<北朝鮮>国家最大の祝日に「特別配給」無し
2013年4月16日
◇4月15日の「太陽節」での未配は異例 子どものお菓子のみ
(本誌特約=「デイリーNK」キム・グァンジン記者)
北朝鮮で今月15日の国家最大の祝日である「太陽節(故金日成主席の誕生日)」に、住民への「特別配給」が実施されなかったことが分かった。毎年、同記念日を前後する時期には米をはじめ、食用油、酒などの臨時配給があったが、今年は子どもたちへの菓子類の配給だけだったという。異例の事態を北朝鮮内部の消息筋が伝えた。
北朝鮮東北部・咸鏡北道会寧市に住む消息筋は15日、デイリーNKとの通話で「北朝鮮当局は毎年、酒と油、菓子などを祝日の特別配給として供給してきたが、今年は子ども達の飴と菓子以外の配給はなかった。人民班長(住民組織の長)は『国の事情が悪く祝日配給は中止となった』と話していた。太陽節に配給がないのは今回が初めて」と伝えた。
(参考写真)2011年2月16日に金正日総書記(当時)の誕生日を記念して「特別配給」された子ども用のお菓子。当時はこの他にいくらかの食料や生活品が配られていた。北朝鮮内部の取材協力者、崔敬玉(チェ・ギョンオク)氏撮影
この消息筋はまた、「住民は『祝日物資も配給できないほどに国が大変とは』との反応を見せている。『酒や餅を作る米があってこそ祝日の雰囲気が出るのに、今回はそれさえも出来ない』と残念がっている。14日午後からは金日成の誕生日を記念した祝賀報告大会のため、商人が商売を行なえないよう市場ゲートが閉鎖された。祝日配給もないうえに商売もできず、今年の太陽節は祝日らしくない」と現地の様子を説明した。
別の消息筋はさらに、「当局は最近に入り両江道地域に2号米(軍糧米)を解禁し、教員や医師などの公務員と労働者にトウモロコシを配給した。こうした通常の配給を行なったため、『特別配給』は省略されたようだ」と話した。
同消息筋は続けて、「住民の間では『特別配給』の中止に対し残念がる人もいるが、ほとんどはそれほど期待していなかったため、冷やかな雰囲気だ。幹部たちは互いに『当局が特別配給もできないほど状況が深刻』と話している」と伝えた。
北朝鮮において「太陽節」の特別配給は、金日成主席、金正日総書記、そして金正恩第1書記が「住民への配慮」を施していることを宣伝し、忠誠心を誘導するという目的の下、これまで、ほぼ毎回実施されてきたという点からすると、今回の事態は極めて異例といえる。一部では今年初めから3か月余りにわたって実施された戦闘動員準備態勢や、対内外に向け戦争ムードを高めてきたことで、北朝鮮の内部財政と物資供給状況が厳しくなったのではとの指摘も出ている。
北朝鮮では1962年、4月15日が臨時公休日に指定しれ、1968年に法定公休日となった。その後、1974年に「民族最大の祝日」と規定。特別配給を通して雰囲気を盛り上げてきた。
韓国に住む、高位幹部出身の脱北者はデイリーNKの取材に対し「『苦難の行軍』時代の1990年代にも、酒一本ではあったものの特別配給自体はあった。金正恩の世襲政権1年というわずかな間に、太陽節配給が中断するほど(北朝鮮)内部の状況が悪化したと思われる。北朝鮮は金日成民族だとして特別配給を通じ、住民に金日成を神的な存在として偶像化してきた。太陽節記念配給の中断は(今回予定していた)ミサイル発射や核実験を実施しなかったことよりも否定的な効果をもたらしかねない」と語った。
(参考写真)「飴玉」とある。主原料は砂糖と蜂蜜水飴とある。蜂蜜は入っていないだろうとのこと。北朝鮮内部の取材協力者、崔敬玉(チェ・ギョンオク)氏撮影
(参考写真)ガムである。上ふたつは「ハッカ香」、下は「ブドウ香」。以前は板ガムだったという。
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2013年4月16日
◇4月15日の「太陽節」での未配は異例 子どものお菓子のみ
(本誌特約=「デイリーNK」キム・グァンジン記者)
北朝鮮で今月15日の国家最大の祝日である「太陽節(故金日成主席の誕生日)」に、住民への「特別配給」が実施されなかったことが分かった。毎年、同記念日を前後する時期には米をはじめ、食用油、酒などの臨時配給があったが、今年は子どもたちへの菓子類の配給だけだったという。異例の事態を北朝鮮内部の消息筋が伝えた。
北朝鮮東北部・咸鏡北道会寧市に住む消息筋は15日、デイリーNKとの通話で「北朝鮮当局は毎年、酒と油、菓子などを祝日の特別配給として供給してきたが、今年は子ども達の飴と菓子以外の配給はなかった。人民班長(住民組織の長)は『国の事情が悪く祝日配給は中止となった』と話していた。太陽節に配給がないのは今回が初めて」と伝えた。
(参考写真)2011年2月16日に金正日総書記(当時)の誕生日を記念して「特別配給」された子ども用のお菓子。当時はこの他にいくらかの食料や生活品が配られていた。北朝鮮内部の取材協力者、崔敬玉(チェ・ギョンオク)氏撮影
この消息筋はまた、「住民は『祝日物資も配給できないほどに国が大変とは』との反応を見せている。『酒や餅を作る米があってこそ祝日の雰囲気が出るのに、今回はそれさえも出来ない』と残念がっている。14日午後からは金日成の誕生日を記念した祝賀報告大会のため、商人が商売を行なえないよう市場ゲートが閉鎖された。祝日配給もないうえに商売もできず、今年の太陽節は祝日らしくない」と現地の様子を説明した。
別の消息筋はさらに、「当局は最近に入り両江道地域に2号米(軍糧米)を解禁し、教員や医師などの公務員と労働者にトウモロコシを配給した。こうした通常の配給を行なったため、『特別配給』は省略されたようだ」と話した。
同消息筋は続けて、「住民の間では『特別配給』の中止に対し残念がる人もいるが、ほとんどはそれほど期待していなかったため、冷やかな雰囲気だ。幹部たちは互いに『当局が特別配給もできないほど状況が深刻』と話している」と伝えた。
北朝鮮において「太陽節」の特別配給は、金日成主席、金正日総書記、そして金正恩第1書記が「住民への配慮」を施していることを宣伝し、忠誠心を誘導するという目的の下、これまで、ほぼ毎回実施されてきたという点からすると、今回の事態は極めて異例といえる。一部では今年初めから3か月余りにわたって実施された戦闘動員準備態勢や、対内外に向け戦争ムードを高めてきたことで、北朝鮮の内部財政と物資供給状況が厳しくなったのではとの指摘も出ている。
北朝鮮では1962年、4月15日が臨時公休日に指定しれ、1968年に法定公休日となった。その後、1974年に「民族最大の祝日」と規定。特別配給を通して雰囲気を盛り上げてきた。
韓国に住む、高位幹部出身の脱北者はデイリーNKの取材に対し「『苦難の行軍』時代の1990年代にも、酒一本ではあったものの特別配給自体はあった。金正恩の世襲政権1年というわずかな間に、太陽節配給が中断するほど(北朝鮮)内部の状況が悪化したと思われる。北朝鮮は金日成民族だとして特別配給を通じ、住民に金日成を神的な存在として偶像化してきた。太陽節記念配給の中断は(今回予定していた)ミサイル発射や核実験を実施しなかったことよりも否定的な効果をもたらしかねない」と語った。
(参考写真)「飴玉」とある。主原料は砂糖と蜂蜜水飴とある。蜂蜜は入っていないだろうとのこと。北朝鮮内部の取材協力者、崔敬玉(チェ・ギョンオク)氏撮影
(参考写真)ガムである。上ふたつは「ハッカ香」、下は「ブドウ香」。以前は板ガムだったという。
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