今回の学会抄録集から・・まとめ | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 今回の学会でも、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これを3種の神器とされ、これによって、より科学的で的確な頭痛診療が可能となったとされます。
 世界共通の片頭痛の診断基準は、1988年の国際頭痛分類初版で確立され、これが2013年の国際頭痛分類第3β版に受け継がれています。
 「慢性頭痛」の研究は「国際頭痛分類第3版 β版」に従って、個々の定義に厳格に従って、それぞれを個別に進める必要があるとされます。
 日本のエキスパートによる頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると自負され、学会員に対しては、欧米の頭痛診療および研究に追いつき・追い越せということが当面の目標とし、今後とも専門医養成を目的としてHMSJを定期的に開催されます。
 片頭痛の治療原則は、誘因と思われるものをできるだけ取り除くこと、それでも痛くなったら片頭痛治療薬を飲むこと、そして頻発するようであれば予防薬を飲むこと、という3つの柱(原則)から成り立っているとされています。
 患者さんの満足度を重視され、専門医以外の頭痛診療では患者さんの満足度が満たされていないと、さも、専門医による頭痛外来による診療が満足度が高いと自画自賛されます。


 そして、トリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。その理由は以下のようにこれまで、私達に説明・解説されてきました。


トリプタンはなぜ片頭痛に効くのか・・片頭痛のメカニズム


 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。(現在、新薬として開発中の薬剤はCGRPの作用を打ち消すためのものです)この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
 皆さんは、これまで頭痛外来でトリプタン製剤を処方された際に、必ずこのような説明を受けてこられたと思います。


 基本的に、片頭痛発作時には、脳内セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っている「脳内セロトニン」をバックアップしているだけです。
 片頭痛患者さんには生まれつき持っている「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在します。「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在すれば、同時に「セロトニン神経系」の機能が悪化します。これに生活習慣の問題点が加わることによって「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてきます。

 このため頭痛を無くすためトリプタン製剤投与し、「脳内セロトニンの低下」を補填しても「ミトコンドリアの機能低下」状態は厳然として存在しています。
 片頭痛発症の根幹には「ミトコンドリアの機能低下」によって形成された「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作につながっていきます。

 このため、トリプタン製剤によって痛みを抑制していますと、根幹にある「酸化ストレス・炎症体質」はさらに増悪してくることになり、慢性化に繋がってきます。
 先程のストレスなど何らかの理由というのは、過剰に産生された活性酸素や遊離脂肪酸が引き金となっていることを意味しています。


 慢性頭痛は、皆さんが手軽に服用される市販の鎮痛薬、さらに病院で処方される非ステロイド性抗炎症薬、エルゴタミン製剤、さらに片頭痛で現在最も多く使われるトリプタン製剤も含めて各種の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで解決したと安易に考えがちです。
 慢性頭痛とは、私達の生体の生活のリズムの歪み(乱れ)すなわちホメオスターシスの乱れから起きてくる頭痛です。この「生活のリズムの歪み(乱れ)」の原因を突き止めることが最も重要になってきます。

 学会を主導される方々には、このような慢性頭痛とは何かといった概念が全く存在せず、ただ単に片頭痛にはトリプタン製剤をと短絡的に考え、これで片頭痛治療は完結したと考えることに問題があります。
 片頭痛といえどもトリプタン製剤によって頭痛を例え軽減させたからといって何も解決されていません。その根底にある病態はそのままであり、徐々に増悪することになります。トリプタンといえども単なる鎮痛薬にすぎないことを忘れてはなりません。


 しかし、専門医は、トリプタン製剤を片頭痛の特効薬とされ、あたかもこれで片頭痛が治るかのごとく説明され、さらに片頭痛の病態(メカニズム)は先述のように、すべてトリプタン製剤の作用機序の面から説明してきました。 今回の学会でもこのような基本的な考えは全く変わることはありません。


 これまでも、当ブログで「山積された課題」として以下の項目を挙げました。


 1.「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による」頭痛なのか
 2.「片頭痛が”多因子遺伝”である」かどうか 

 3.頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」のエビデンスは?

 4.頭痛診療に「問診表」を用いることの是非


 このようなことは、「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」との仮説をたてることで容易に片頭痛の病態(メカニズム)は説明ができるはずです。
(仮説ではなく、このように考える先生方はこれまでも多数おられました。)


 片頭痛の大半は、遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の一種です。
 すなわち、片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、”環境因子”として、生活習慣(とくに食生活)が原因で、エネルギーを生み出す際に生する活性酸素によって自分のミトコンドリアを傷つけることによって「さらに、ミトコンドリアの働きを悪く」させて「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患と考えれば、片頭痛の遺伝様式は”多因子遺伝”に他ならないということです。
 ミトコンドリアの働きの悪さが存在すれば、当然、同時に「セロトニン神経系」の働きも悪くなってきます。これに生活習慣とくに食生活の問題点が加われば「脳内セロトニンを低下」させることになります。そして「ミトコンドリアの働きの悪さ」に「脳内セロトニンを低下」が存在すれば、私達は日常生活を送る際、前屈みの姿勢をとる場面が極めて多いことから容易に「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こすことになります。
 このように、片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、謂わば、あなたの”生き方(ざま)”すべてが関与して起きてくるものです。これらは、いずれも日常生活を送る上で、”何気なく無意識に”行ってきた「食事・姿勢・体の使い方」が原因となっていることを意味しています。このために、あたかも”遺伝的疾患”であると誤解された理由でもあります。
 そして、片頭痛であれ緊張型頭痛であれ、これらを引き起こす要因は共通しています。 この場合、緊張型頭痛の状態に、遺伝素因・生活習慣の問題・外部の生活環境によってミトコンドリアの機能をさらに悪化させ、同時にセロトニン神経系の機能を低下させ、これに生活習慣の問題がさらに加わることによって「体の歪み(ストレートネック)」を増強させることになってきます。この3つが相乗的に加わることによって、緊張型頭痛から片頭痛へと移行してくることになります。このように緊張型頭痛と片頭痛は一連の連続したものであるということです。
 こうしたことから、現在頭痛外来で使用される「問診表」は、単に片頭痛を見逃さないために作成されたものであることから、こうした「問診表」という色眼鏡を通して患者さんを診てはならないということです。


 このように「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」と考えさえすれば、先程の「山積した課題」は一挙に解決されるはずです。


 しかし、学会を主導される方々は、現在の学会を結成された段階から国際頭痛学会が作成された「国際頭痛分類第3β版」を頭痛診療および研究の絶対的な基準とされ、さらにこれを基に「慢性頭痛診療ガイドライン」を作成されました。「国際頭痛分類第3β版」は元々欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成されたことから、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬として片頭痛治療の第一選択薬とされ、先程述べたような片頭痛の病態(メカニズム)をすべてトリプタン製剤の作用機序の面から考えるようになり、「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」といった考え方は徹底的に排除されることになりました。
 これが、学会結成以来、現在まで継続され、今回の学会でも改められることはありません。この点を認識しておきませんと、現在の片頭痛医療は理解できません。


 現在の日本頭痛学会では、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考え、片頭痛の大半が”多因子遺伝”であると考えることはまったくありません。
 そして、先程の「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とは考えません。このため、頭痛発作時にみられる「脳内セロトニンの低下」がどこから生じるのかは全く不明とされます。さらに、片頭痛発症の根幹ともなるはずの「体の歪み(ストレートネック)」を頭痛そのものとは全く因果関係はないとされます。


 現在の研究では、活性酸素は”全疾患の90%以上に何らかの形で係わっている”と言われています。片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。片頭痛の場合では、この活性酸素がダイレクトに関係しています。この点はメカニズムの部分で述べました。
 糖尿病学会は、(片頭痛と同じく)糖尿病を”多因子遺伝”と捉え、すでにその”環境因子”を想定されました。さらに、最近では、糖尿病研究は、活性酸素およびミトコンドリアの観点から病態の解明が進められています。
 このように、現在の頭痛学会は、片頭痛を”多因子遺伝”と捉えることなく、糖尿病学会と遙かに遅れをとっていると言わざるを得ません。まさに、雲泥の差というべきです。


 そして、今回の学会抄録集を通読しても、このような観点から論じられることは全くないようです。

 「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とは考えないことから、片頭痛の慢性化がどのようにして引き起こされてくるのかといったテーマが、今回の学会でも取り上げられ、まさに不毛な議論に終始されます。
 また、「片頭痛がなぜ女性に多いのか」という基本的な考えもなく、「月経関連片頭痛をどう治療するか」、といった発表をされます。そして、この月経期間に起きる片頭痛に対して作用時間の長いトリプタン製剤を処方すべきとされ、すべて薬剤に求めます。女性特有の生活習慣はまったく念頭に置かれることはありません。


 このように、学会が結成されて以来、現在まで学会で論じられることは堂々巡りの繰り返しで、何ら進展することはありません。にも係わらず、日本のエキスパートによる頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると自負されます。
 このように考えてみれば、こうした停滞している根源は、今回の学会でも言われている、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これを3種の神器とされ、これによって、より科学的で的確な頭痛診療が可能となったとされることにあります。
 この点にあると考えなくてはなりません。


 頭痛の専門家は、昨日も述べましたように、複雑化した頭痛に対して、「頭痛ダイアリー」を患者さんに記録させることによって”謎解き”をされ、この記録をもとに、”片頭痛”とか”群発頭痛”とか”睡眠時頭痛”というように「国際頭痛分類 第3版β版」に従って頭痛診断を行い、「慢性頭痛診療ガイドライン」に記載される”適切とされる薬剤”を処方するに過ぎず、頭痛そのものを”根源的に”考えようとされることはありません。
 このような考え方の根本には、頭痛はすべて、この「国際頭痛分類 第3版β版」に記載されており、あたかも、起こり始めから”片頭痛”とか”群発頭痛”とか”睡眠時頭痛”のような形になっていると考えることにあります。その典型例は小児の頭痛です。小児では自分の頭痛をうまく表現することができません。これは大人でも言えることです。頭痛の性状が分からなければ、診察医にはお手上げということを意味しています。
 最も問題視されなくてはならない点は、起こり始めから”片頭痛”とか”群発頭痛”とか”睡眠時頭痛”のような形になっていると考えることにあります。昨日も”睡眠時頭痛”で述べましたように、頭痛の起こり始めは「何でも無い」「国際頭痛分類 第3版β版」でも診断できないような頭痛から始まっているはずです。これに対して市販の鎮痛薬を常用することによって「何でも無い」頭痛が”複雑化”してきます。
 また、これまでは片頭痛研究では、「国際頭痛分類 第3版β版」で厳格に片頭痛と診断された方々を対象にして行われ、緊張型頭痛は徹底して除外されました。前々回も述べましたように、本来、緊張型頭痛の状態に、遺伝素因・生活習慣の問題点・生活環境の問題点が加わることによって片頭痛を発症してきているはずです。このように、片頭痛の前段階とされる緊張型頭痛を除外する形で、片頭痛研究が進められてきました。こうしたことから、一般の方々には、あたかも片頭痛が突如として、緊張型頭痛と全く関係なく発症するかのごとく啓蒙活動が専門医によって繰り広げられてきました。
 このような状況に至ったことから、地図に相当する「国際頭痛分類第3β版」、旅行案内として「慢性頭痛診療ガイドライン」、旅行記録として「頭痛ダイアリー」があり、これを3種の神器とされ、これによって、より科学的で的確な頭痛診療が可能となったとされます。
 さらに「慢性頭痛」の研究は、「国際頭痛分類第3版 β版」に従って、個々の定義に厳格に従って、それぞれを個別に研究を進める必要があるとされます。
 このような慢性頭痛、本来のあり方を全く無視した形で、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛といった個別的に、その研究を進めるべきとされます。これらは、本来、すべて一連の繋がったもののはずです。こうした現実を無視されて研究が進められ、今回もこの姿勢をまったく改めることなく継続されています。このようなことでは、いつまで経っても、慢性頭痛の解明には至ることはないことは素人でも理解されるはずです。


 このように「国際頭痛分類第3版 β版」を頭痛診療および研究の絶対的基準とされることに問題があり、これを厳守することによって「どうにもならなくなった慢性頭痛患者」を生み出しているという事実を覆い隠したまま、頭痛診療のレベルは国際的にもトップクラスにあると自画自賛されていることは、まさに滑稽としか言いようがないようです。
 このような「国際頭痛分類第3版 β版」は、あくまでも「診断基準」として、これに拘ることなく、慢性頭痛すべてを”ひっくるめた形”で捉える考え方で、新たな「臨床頭痛学」を構築していくしかないようです。それも、慢性頭痛患者さんの立場にたった”新たな「臨床頭痛学」”が求められているようです。


 これが、今回の学会の抄録集を熟読した結論です。