こんばんは。雅です。
久方ぶりに小説を書いてみました。
それでは見てください。それはもう見下すように。
「ららら三者面談」
昨日、僕は居間で寝転がりながらテレビを見ている母に言った。
「母さん、明日学校で三者面談があるんだけど」
「え~、めんどくさい」
母はテレビのほうを向いたまま喋る。
「面倒くさいじゃないよ。今回、大学の進路についての話が」
「ちょっとあんた、代わりに行け」
「おっけ~」
ちゃぶ台でみかんを食べていた姉が軽い返事をした。
三者面談なのに保護者不在という状況に陥ってしまったのだ。
「姉ちゃん、絶対変なこと言っちゃ駄目だよ?」
「安心しろ、弟よ。お姉ちゃんに任せなさい」
今、僕と姉は教室前に備え付けてある椅子に腰掛けている。前の人が終わるまでの間、ここで待機するのだ。
「へぇ、真面目そうな人じゃん」
「姉ちゃん、覗いちゃダメっ」
前方のドアのガラスから中を覗く姉。
「ちょ、お前の担任ヅラじゃね?」
「言っちゃダメだよ姉ちゃんっ、聞こえちゃうよ」
「お、担任こっち見てる。やっほー」
まるで助けでも呼ぶかのようにぶんぶんと腕を振る姉。
「やめて、恥ずかしいよっ!」
意外と大きな声を出してしまった。
「ほら、おとなしくしないと内申点下がっちゃうよ」
「大きなお世話だよっ!」
「ところであれ、あんたの友達?」
「え、うん。そうだけど」
今面談を行っているのは、僕の友達の谷口君だ。
成績優秀でもないし、スポーツ万能でもない人だ。
「今こっち見てたけど、彼だっさいメガネかけてるねぇ」
「だから聞こえるってば!」
「あれじゃ彼女なんかできっこないよね」
「聞こえるって! あんたのせいで僕の評価ガタ落ちだよ!?」
その時、前方のドアがガラリと開いた。
終わった……のではない。
「ちょっと君たち、私語は慎んでくれないかな」
担任の山本先生が僕たちに注意するために来たのだ。
まあこれだけ騒いでいたら当然のこと――
「って姉ちゃん、何メンチきってんの!?」
「……お前とは後で相手をしてやろう。早く職場に戻るんだ」
タメ口はマズイよ姉ちゃん!
しかし呆れたのか、山本先生は何も言わず教室内へと戻っていった。
「……ふん、雑魚め」
勝ち誇った表情を浮かべる姉。
ああ、今日はもう帰りたいなぁ。
特にこの姉ちゃんだけでも帰らせたい。
それよりも、後で山本先生と谷口君に謝らなくちゃ。
「…………」
廊下はようやく静寂に満ちた。姉のネタも尽きたのだろう。
「……姉ちゃん、やっとおとなしく」
横目で姉の様子を窺う。すると姉ちゃんの少し乾燥した唇の間に、先から煙の出る白い棒が挟まっているのが見えた。
「タバコ吸っちゃダメェェェェェェェェェェ!!」
今度は完全に大声だった。
「チッ。うるせーな。先公かよてめぇ」
「ダメェ! あんたの高校時代の過ごし方がバレちゃう!」
再び前方のドアが開いた。今度は本当に終わったようだ。
「お疲れ様でした……ほんと、すいませんでした」
「あ、いえ、こちらこそ……」
先生と谷口君のおばちゃんのテンション低っ! 絶対姉のせいだ!
「……よう、お前だったのか」
ああああああごめんね谷口君! そんな悲しそうな視線を送らないで!
「おい、桜崎」
指の間でタバコを挟みながら話す。
「……え、な、なんでしょう。ちなみに谷口です」
僕の頭の上にポンと手を置く姉。
「こいつと、――いつまでも友達でいてくれ」
無駄にダッシュなんか使わなくていいよ! 何かっこよく決めようとしてんの!?
「じゃあね谷口君! また明日学校でね!」
「……あ、ああ」
うわー。出来るだけフォローしたけど、何か明日から無視されそうな反応だ。
「……では、お待たせしました」
ドアから僕たちを呼ぶ山本先生は、目を合わせようとしてくれなかった。何か俯いてた。
「さっさと終わらせてね。見たいテレビあるから」
……母よ、恨むぜ。
ちなみに前編です。ごめんなさい。