先日、事細かにVICTRIAN彫刻の違いについて述べましたが、今回はその画像を掲載しようと思います。


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・両方タイプⅠです。右が2001年製、左が2005年製。

2001年の花弁の浮き出すような彫刻は、2005年には浅めになっております。


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・(左)タイプⅠ (右)タイプⅡ

タイプⅠはタイプⅡより、花弁が若干大きめで、密度も高いです。

タイプⅡは点線の密度がⅠより高く、流れるような彫刻が綺麗です。


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・(左)タイプⅠ  (右)タイプⅡ

画面中央付近、花弁の間の点線の向きの違い、わかりますでしょうか?

タイプⅠ→(()) タイプⅡ→((((


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・(左)タイプⅡ2004年製  (右)タイプⅡ2000年製

タイプⅡは、もともとデコボコしてない彫りなので、それほど変化はありません



以上、VICTRIANの彫刻についての考察その②でした。

今回は、自分がこだわっているVICTRIAN彫刻について、非常にマニアックな考察を書いてみます。

こんなことに気づく人、こだわる人、自分以外にいないかもしれません。。。


VICTRIANは手彫りの彫刻です。

当然ですが、職人さんも複数存在し、それぞれ彫刻に癖があります。

所有しているのは2000年以降、主に3タイプの彫りのみとなっておりますが、パーフェクタ・ペンシルに絞ってそれぞれの特徴(細かくてマニアックですが)を挙げてみようと思います。


(Ⅰ) 2000~2005年 主流タイプ①

こちらのタイプは、花弁が大きく○がはっきり彫られていて隙間の点線が少なめの彫りです。

個人的な感想としては、この彫りが一番好みです。

アンティーク感が一番強く、模様の均一感は抜群です。

2000年の頃までは花弁の○の部分が盛り上がっていて、いかにも彫刻といった印象を受けます。

(この2000年近辺の特徴を持つヴィクトリアンは水平に見るとデコボコしていて、プレーン軸に模様を彫っただけとはとても思えません)

その後、盛り上がっている部分は2005年にかけて徐々に平らになっていく傾向がありますが、模様自体は同じ職人のため特徴は同じです。

2004年頃まではペンシルで多く見られましたが、この彫刻の職人さんは現在主にボールペン担当となっているようです。

初期に見られたデコボコ感は影を潜めましたが、新ロゴタイプクリップの製品(PERFECTA ボールペン)でもこの彫刻のものを確認したことがあります。(数は少ないようですが・・・)

他の彫りとの見分け方として、花弁と花弁の間にある点線の彫りが (()) という向きになっている点です。



(Ⅱ) 2000~2005年 主流タイプ②

こちらも同時期のもので、①と遜色ないほど美しい彫刻を持っております。

特徴としては、①より花弁はほんの少し小さめで、模様はほぼ均一ですが一部大きさと並びに不ぞろいな部分があります。(といっても、これはこれでこのタイプの味ですし、非常に美しいです)

①と違う部分は花弁が小さめなことも理由ですが、隙間の点線が多めで、その流れるような彫りがとても綺麗な点です。

このタイプは2000年前後から、デコボコ感は少なくフラットな彫りです。

見分け方として、花弁と花弁の間にある点線の彫りが (((( という向きになっております。

ちらっと写真で見たことがありますが、この彫刻を彫っていられる職人さんは、メガネをかけた気の優しそうなベテラン職人さんです。

(輸入筆記具カタログのYARDページの最初に載っている、ペンを磨いているメガネの職人の方とは違う人で、もうちょっと若めな感じ。金髪で髪あり。ちなみに社長は銀?髪。)


2000年以降のヴィクトリアンは数十本見てきましたが、旧ロゴタイプのペンシルに限って言えば上記2タイプのみでした。(もちろん他のタイプが無いとは言い切れませんが)

もし旧ロゴのパーフェクタ・ヴィクトリアン・ペンシルを見つけられたら、おそらくどちらかのタイプだと思います。


(Ⅰ)は花弁を浮き立たせてはっきり彫刻するタイプ。アンティークゴシック調。

(Ⅱ)は点線を多用し、花弁の流れを重視して表現した優美なタイプ。ヴィクトリアン・ロココ調。


簡単に言えば、こんなとこでしょうか。

どちらも技術の高さが伺えます。

2006年夏頃、ちょうど新ロゴクリップに変わった時期にパーフェクタ・ヴィクトリアンの彫刻も大きく変わりました。

職人が変わったのは間違いないと思いますが、上記の2タイプの職人さんは引退してしまったのでしょうか?

最近の製品では、上記のタイプがほとんど見られなくなってしまいました。

(Ⅰ)タイプの彫りは、ボールペンでも稀に見かけられるので担当が変わったのかもしれません。

ただ本数がかなり少ないので、引退されたのかもしれませんし、なんとも言えません。



(Ⅲ) 2006年夏頃~現在

上記2タイプとは全く別モノです。

彫りは完全にフラット、プレーン軸に模様をつけた感じであっさりした印象です。

模様は不均一で、点線もいろいろな方向へ彫られています。

2007年度版、輸入筆記具カタログに掲載されているパーフェクタ・ヴィクトリアンはこのタイプですので、詳しく知りたい方はこちらを見ていただけるとわかると思います。

(ちなみにそれ以前の年度の輸入筆記具カタログ掲載のパーフェクタ・ヴィクトリアンは上記(Ⅱ)の彫刻タイプでした)

今年3月、日本橋○善オープン記念として、YARD-O-LED社長のティム・タフネル氏がヴィクトリアン彫刻の実演をやっておられたそうですが、まさにこのタイプの彫りだったそうです。

(Ⅲ)タイプは社長自ら彫っておられるのかもしれません。

日本橋○善オープン記念として、普通のホールマークのほかに「M」の刻印がなされた限定パーフェクタ・ヴィクトリアンが、店頭にて発売されております。

いずれもこの(Ⅲ)タイプの彫刻です。

近年、万年筆、ボールペン、ペンシル、と同時に注文したところ、3つともこの(Ⅲ)タイプ彫刻のものが届きましたので、種類に問わず現行品の主流となっているようです。



以上、非常にマニアックなこだわりで、読んでおられる方が引いてしまうのでは?といった心配もありましたが、一応情報として載せておこうと思います。

余談ですが、こういったマニアックなこだわりをお店に伝えて探してもらおうとしたところ、「意味がわかりません」と言われ、当然のごとく断られました。(^_^;)a

お店の方を困らすようなことは止めましょう。


後日、見分けるための画像を、再度更新する予定です。

今回はYARD-O-LED製品の買い方について書きます。

これから購入を考えている方の参考となれば幸いです。


YARD-O-LED製品はペンシルですと、ネット価格で3~4万円、店頭購入は原則定価で5~6万円します。

ハンドメイド製品のため、ニーズに合わせての購入をお勧めします。


ネット購入ですと安価で手に入りますが、個体選びが事実上不可能なため、比較的個体差の少ないBARLEY軸・PLAIN軸やESPRIT等の購入が無難です。

近年職人が変わってしまったのか、VICTRIAN軸の彫刻は数年前と比べて著しく彫りが変わってしまい、ネット購入はお勧めしません。

自分以外にこだわっている人がいるのか不明ですが、旧ロゴタイプクリップの製品をお探しの方も、店頭購入がベストでしょう。


ネット販売は、旧クリップやVICTRIANの彫りについて、希望を受けてくれる所はほとんどありません。

どうしても気に入る個体が欲しいという方は、店頭販売しているお店に希望を伝えて探してもらうのがよろしいかと思います。


店頭販売は定価販売の所が多く割高な気もしますが、実際見て買えるのと、極稀にですがミレニアムホールマーク入りのもの等、貴重な個体に出会えたりします。

それと店によっては今年初頭の値上がりを反映させておらず、旧価格のまま売っている所もあります。


自分の気に入る一本をご希望の方、この際値段も手間も惜しまず、見つかるまで探してみてはいかがでしょうか?

きっと苦労した分だけ、愛着が湧くと思いますよ!



次に付き合い方として、自分のように数を多く所有するのは、あまりお勧めしません。

YARD-O-LED製品はそもそもが個体ごとに違いがあり、価値基準が曖昧でコレクションするには難しいと思われるからです。

モンブランのように、均一した製品で、モデルごとに価値が決まっていて需要もしっかりしているのであれば、将来の価値高騰を狙って投資ということも考えられるのですが、YARD-O-LEDに関してそれはあまり期待できません。


自分は一番いい時代のYARD-O-LEDの個体を、できるだけいい状態で後世に残したいと勝手に考えているため本数を持っておりますが、、、

本来は一番気に入る一本を選び出して、それを生涯かけて使い倒す、という所にこのペンの魅力があるのだと思います。


実際、数世代に渡るほどの強い耐久力を持ちます。

10年以上使い込まれたYARD-O-LEDは、完全に”その人のもの”となります。

それほど使い込んだものは、他の人の使用を拒む雰囲気すら持っております。


イギリスのもの作りの精神は、数世代に渡って使い続けるという点を重要視しておりますし、長期間愛用していくことが、使う人にとってもペンにとっても一番幸せだと思っています。