(※以前よりちょいちょい考えていたFGO×シンフォギアXDのクロスオーバーです。ノリと勢いで書いたので所々設定や世界観がガバってるかもしれませんがそこは諦めて下さい。)
完全聖遺物・ギャランホルンの導きによりFGO世界の特異点に飛ばされてしまったマリア・カデンツヴナ・イヴ。紆余曲折の末に特異点の核となっていた聖杯を回収し元の世界に戻ることができたが、どんなに細い糸であろうと結んだ縁は消える事は無い。そして数ヶ月か、或いは数年の後…向こうの世界の危機に呼応したギャランホルンによって再びマリアは戦場に馳せ参じるのであった。
「どうやら、またこちらの世界に迷い込んだようね」
「お久しぶりですマリアさん。お変わりないようで」
「また会えて光栄です、マリア。貴女も喚ばれたのですね」
「マリアさん…!!」
「ええまぁ。でも、呼ばれたからには……ピンチなんでしょう?この状況はッ……!!」
群れる触手をいなしつつ、白銀の鎧を纏った女性はマスターである彼女に問いかける。彼女は英霊ではない、ただの一度縁を結んだというだけの一般人だ。そう、魔術的にもサーヴァントに比べれば貧弱な、ただの凡庸な人間に過ぎない。
「話が早くて結構。済みませんが説明は追々……と、そんな余裕も無い状況でしてね」
「再会を喜んでいる暇はなさそうね。マスター、指示をちょうだい。」
「何も、聞かないんですね」
ベディビエールの冷静さとは逆に、このマスターはどこか不安げな様子だ。逼迫した戦況のただ中でさえ、訳も分からずに呼び出された私の心配をしてくれている。ほんと、どこかの誰かにそっくりのどうしようもないお人好しだ。
「ええ、いくら時が進んでいようとあなたたちの使命は変わらない。そうではなくて?」
彼女は確かに何の能力も持たない一介の人間に過ぎない。だが、それは飽くまで魔術世界の話である。聖遺物の断片、英霊の召喚に本来不可欠な素材であり聖杯戦争での勝敗を左右する尤も重要なファクターの一つを所持する彼女らは、異端技術と称される科学とも魔術とも異なる系統の神秘により造られたシンフォギアを纏うことで、ただの人間でありながらサーヴァントにも匹敵する戦闘能力を得ている。
「その通りです。相変わらず頼もしいですね、貴女は」
「ええ、ありがとう。……さて、単刀直入に聞くわ、私は何をすれば良い?」
「我らの使命はただ一つ。例えこの霊基が砕けようとも、この拠点の魔神柱を制圧し続けること……!!」
「持久戦というわけね。あまり得意では無いけど……了解した!!」
「既に多くのサーヴァントが目標と応戦中。ですが敵の物量故に善戦ならず、拮抗が精一杯といったところでしょう」
「面白いわね。バビロニアの宝物庫に放り込まれた時以来かしら」
そう、彼女自身も薄々勘づいている。この世界には異端技術は存在しない。有効なフォニックゲインの供給も手段もこの領域では望めない。
「だけど……だとしてもッ!!」
魔神柱の攻撃は次第に熾烈を極めていく。触手による物理攻撃に留まらず、眼球からの熱線もひっきりなしに飛んでくる。この状況で背後を守りながら戦うのは、あまりにも不利というものだ。
「クッ……!!流石にキリがない。マスター、貴女は先を急がれよ!!」
「でも……!!」
「分かるでしょ?この場所に留まっても何も変わらない、変えられない。進むより他に道は無い!!ならば迷わず進め、振り返らずに……ッ!!」
「先輩、行きましょう」
「うん。皆、どうかご武運を」
…………
…………
…………
「さて、ようやく背中の心配が要らなくなったね。合わせるわよサー・ベディビエール!!」
「ええ、承知しました。我が力の全てを、貴方に……!!」
そう合図して、両者ともに一度息を整える。いつの日にか交わした約束、未完成に終わったあの思い出の技をもう一度。そう強く願い、眠っていた記憶を意識の底から掬い上げる。
「例え、偽りの名(宝具)だとしても……」
「例え、借り物のチカラだとしても……」
「この霊基だけは」
「この瞬間だけは」
「「我らが契約者の為に……!!」」
「我が魂喰らいて走れ」
「誇りと契れ」
「「銀の流星よ!!」」
マリアの抜き放った短剣を手に、二人が疾駆する。左のブースターに格納したそれは巨大な姿と成って、右手で掲げたそれは際限なく魔力を凝縮する輝きとなって、暗い宙を染め上げる綺羅星が如く輝く。
「何するものぞ、聴覚星ッ!!」
並び立つ円卓の猛者達にも、太陽のファラオの威光にも負けず劣らず、銀の輝きは天翔る龍が如く吼える立てる。
「ねぇベディビエール卿、一つ提案があるのだけど」
「何でしょうマリア?」
「私のギアではどう転んでも持久戦には向いてない。特異点から強奪した魔力で奇跡的にこの場に立っていられるだけで、貴方の宝具と同じく乱発は叶わない」
「ええ、悔しいですが事実です。ですが……まかり間違ってもさせませんよ?特攻などと早まった真似は」
「あら、お見通しってヤツ?」
「なんとなく、ですがね。しかし貴女の言う通り、皮肉にもこの状況は獅子の円卓や太陽王の加勢あっての拮抗です。我々だけでは打開策が無い」
「そうね。だけどまだ、私たちは此処に立っている」
自嘲気味だったマリアの口調が変わる時の威勢に、ベディビエールは思わず息を吞む。
「例え万策尽きたとしても、一万と一つ目の策はきっと手繰ってみせるッ!!」
「これは……!?」
マリアの纏うギアが白い輝きを増す、まるで地に突いた長剣を媒介して魔力を吸い上げているかのように。
「りーんごーはーうーかんだー。おーそーらーにー…」
かつてここではない世界で、星に生きる全ての命を繋いで見せた父祖の地の歌を呼び水に、巨大な特異点に浮かぶそれぞれの座と中核たる玉座を繋いでいるパスを逆流して。
「例えフォニックゲイン由来のエネルギーで無いとしても、同じく人の扱うチカラであれば……ッ!!」
いつかの空に、錬金術師たちの託した想いを受け継いだ時のように。不可能と嗤う魔神どもを殴り飛ばし、幾万分の一の奇蹟ですら必然と変えて。
「この身に束ね、撃ち放つッ!!セット、ハーモニクス!!」
誰かが語った、ガングニールとアガートラームの絶唱特性は極めて近似していると。融合症例でなくなった身であってなお、あの子は70億の願いと祈りを束ねて見せた。ならば私とアガートラームにやってやれない道理はないッ!!!!!!
「Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl…」
過去に幾度も経験した極大の負荷がギアを貫通して身体に直接襲いかかる。無茶も無茶、今まで行使したこともない単独での絶唱。あまりの苦痛に身体が引き裂かれそうだ、こんな無理くりをあの子や翼は耐えていたのか……。焼き切れそうな意識の端で、不意に誰かが空いた手を取って握った気がした。
「ベディビエール卿……!?」
「お気を確かに。マリア、貴女は一人ではないのですから」
例え絶唱の負荷を肩代わりすることができずとも、苦しむ誰かに手を差しのばすことはできる。
「そうね。ならなおさら……この反動に、圧し潰されてなるものかッ!!」
「いつか言っていたではありませんか、貴女らしく在ることが強さだと」
奇蹟を戦術に組み込むことが出来ないのであれば、その奇蹟を必然と変えてしまえば容易いこと。それこそ即ち奇蹟の殺戮、神でない人間が奇蹟の行使にも等しいチカラを持つことで為し得る神殺し。ましてこの場の全ては神代の神秘、魔術王を名乗るモノの神殿である。
「借りるわよ立花響……ジェネレータァァァァァァ──────!!!!!!エクスッ!!!!!!ドラアアァァァァァァ──────イブ!!!!!!」
様々な神秘や奇蹟、魔術と科学が胡乱に混在するこの特異点においては哲学兵装であってもその概念はあやふやになっている。故に因果すら成立させる事ができればどうとでもなる。要するに上手くこじつけた者勝ちである。故にマリアは今、自身の見てきた全ての可能性を銀の左腕へと手繰り寄せ、ただの一人で螺旋の虹霓をぶち上げて見せた。
「限定解除、エクスドライブモード……このチカラであればッ!!」
最果ての聖槍にも、星の聖剣にも負けぬ鮮烈な神殺しの銀腕となって、群がる魔神柱どもをへし折らんと燃え上がる。何度斃そうと、何度貫こうと尽きぬ底なしの毒沼は承知の上で、今はただ自分をこの場に呼び寄せた者の為に剣を摂る。
「セイバー、ベディビエール。改めて、貴女と共に駆け抜けよう」
「見せて貰うわよ、戦場に冴える抜き身のアナタをッ!!」
「剣を摂れ……」
「「銀の両翼よッ!!」」
人の持つ可能性を、二度と消えない魂の種火へと変えて。今再び不死鳥は宙を駆ける。