病気の告知をされてから


意外と平常心のまま過ごしてきた。


しかし、


主治医から投薬開始のススメがあり


役所に必要書類を取りに行ったり


薬についてネットで調べごとをする中で


自分の人生について迷いが出てきた。


7月の血液検査でも引き続きCD4は500以下だった。


2回連続で500をきっているので


この数値が今の自分の免疫状態と思って


間違いないみたいである。



病気が発覚してから


社会保険でHIV感染がバレるかもしれない恐怖から


正社員で働くという気持ちにどうしてもなれず


いまだアルバイト生活をしている。


同年代の仲間達がどんどん出世していき


結婚して子供を持ち


マイホームを購入している。



自分の夢を重ねることのできるアルバイトでもなく


何の人生の夢も持てない。


正直なところ、


自分の人生になんだか疲れてしまった気持ち。



HIVの通院も7月頭に行ったっきりで


その後は1度も行っていない。


このまま通院を辞めて、


数年のうちに訪れる死ぬ時までを


自分の寿命として生きようかなとも思える。


まわりのHIV感染を知っている人は、


きちんと病院に行って薬を飲めの一点張りだ。


僕の気持ちや考えを伝えたところで


理解はしてもらえないだろうし、


悲しませるだけでしかないと思うから、


いつも黙って聞いている。


30代で夢も希望もなくただ生きろというのは


僕にとっては少々酷過ぎてならない。


身の回りに大切なものは山ほどあるし


大切な人は沢山いる。


僕が死んでしまったら


悲しみに暮れてしまう人が沢山いることも


もちろん解かっている。


でも、


でもでも、


5年10年生きていく希望が見出せない。


大切な人を悲しませないために生きるという


考え方もある。


僕は否定しないし


その考え方はそれで100%理解できる。


でも、


なんでだろう。


僕はそういう決意が持てないでいる。


これからの人生への悲観が先立ってしまって。


自殺はしないけれど、


発症して死ぬ時が自分の寿命という考えが


今の僕の本音かなぁ。



自分が感染してつくづく思う。


HIVは放置すれば数年でエイズを発症して


『今でも死ぬ病気』


でも、


そんなことより


体のことより心が蝕まれる病気だと。



昔、好きになった人がHIVポジティブだった。


彼の病気を知ったとたん、


僕は彼の存在に恐怖を感じた。


彼の心の闇を理解しようとしていたけど


今だから言える。


当時は理解しようとしたとはいっても


理解できるわけがなかった。


それは、


HIVがすぐそこにあっても


どれだけ自分の心を取り繕っても


別の世界の出来事だったから。


しかし、自分の身に直接降りかかってきて


当事者になって


はじめて見えた部分が沢山あった。



まわりが病院に行けと口をそろえるのは


僕を心配してのこと。


それは十分ありがたいと思う。


でも、


当事者の気持ちはまだそこに至っていない。


みんな、ごめんね。