重たい扉を開けた先

一歩踏み出せば落とし穴

ゆるゆると落下していく

時計ばかりが散らばっている


鍵穴が無言で要求するのは

昔に失くした記憶の鍵

この先へ進みたくて

私は毒薬を飲み干した


出逢った彼らは不思議の住人

饒舌な猫が弓なりに笑う

違うのよ 私は探しているだけ

それなのに

女王の剣が容赦なく振り上げられる


目が覚めた時

すべてが物語で

私は鍵を握りしめていた



表の物語が始まれば

また鍵を失くしてしまう



忘れて おしまい

娘は1人 森の奥
蔦の絡んだ木こり小屋
ハーブ園と古い本達
それを祖母から受け継いだ

夜梟は危険を知らせ
招かぬ来客が戸を叩く
不作法な彼らは剣を携え
少女の寝間に忍び込む

裏戸がきいと音を立て
闇夜に紛れた少女の傍ら
小さな鼠は息を呑む
炎は無情に小屋を覆う

霧深い森で幕を開ける
幼い少女の逃走劇
彼女は鍵を持っている
閉ざされた森を開く鍵

遠い昔 この森は
美しい魔女達の庭
彼女達が死に絶えた今
魔女の血を引くは少女のみ

傷付いた少女を追い詰める
黒衣を纏った北国の傭兵
白い狼が咆哮をあげ
彼の前に立ちはだかる

朝鳥が鳴き 村が目覚める
防人は古びた見張り塔の上
陽に輝く白の獣と出会い
魔女の血を引く少女を託される


丘の向こうに歓迎の花火
絢爛豪華な馬車に乗る第六王子
やがて運命は彼を巻き込む


ーーーーー防人が謳う始まり


十年後のことを占った老婆は
路地裏で独り骸になった
光を見失った目で天を仰いで
胸に刺さるナイフは死んでも離さない

冷たくなった老婆を見つけた少女は
日記帳の最後に決意を綴る
「目を瞑り耳を塞ぎ口を閉ざして生きて行くの」
太陽のような笑顔はもう見られない

黙した少女に恋する少年は
あの日の彼女を探す旅に出る
見失った光は世界の何処かに必ずあるからと
交わした約束が彼を責め立てる

骸が土に変わっても
墓前に立ち尽くす二つの存在
十年の時が流れて

少年は握り続けた少女の手を離す


他人に影響することを恐れた少女は
孤独な暮らしを自分に強いた
けれども世界に有り続ける限り
何者にも交わらず生きる事は叶わない
少女は必死で考え続けた
他人への影響を統制する方法
行動が恐ろしい結果を生まないように
二度と、誰も、殺さぬように

占いを請うたのは少女
老婆は何も言わずに逝った

痩せ衰える少女
少年は次第に疲れ果て
彼女の望む世界について考える

何者にも影響しない世界

少年は荒んでいく頭で一つの結論を出す
少女に向けて引き金を引いた

それは少女が
何度も夢想しながらも避け続けた結末

少女が最期に遺した影響は
その後、一生少年に纏わりつく


老婆は請われて十年後を占う
少女は期待に瞳を輝かせた
視えたのは引き金を引く青年
何も語らず、老婆は少女を家に帰す

その夜
物取りが老婆を襲い
彼女は自分の遺す影響を知る

壊れて行く二つの世界
守るためにも此処で死ぬ訳には
握り締めたナイフはしかし
図らずも彼女を殺した

最期に彼女は天に問うた
ただ一つ、何故と

天を仰ぎ息絶えた少女の傍ら
少年は途方に暮れる

一寸の解放感
その先に
永遠の苦悩