よこけんの右往左往

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「よこけん」こと、 ミュージカル俳優、横沢健司のひびを綴った日記です。

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長らく「いつか読む本」の本棚に飾ってあった『俳優のノート』(著・山崎努)を読了した。


『リア王』の上演にあたって、山崎努さんが取り組んだ全てが、稽古開始二ヶ月前からの日記として書き留められている。朝ごはんに何を食べたとか、家族にこんな事を言われたとか、日常の風景も記録されているが、ほとんどは俳優の脳内で行われる思考がそのまま記されている。

ストレートの俳優さんとは、話す機会さえそうそうないので、その脳内を直接覗き見る経験は、とても貴重なものだった。


自分の子供が8つと6つになり、最近どうにか親としての責任感が芽生えてきた。それとシンクロしてか、自分が参加した舞台で、少しでも貢献して良いものにしたいという責任感もまた、強く感じるようになってきた。

アンサンブルという役割では出来ることはそう多くない。が、俳優としてはどうか。

そういう心構えの部分に、ガツンとくる内容であった。


この本には、『リア王』の演出家である、鵜山仁さんがメインキャラクターとして足繁く登場する。二人三脚で役を深めて行くのだ。俳優と演出家の信頼感が心地良い。

その鵜山さんとは、『二都物語』で一度ご一緒した事がある。その時そのままの、物静かな印象で描かれており、想像しやすく、それもまた面白かった。

その頃の自分は、ようやく芝居に悩み始めた俳優の卵のような状態だったが、きちんと俳優として扱ってくれ、良くしてくれたのを覚えている。

その時の要望に答えられたのかはよく分からないが、今こそもう一度ご縁を頂いて、鵜山さんの脳内を覗いて見たいものだ。


『エリザベート』という作品は、演出の小池修一郎先生の世界観を強く押し出した、普通のミュージカルとは一線を画する作品ではあるが、長い歴史があるだけに、心構えを持って襟を正して臨むのには最適の作品だと言える。


ミュージカル俳優は、歌と踊りと芝居を三分の一ずつやればいいのではない。ダンサーとシンガーと俳優の、三人分を一人でやらなければならないのだ。