緊張型頭痛では・・今回の学会抄録集から  | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 今回の学会抄録集でも、「国際頭痛分類第3版 β版」に従って、「慢性頭痛」を個々の定義に厳格に従って、それぞれを個別に研究を進める必要があると述べられます。
 しかし、果たして、そうなのでしょうか。私は疑問に思っております。


慢性頭痛を引き起こす要因として


1.「ホメオスターシスの乱れ」
2.「体の歪み(ストレートネック)」
3.ミトコンドリアと脳内セロトニン


 この3つの要因があります。これまでの繰り返しですが、復習です。

「ホメオスターシスの乱れ」 

 「慢性頭痛」は「健康的な生活」が送れていないことに根本的な原因があり、”慢性頭痛”とは、「不健康な生活を送っている」という生体の警告(危険)の信号”サイン”なのです。

 健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。この生活のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、体内時計により刻まれ、ミトコンドリア・セロトニンにより制御されています。
 ホメオスターシスの維持には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。
 ストレスは自律神経を失調させ、内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
 ”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 このようにセロトニン神経は「ホメオスターシス三角」で重要な位置を占めています。
 ”生理活性物質”は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、 局所ホルモン(エイコサノイド)(プロスタグランジン)のバランスを乱すことになります。結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6は細胞膜を構成しており、このためミトコンドリア・セロトニン神経系にも影響を及ぼすため、この摂取バランスは極めて重要になっています。

 ”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
 また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。家畜に投与された抗生物質が食肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱らせるようなこともあります。このようにして腸内環境は悪化してきます。
 ”腸内環境”の悪化は「頭痛を引き起こしやすい状態」を形成してくることになります。

 このように、この3つは、生活習慣とくに食生活・ストレスによって影響を受けています。この「ホメオスターシスの乱れ」が慢性頭痛を起こしやすい状態を作ってきます。


「体の歪み(ストレートネック)」

 私達は、日常生活を送る場面では、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられており、このため、当然のこととして、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。
 この日常的な「前屈みの姿勢」は緊張型頭痛の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって緊張型頭痛が増強してくることになります。
 これが、慢性頭痛発症の起点(スタート)となっています。

ミトコンドリア


 緊張型頭痛の場合、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しないことから、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、片頭痛の場合の程には、とくに受けにくいことになります。
 しかし、ミトコンドリアの働きは、生活習慣および食生活の問題、外部の生活環境によって悪化してきます。この点が極めて重要で、素因がないからと安心してはいけません。
 そして、「ミトコンドリアの働きの悪化」と「脳内セロトニンの低下」は、「体の歪み(ストレートネック)」を形成しやすくさせることになります。
 そして、片頭痛のように「ミトコンドリアの活性低下」という遺伝素因がなくても、普通の人でも、「ミトコンドリアの働きが悪さ」と「脳内セロトニンの低下」を来す生活習慣が継続してくることによって、片頭痛とまったく同じような頭痛が引き起こされることになるということです。そうなれば最終的には緊張型頭痛であれ片頭痛であれ同じような頭痛になってしまうということを意味しています。

 このように、緊張型頭痛も片頭痛も共通した要因を持っています。緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、「ミトコンドリアの活性低下」という遺伝素因を持っているかどうかだけの差でしかありません。


ストレスによる影響


(1)ストレスと脳内セロトニン


 ストレスを受けると、脳にある視床下部がそれを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはアドレナリンが分泌されます。
 さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌されます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌にブレーキをかけます。
 脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部という場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分はセロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。
 嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。


 このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
 副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
 副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
 このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
 縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接続して、痛みを抑制します。


 以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。


(2)ストレスとマグネシウム


 通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
 アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
 こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏に陥ります。
 ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。また副腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
 またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしまうのです。
 アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
 またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要とされますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいます。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。

 ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネシウムの排泄量が増えています。
 これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌されるときにマグネシウムが消耗されたためです。
強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ、益々ストレス状態が悪化するという悪循環に陥ります。


 マグネシウムの不足によって緊張型頭痛を起こすという研究報告もあり、不足したマグネシウムを補うことで頭痛を改善に導いてくれます。
 マグネシウムが役に立つのは、肩こりなど筋肉の緊張から来る筋緊張性頭痛です。マグネシウムは、筋肉の緊張を解いてくれます。また血管の筋肉をリラックスさせることで血流が増え、血行が良くなるからです。
 マグネシウムを大量摂取することで血液の循環がよくなり、また筋肉の収縮も抑えるので、緊張型頭痛にも効果があります。


緊張型頭痛とストレスはどう関与するのでしょうか


 緊張型頭痛は、精神的なストレスと、身体的なストレスの両方で起こります。
 緊張型頭痛は、筋肉や精神の緊張をうまく解消できない人に起こりやすいのです


・「身体的なストレス」


 前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣などによる筋肉へのストレスにより、頸や頭の周りを取り巻く筋肉が収縮して凝り固まる結果重圧感を生じます。
 ストレートネックを生み出す最大の原因は、前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣にあります。原因の99% は、ここから来ていると言っていいでしょう。
 パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていたり、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。1日のほとんどの時間を前かがみやうつむきで過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の生活習慣が、ストレートネックをつくる”大もと”になっているのです。


・「精神的なストレス」


 ストレス、不安、抑鬱などが長時間続くと、「精神的なストレス」がたまります。すると神経や筋肉の緊張が高まり、痛みに敏感となり、頭痛が起こります。
 これは先程述べたことですが、嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。
 ストレスが持続すれば、慢性的な”脳内セロトニンの低下”を引き起こし、これが頭痛の原因になります。


慢性頭痛の発症の起点は”前屈みの姿勢”


 日常生活を送る上で、私達は前屈みの姿勢をとる生活環境に置かれています。特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
 さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。
 こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。これにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たいモノを持つ仕事をしている、 赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎(背骨)の歪み(捻れ)が生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。
 このようにして「体の歪み(ストレートネック)」が作られてくることになります。

 体の歪み(ストレートネック)は慢性頭痛発症の起点となるものです。まず、緊張型頭痛が引き起こされ、これに環境因子が関与して、片頭痛へと移行します。
 このように、体の歪み(ストレートネック)は、片頭痛の屋台骨、骨格ともなるべき基本的な病態となっています。


日常茶飯事にみられる”ストレートネック”


 ミトコンドリアは食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
 ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「脊椎起立筋」に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして、姿勢が悪くなってきます。
 そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系が「セロトニン神経系」です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
 「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
 セロトニン神経系は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉に働きかけていることから、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が、困難となり、姿勢が悪くなってきます。
 このように、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与し、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
 結果的にストレートネックを引き起こしやすくなってきます。


 現代社会では、活性酸素に満ちあふれた生活環境に置かれています。
 さらに、知らず知らずのうちに摂取される環境汚染物質や残留農薬などの有害物質は「代謝異常」にも深く関わり、「ミトコンドリアの働き」を悪くさせます。
 日頃から、こうした有害物質を除去させるためには、デトックスが必要となり、水分摂取が不十分で、食物繊維の摂取が少なければ、有害物質が蓄積することになります。その結果、益々、「ミトコンドリアの働き」を悪くさせます。
 また、身の回りには活性酸素を発生するものが多く存在し、これがまた「ミトコンドリアの働き」を悪くさせる要因となります。このため抗酸化物質の摂取が不十分であったり、睡眠不足になれば、活性酸素が過剰に蓄積することになり、これらがすべてミトコンドリアの働きを悪くさせてきます。
 こうしたことから、50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、セロトニン神経系の機能が低下することにより、「脳内セロトニン低下」を来たし、この両者が、ストレートネックを引き起こしやすくさせています。


 このような時代的な背景をもとに、現代では、「ストレートネック」が日常茶飯事にみられるようになってきました。こうしたことが、専門家のいわれる”ストレートネックが日常茶飯事にみられる”とされ、頭痛とは因果関係なしとされる理由となっています。
 このような時代的な背景を考察することなく、専門家は”早とちり”をされます。まさに、このような点を全く意識されることはありません。謂わば仙人のように霞を喰って生きておられるのでしょうか??


緊張型頭痛の起こり方


 人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨全体にかかることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないようにS状の湾曲を呈しています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いておれば、後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。これが、専門家が”とるに足らない頭痛”とされる緊張型頭痛です。


 このような専門家が”とるに足らない頭痛”とされる緊張型頭痛に対して、現在、市販の鎮痛薬が安易に服用されています。昨日も述べましたが、市販の鎮痛薬を常用し頭痛という痛みだけを抑制していますと、先述の根底にある病態(ホメオスターシスの乱れを来す要因)は、おかまいなしに進行してきます。そして、最終的には、ミトコンドリアの機能を悪化させ、脳内セロトニンを低下させ、薬剤乱用頭痛を引き起こし、ひいては片頭痛への移行を加速させることになってきます。


 以上のように、緊張型頭痛も片頭痛もその発症要因は共通しているということです。これを個別に論じてはならないということです。
 そして、緊張型頭痛は慢性頭痛発症の起点となるもので、「体の歪み(ストレートネック)」は慢性頭痛とくに片頭痛の基本骨格となるものです。これにもろもろの生活習慣とくに食生活の問題、遺伝素因、さらに外部の生活環境が加わって、片頭痛へと移行します。 このように分析的・段階的に捉えることが重要になってきます。


本日のまとめです


 以上でお分かりかと思いますが、緊張型頭痛は生活習慣病そのものということです。

 こうしたことから、生活習慣の改善の目標は、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、姿勢を正しくし、リラックスすること」です。
 これが、従来から行われていた緊張型頭痛の患者さんへの生活指導の基本です。


 規則正しい生活とは、生まれつき体に備わっている生体リズムに沿った生活という意味で、最も自然で健康的な生活と言えます。
 ストレスは「ホメオスターシスの三角」を乱すことになります。この「ホメオスターシスの三角」には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。


 食事をバランスよく摂ることは、ミトコンドリアがエネルギー産生を行うためと、脳内セロトニン産生を行うために必須の条件になります。
 “小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば益々「脳内セロトニンが低下」することになります。
 必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスを崩せば、生理活性物質の産生に問題を生じます。
 欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。食物繊維が不足した「不健全な食事」では、腸内細菌のよい働きを引き出すことはできません。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって最大の敵と言えます。
 睡眠を十分にとることは、日中に傷ついたミトコンドリアの修復に不可欠であり、早寝・早起きと”朝日を浴びる”ことはセロトニン神経の活性化に大切になります。
 姿勢を正しくすることは、背筋を伸ばすことでミトコンドリアを活性化させます。
 リラックスすることは、自律神経を調整するために必要で、ストレス耐性の体づくりにはセロトニン活性化が不可欠となってきます。

 
 結局、生活指導の根幹は、ミトコンドリアを活性化(元気づける)させ、脳内セロトニンを如何にして増やし、体の歪み(ストレートネック)を是正し、「ホメオスターシスの三角」を乱れを正すことにあります。「ホメオスターシスの三角」を乱れを正すためには、自律神経を整え、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスに配慮し、腸内環境を整えることが必須となってきます。
 このような生活習慣の改善点は、片頭痛の場合と全く同様です。ということは、片頭痛に移行する前段階である緊張型頭痛の段階でこのような「生活習慣の改善」を行うことが重要です。要は、片頭痛へと移行させないことが極めて重要になってきます。


 このように考えれば、今回の学会抄録集で示される「慢性頭痛」を個々の「国際頭痛分類 第3版β版」の定義に厳格に従って、それぞれを個別に研究を進める必要がある」といった考え方では、慢性頭痛そのものの解明には程遠く、ましてや「患者救済」の観点からは何ら意味をなさない、ということが理解されたはずです。

 今回述べて参りましたことは、「国際頭痛分類 第3版β版」の定義とは、まったく関係ないものです。このような「国際頭痛分類 第3版β版」といった定義を度外視しなくては、慢性頭痛を考えることはできないことになります。このことが、これまで慢性頭痛の解明を困難にさせた原因と考えなくてはなりません。「国際頭痛分類 第3版β版」といった”診断基準”の枠内で考えることには自ずと限界があります。このような基本中の基本が全くわかっていないようです。
 緊張型頭痛と片頭痛は一連の連続したものです。これを別々に考えること自体問題があるということです。
 私達は、専門家がこのような考え方で頭痛研究を進めていることを認識した上で、自分の頭でよく考えて対処しなくてはならないということです。専門家はアテにならないということです。