ある米国テレビ番組の映像を見ていたら、自他ともにKISSのファンだと認めるアメリカの芸人たちが異口同音に「KISSはユダヤ版ビートルズだ!」と言っていることに気が付きました。

$More Than a Feeling-gene story kiss


ジーン・シモンズは元々イスラエル出身のユダヤ人だということは広く知られていますし、ポール・スタンレーはマンハッタンのユダヤ系の家庭に生まれています。(父方の祖父母がポーランド系ユダヤ人、ポールの母はドイツ・ベルリン出身)

20世紀の欧米の歴史を語る上で避けては通れない*ホロコースト。実は、ジーンの母フローラはホロコーストの生き証人なのです。

(*Holocaust(ホロコースト)とは、ユダヤ教で神に供える犠牲に由来。転じて全滅、大虐殺の意となり、とくにドイツ・ナチスによるユダヤ人大虐殺のことを言います。ドイツ占領下のポーランドのアウシュビッツやソビブルなどの収容所に欧州中から移送されたユダヤ人はガス室などで殺害されました。1945年までに約600万人が殺されたといわれています。)

$More Than a Feeling-Gene and mom


ジーン・シモンズは1949年8月25日にイスラエルのハイファで誕生。生誕名はCheim Witz(ハイム・ヴィッツ) 両親はともにハンガリー出身のユダヤ人でした。8歳の時に父が家を出て母子家庭になります。母と二人でアメリカへ移住、姓を母の旧姓であるKlein(クライン)に改めます。英語も話せないままアメリカ・ニューヨークに渡った母は朝から晩まで身を粉にして働きながら1人息子ジーンを育て上げます。


英語が話せず周りに馴染めなかったジーンは、TVやコミックの世界に魅了され、イスラエル移民のひとりぼっちの自分がヒーローに変身するお話を空想しては寂しさを紛らわしていたそうです。大学時代からバンド活動を始め、卒業後は音楽を続けながら雑誌Vogueの編集者のアシスタントをしたりマンハッタンの小学校教師として働き、スタンレー・アイゼン(後のポール)とはその頃出合い、後にKISSを結成することになります・・・。


さてさて、そんな美しくて強い母フローラとジーンがハンガリー語で一緒に歌う素敵な映像を見つけました。歌う前の会話も尊敬と愛にあふれています。

「・・・ビルボードの受賞にあたり息子の努力が報われたことを嬉しく思います。私は何もできなかったんですよ、何も教えられなかった。全部、彼がひとりで頑張った結果です。」

「そんなことはない。母からは多くを学んだ。初めてのギターは母が買ってくれた。何をしてもどんな時も『ジーン、あなたは凄い』と励ましてくれた。僕に『勝ち抜く勇気』を与えてくれたんだ。」








拙文「Gene (KISS) 母とホロコースト」は
思いのほか長くなりそうなので2部に分けることにします。

Part 2 では、ジーンが涙ながらに語る母のホロコースト生存体験
そしてアメリカ移住秘話をご紹介します。



More Than a Feeling-gene-mom1