアディー・シャンカラチャリヤや、ヒンズー教徒とイスラム教徒の両方から愛された15世紀のカビールに現れ指導をしています。彼等は共にババジからイニシエーションを受けたとされ、それぞれの著作の中でババジについて言及をしています。
 
 1954年、ヒマラヤ山中のパドリナート近くにあるアシュラムで6ヶ月にわたり、ババジはヨーギー・ラマイアに、アーサナ、呼吸法、瞑想法、マントラ、献身的な行為からなる144の技法全てを直伝したといいます。
このことでラマイアはヨギとして開花し、ババジ・クリヤ・ヨーガとして知られるこの技法を世界中の人々に伝授し始めるのです。
 
 ババジは何世紀にも渡ってヒマラヤ山中に棲み自分が選んだ一握りの弟子に指導し続けました。ババジは弟子のタイプに合わせてそれぞれを導き、徐々に自分自身を明らかにする方法をとっていました。
 また、1970年代にはヒマラヤの丘陵地帯でスワミ・サッティヤスワラナンダの前に現れ、ラヒリ・マハサヤの著作を翻訳して出版するように依頼したと言います。後にそれは「サンスクリットの古典」として出版され、シリーズになっています。
 ラヒリ・マハサヤの孫のシベンドゥ・ラヒリも1980年代後半にババジが自宅を訪ねてきて、ラヒリが世界中にクリヤ・ヨーガを広めてくれた功績を讃えたと言っています。また、1999年に2度、生気体(バイタル体)でゴビンダンにダルシャン(インドの言葉で聖者との謁見)を与えている。


 
 非常に突込みどころが満載のババジ伝ですが、まずナーガラージ(蛇の王)の名前を付けられいることや、彼の父親がシヴァ神を祀る寺院の僧侶であったことからして彼は選ばれた血筋の選ばれた子供であったことは言うまでもありません。彼は導かれるようにして偉大なシッダになるように修行を重ねていきます。これは身も心も悪魔に捧げるための訓練に他なりません。バトリナード洞窟でおそらく全てを悪魔に乗っ取られたと想像できます。もしかしたら、その洞窟での18ヶ月間もの長い修行の内に彼は亡くなった可能性もあります。
堕天使達は、かつて天から地上に降りた時には霊的な身体に人間の肉体を付けて現れたと聖書に書かれています。彼の亡くなった後、堕天使が彼の姿に変容して現れたのか、もしくは彼の肉体の中に入り込み生きているふりをしたのかもしれません。
人間が不老不死になり、何世紀も生き続けることはあり得ません。ババジは超奇跡の人として
歴史に伝承され続けていますが、人間だとはどうしても思えないのです。また、宇宙人とも考えられません。聖書には悪魔は光の天使として現れ人々を惑わすことを予め教えています。
ババジの語る言葉や思想は汎神論です。汎神論とは神と宇宙、または神と自然は同一であるとみなす哲学的・宗教的立場で論ずるものです。つまり、神=宇宙という人格のないものを対象とした理論です。宇宙も創造主が作られたものであるのですから、自然的、物質的なものを神としているのは間違っているのです。仏像は偶像崇拝であり、人間の思想を瞑想やヨガにより、神の意識や領域に到達し、神と人間が同化することはないのです。何でも神の造りしものは驚嘆すべきみ技ですが、神と同等ではないのです。これらは悪魔の常とする理論なのです。


 以下補足文を付け加えておきます。



◇補足文1.
 神智学協会のブラバッキーもババジのことを「新世紀の世界教師、マイトレーヤ(生ける仏陀)」と呼んでいた。


 ババジはイエス・キリストと同じ境地を達成したが救世主ではない。また、別の惑星からきた異星人でもない。シュリー・オーロビンド(「神の生命」霊的進化の哲学の著者)によると、「全人類に求めた心を超えた領域での人間の変容、進化の過程の次の段階であるとした存在。ババジは至高なる存在、神の道具としてこの不透明な世界に、透明な意識の光・絶対的な喜び・平安をもたらし誰もが、人間に偉大なる潜在能力を受け取ることができる。」としています。



◇補足文2.
 ババジ伝承では数百年〜千年以上に渡って肉体を維持したとされますが、その姿は若く15〜25歳以下に見えたと言われています。普段はヒンディー語を話すのですが、英語や他の言語も話せたといいます。外観的には中肉中背であり、肌は健康的な赤褐色で黒髪の長髪で整った容姿をしていました。「あるヨギの〜」や「ババジ伝」には実際の彼を写した写真も多く掲載されています。
彼の体は常に金色のオーラを放つような威厳があったといい、食事は一切取らず、影や足跡さえ出来なかったといいます。
ただし、幼少期はジャックフルーツが好物であったそうです。彼の目的は現代にクリア・ヨガを復活させるためでした。その為にその奥義をラヒリ・マハサラ(パラマハンサ・ヨガナンダのグルのグル)に授けたと言います。ラヒリ・マハサラの儀式に際しては黄金の宮殿を物質化したとされる逸話もあります。また、崖から飛び降りた弟子入りの志願者を死から蘇らせたなどもあり、またテレポートで自身が移動することも可能だったといいます。
ババジはジャンカラ(マラヤーリ人の8世紀に活躍した中世インドの思想家)やカビール(1440_1518年のインドの宗教改革者)にも教えを授けたとされています。


 支持者の中にはババジを弥勒菩薩と同一視する者もいます。



◇補足文3.
 ビートルズのアルバム『サージェント・ペッパーズ』のカバーにもババジの姿が描かれています。ビートルズは、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーと交友があり、ヨガや東洋の文化に対する理解があったようです。
 マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーについては(ヒンズー教に由来する超越瞑想トランセンデンタル・メディテーション、TM)とその普及を行う諸団体の創立者で、ニューエイジ・ムーブメントの一翼をになった人物です。超越瞑想は、シャンカラ・アーチャーリヤ(ヒンズー教シャンカラ派の僧院の法主)であったスワミ・ブラフマナンダ・サラスワティの教えを受け継ぐ、マントラ瞑想法(マントラ・ヨーガ)の一種です。 

 この世界のアイドル、ビートルズと親交のあったマハリシは、世界に股をかけ、ダイヤモンド取引からホリスティック健康療法まで、幅広い領域で数百万ドルもの事業を率いた人物として有名だったとか‥‥。