去年の11月9日に初歌舞伎、今年の7月11日に市川猿之助襲名披露「松竹大歌舞伎」、

そしてきょう、二度目のシネマ歌舞伎、「ヤマトタケル」を、満を持して見てきました:*:・(￣∀￣)・:*:

4時間、正確には9：50～13：55の長丁場ですが、

短くしてくれ、なんて思いませんよ。

（2時間を超える映画の時はいつも、あそこをカットして

もっと短くしてくれ！と思う）

マラソンを始めて以来、全身でどこか痛くない日はないのですが、

でも最近は筋肉痛だけなので心配ご無用でござる。

映画館のシートに2時間以上座っていると大殿筋の筋肉痛がデフォルトの

私にはつらいものがあるのだ。月に１００～１５０ｋｍくらいだと痛くないんですけどね。

そんな私ですが、歌舞伎シネマに大感謝ですよー。

やっぱり歌舞伎は地方に住んでいる私には敷居が高すぎる。気軽にひょいひょい見られるものじゃないので、シネマ歌舞伎はありがたい。また、なんでもクローズアップがだいすきなので、

市川猿之助の表情をグッとアップにした映像にもうもうもう！という感じでした。

すべてが素晴らしかったなあ。

歌舞伎の言葉がいつもは全部は分からないんだけど、「スーパー歌舞伎」だからなのか、脚本のおかげなのか、

セリフのひとつひとつがよく分かったし、深くしみた。

私が子どもの頃は「古事記」は日本の昔ばなしのカテゴリーに入るもので、日本の民話・世界の民話などのあたりに日本武尊のお話も、大国主命と因幡の素兎のお話も、天照大神と乱暴な弟の須佐之男命のことも、絵本の形であった気がします。だっていまだに絵が浮かぶよ。

日本武尊が父の帝の命を受けて旅立った先で、炎に囲まれた場面も絵本で見たなあ。

「ヤマトタケル」の中で印象深い場面のひとつです。

火の勢いを火の色の布の動きで表現しているだけでも美しく、あー、歌舞伎、という感じなのに、さらに、

火の化身たちが見事なバク転の連続技をするんですよ？

器械体操好きなのでこれは思わぬ儲けものであります。カッコいい！

「ヤマトタケル　バクテン」で検索したら、

「「バク転」を中心としたアクロバット的技術で応援するのが『新・三国志』にも参加した中国吉林省と山西省の京劇院の役者たち。その他、立ち回りは歌舞伎特有のゆったりしたものだが」

という文章をみつけました。そうだったのか～。京劇かあ。

そういえば衣裳も豪華絢爛で、京劇っぽかったかなあ。京劇のイメージはお正月のテレビ番組かなにかです。京劇も見たことはないので…。

こないだから父と息子がテーマの映画やお芝居を見ていたのですが、ひとつ気になっていたことがきょう解決しました。

「ヤマトタケル」は父帝の命を受けて女装して熊襲を征伐（向こうからしたら侵略であるが）したものの、それでかえって父に疎まれ、もっとひどい戦に赴くことを命じられ、父に愛されない息子の苦悩を描いている。そればっかじゃないんだが、そこはテーマの一つだろう。

一人じゃなくて、双子だったというのが梅原猛先生の解釈で、山岸凉子のコミックもあったと思う。双子の兄と弟、父子の葛藤、山岸凉子好みの題材でその当時雑誌で読みたかったのだが、当時は人気の雑誌はすぐに売り切れるし、Amazonであとで手に入れる手なんかなかったので、いまだに読んでいない。

でもきょうシネマ歌舞伎を見ていて、この場面はきっとこういう絵だ！とまで思ったので、近々コミックと梅原猛先生の原作も読みたい。「古事記」はさすがに読んだことはあります(笑)。

「アンコール！！」の中で息子が（といっても5歳の娘がいる、自分の工場をもつ息子だが）、

「父さんはどうして俺を誇りに思ってくれないんだ」と、妻を亡くしたばかりの父に思いをぶつける場面がある。子どもの頃から息子は母親には愛されていると感じていたが、

無口で不愛想な父親からは自分が愛されているという実感を受け取ったことがないのあ。

でも日本人の私には「誇りに思う」はちょっとな。

中学の英語で、この「私は～を誇りに思う」が出てきたときは、日本にはないよなあ、誇りに思うっていい方って、と思ったんだが、

きょう「ヤマトタケル」を見ていて、あ、この言葉だ、と思った。

討伐の旅からやっと大和に還ろうとしていたヤマトタケルに、父帝からの非情な言葉が届く。

また次の討伐に遠い国へ行けと言うのだ。

市川猿之助丈の目はカッと見開くと、閃光が見えるくらい、大きいのだが、その大きな目を閉じてじっと堪えている表情もまた魅力的だった。父の無残な言葉に堪え、

「どうして認めない」

というんですね。どうして自分を認めてくれない、よくやったとなぜ言ってくれない、と。

「誇りに思う」をなじみやすい言い方にしたら、「認める」だと思うんです。

大げさに言うと、相手の存在を認めるということ。よくやった、ということ。

父に対して謀反の心を持っていた兄を諭そうとしてもみ合ううちに殺害してしまい、

そのことで父の怒りをかった弟、ヤマトタケル。

ふたりのもみ合う場面では一人二役ですから、片方は違う人が演じているわけですが、

この場面の猿之助の早変わりはほんとうに歌舞伎らしい楽しさとスリルがあってよかった。

印象に残る場面や衣装をあげたらきりがないのですが、物語の終わりの方で、市川中車の息子、

團子が大きな声で朗々という、「おとうさまー、おみまもりください」（だったと思うけど）、

ここは泣けたなあ。役上のセリフであると同時に、実際の市川中車つまり香川照之さんとのことも、また香川照之さんと実父の市川猿翁との和解のことも重ね合わせてしまって。

「ヤマトタケル」に香川照之さんの歌舞伎での遅いデビューや襲名のことがどうしても重なるのは私だけではないでしょう。そこに虚実皮膜の楽しみもあるというか。

また、原作の梅原猛さん自身も、学生結婚の父と母の間に生まれ、幼くして母を亡くした後は伯父夫婦のもとで育てられたということを知り、

すべてがこの舞台に流れ込んでいるんじゃないかと思ったんです。って原作を読んでいないのに(笑)。

また感想を書きます☆

シネマ歌舞伎「ヤマトタケル」☆感想