突然だけど、私の初恋の話をしようと思う。
今振り返ってみても、私が彼に出会わなければよかったのだ。
出会わなければ、こんなことにはならなかったのに。
私、中村海が初めて恋をしたのは高校1年生の時だった。
「ねえ、海はさこのクラスだったら誰と付き合いたい?」
中学から仲のいいグループのうちのひとり、福田優花(フクダユウカ)が
目を輝かせながら聞いてきた。
「えぇ、うーん…やっぱり高田くんが1番かっこいいんじゃない?」
私が苦笑を交えて答えると、近くで話を聞いていたクラスの女子全員が
一斉に肩を落とした。
「海もかぁ〜!やばいよ、クラスの女子全員高田くん狙いじゃん!」
どうやら、クラスの女子全員に聞いてまわったらしく、
高田くん以外の名前が上がらなかったようだった。
彼の名前は高田澪(タカダミオ)。
身長は182センチとずば抜けて高く、
顔立ちは綺麗と言った方が言葉が合っているような気がする。
同じ中学出身の女子がいうには、彼は中学時代バスケ部に所属していて、
キャプテンだったらしい。
加えて彼は字がとても綺麗で、書道で何度も賞を獲っているそうだ。
「なにそれ完璧じゃん!え、彼女いるのかな」
「中学の時に1人付き合ってたけど、卒業直前で別れてるから、
あのままだったら今フリーなはず!」
「めっちゃ一途じゃない?やば、本当にイケメンじゃん」
「え、元カノのインスタとか知ってる?」
みんなの高田くんに対する知識欲が止まらない。
すると突然教室の扉がガラッと開いて、1人の男性が現れたかと思うと、
「ほらーっ、席についてー」
と言った。どうやら担任の先生のようだ。
先生は私たちに背を向け、黒板になにやら書き出した。
(日…新…日新?...まこと…名字なんて読むんだろ…)
「はい、じゃあ皆さん初めまして。簡単にですけど僕の自己紹介をしたいと思います。この名字の人、僕今年で36になるんですけど未だに会ったことないです。
わかる人いますか?」
先生がにこにこしながら話をしているせいなのか、あまり36歳には見えない。
もう少し若そうに見える。
わかりませーん、と端の席の男子が大きな声で答える。
「まあ難しいもんな。日に新しいと書いてこれでひよし、と読みます。
これ、全国にもあんまりいないんだって」
へぇ〜とクラスの男子、無言の女子。
おそらく女子の頭の中は高田くんとどうやって仲良くなるかで
頭がいっぱいなんだと思う。
日新先生はかっこいいかと言われると、実際普通だった。
背は172センチくらい。担当科目は英語だった。
どこにでもいそうな先生。
それでもいつも先生は表情が明るかったから、
私はなんだか先生のことが気になった。
季節は過ぎて夏になった。
この頃になって、高田くんの人気はというとかなり落ち着いていた。
というのも、彼はあまりノリのいいタイプではなく、
誰に話しかけられても終始ドライだったからだ。
いくら顔とスタイルが良くてもね、と優花は言っていた。
そんな中、7月の席替えで私は高田くんの隣の席になった。
(挨拶くらいしておいた方が気まずくなくていいよね…)
「た、高田くんよろしく」
と、私が恐る恐る話しかけると高田くんは前を向いたまま、
うっす、と軽く会釈をした。
(そんなに悪い人ではなさそう…だな…)
「おっ、中村1番前か〜。寝てたら授業当てるからな〜」
と、頭上の方から声がした。日新先生だ。
「寝ませんよ〜、私授業は寝たことないんです!」
「あっ、本当に?!じゃあ中村当てないとな〜」
とケラケラ笑いながら先生は言った。
私はなんだか胸のあたりがざわついて落ち着かなかった。
#2に続く