意図的なのか

そうではないのか

わからないのだけれど


とても面白いことに

プロ野球のドラフトと同じ日に

研修医のドラフトもある


医学生も他学部の学生と同じように

就職活動をする


医学生は就職したい病院の採用試験を受け

病院側は研修医を選ぶわけだ


ただし医学生も

受験した複数の病院の中で

行きたい順に順位をつけ

コンピューター登録できる


医学生も病院側も

双方がお互いの順位をつけて

提出するのだ


あとはコンピューターが勝手に

ねるとん紅鯨団みたいなことをやってくれて

それぞれの病院の来年のルーキーが決定することになる


ドラフトみたいに


読売ジャイアンツ 1位指名 ○○高校 だれだれ


みたいなやつで


○○病院 1位指名 ○○大学 だれだれ


みたいなやつがコンピューターの中で繰り広げられている


考えてみれば

それで医者人生の初めの一歩が決まるんだから

これは相当なロマンだ


電脳という味気無さの中にあるロマン


ちょっとその共存が

どこか素敵なニオイがする



僕ももちろんそのマッチングを通ってきた世代だ


発表当日はパソコンの前で

ど緊張する


PCの画面には

結果が1行だけ

殺風景ともいうべき背景の中に浮き出ている


情報としては確かにそれだけで十分なのだけれど


いや、でも

だからこそだろうか


自分の希望した病院の名前がそこにあったとき


画面の中ではファンファーレが鳴っていて

僕の数か月後からの就職先の名前が

強くポップアップしていた


思わずガッツポーズして声が出る


国家試験を4か月後に控えた医学部6年生にとって

そこで希望する病院に就職できるのかどうかは

試験勉強に対するモチベーションを上下させる

大きな要因になる



今年もドラフトが今日あって

僕の病院のルーキーが決まった



結果をみると

僕の愛するこの病院への就職を熱望して

就職活動を熱心にやっていた学生たちばかりが

名を連ねていた


夕方


数人の学生から

喜びとお礼のメールが届いていた


お祝いはその日にしなければいけない


その中の

東京に住む学生2人に会いに行き


深夜のコンビニのイートインで

3人でささやかな祝杯をあげた



彼らには忘れられない日になっただろう


もちろん


僕にも。




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さて

今日は外勤

東京の端っこへと愛車で向かう

今日の僕にはイベントがひとつあった


ガラクタどもを売るということだ


おととい

製造から5年以上経っているからダメと

見てももらえなかったやつらを

ネットで見つけたリサイクルショップに売りに行く

という大使命がある


粗大ゴミに出しても

リサイクルショップに出しても

金がかかってしまう

見積もりを電話で聞いたら

1万円程度だった


売れなくてもいい

タダでいいから

とにかく引き取ってほしい


17時に仕事が終わると

すぐに飛び出して僕はそのリサイクルショップに向かった


外勤先の病院から

帰宅方面へ20㎞

僕がいつも使っている高速のICに向かう道を

大きく遠回りしたところにその店はあった


着いてすぐ僕は財布の中身を確認した

諭吉が2枚入っていた


よしこれなら有料でも引き取ってもらえる


椅子、プリンター、古いデジカメ

Wifiルーター・・・


どれもまだ使えるが

現在市場に並ぶ最新のものからすれば

ガラクタだ


あらかじめしていた電話連絡で

コトはスムーズに進んだ


査定の間、店内を見ていてくださいと言われ

店内のリサイクル品を

眺めてその時を待った


店内には

こんなもんも?という品がいっぱいあった

パチンコ台とか

お中元とか引き出物でもらったタオルとか食器とか


このくらいのものに比べれば

僕が持ってきたガラクタは

この店にとってだいぶ戦力になるはずだな

なんて思っていた


2人のお兄さんが

色々調べながら査定していたが
間もなく僕は呼ばれ


お待たせしました


そう言って少しお兄さんは申し訳なさそうな顔をした


やっぱりダメですか?


申し訳なさそうなお兄さんに同情してしまい

少し楽にさせてあげようと

自分から折れてしまいそうになりながら

僕は財布を手に取り金を払う準備をした


はい・・・

申し訳ないですが

製造年も5年以上前ですのでお値段がつけられません

ただ、全てお譲りいただけるのであれば

0円として引き取らせていただくことは可能です


お兄さんは0円ということが申し訳ない

と思っていたのがよくわかったが

僕は喜びでガッツポーズが出そうだった


荷が下りたというかなんというか

すがすがしいとはこのことだと思った


帰り道の渋滞も軽く鼻歌が出ちゃうほどで


僕はご機嫌で

当直の病院へと向かった






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部屋をバージョンアップしようとしている


7月になったし。


IKEAで買ったデスクも含めて

あと少し家具を追加していて


それを組み立てないといけない


1日1個のペースで組み立てようかと計画している


それが三段ボックスなら

大した労力ではないけれど


引き出し付の棚だと

とたんに労力レベルがUPする


ポルトをドライバーで

木材相手にねじこむとなると

かなり力がいる


だからIKEAで家具と一緒に電動式のスクリューを買っといた


問題はそのスクリューだった


スイッチを入れれば確かに

うぃーーーんと音を立てて作動する

ただ肝心のドライバーなど

取り換え式の先端部分が取り付けられない


穴の部分がゆるゆるで

どこをまわしても締まらない


はぁ???


部屋で一人で何度もそんな声をあげた


入っていた丁寧とは決して言えない説明書を見ると

なんだか図と商品が違う部分があった


昨日1時間ほど格闘したがダメだったので

今日IKEAに交換してもらいに行く予定だった


17時ころ

夕回診が終わるころに

IKEAに行くことをぼちぼち考えていると


回診中の部長のPHSが鳴った


「じゃあ来てください」

このキーワードが出た場合

なんか急患が来るってことだ


案の定、部長の口からキーワードが出た


回診している医局メンバーたちを見まわしながら


アッペ(虫垂炎)だって


部長が言った


若手で取り合うオペだけど

今日はそのレースに乗るのは

あまり気が進まない


そもそも遠いIKEAがさらに遠のいてしまう

今日がダメなら来週になってしまう


でも今の僕の立場ではそんなことは言ってられない


ジャージャービンクス先生を見た

彼も僕を見ていた


オレ、外勤当直だから・・・


彼がそう言ったことで

必然的にオペになったら僕が切ることになった

研修医は今日は勉強会でオペできる状態ではなかった


よし、やるか


IKEAはもう脳ミソの外に追いやって

気持ちのスイッチを入れ替えた



なぜだかこの季節は虫垂炎が多い


夕方の電話は

だいたい虫垂炎の紹介だ


救急外来で患者を診察していると

研修医から電話がかかってきた


アッペいるんですか?


ん?勉強会じゃないのか?


そうなんですけどオペなら別です


いいよ、出なよ、勉強会


いや・・・私にやらせてくださいよ


・・・


仕方ないから

また別のスイッチを入れることにした


予定が急に変わり

それに対する感情の矛先を変える


どれだけ

どのくらいの期間

僕はそのスイッチを用意しておけばいいんだろう

これが

救急医とか外科医の宿命なんだろう


オペそのものは

すごく簡単だった


僕が経験した緊急手術は

そのほとんどが

やっぱりオペしてよかったねと思うものばかりだ


オペ前は患者も迷い

説明をする僕たちも

検査結果を見ながら

どちらでもいいんだけどね・・・と内心思うこともある


でも実際手術してみると

こりゃやっといて正解だわと

ほっとすることがほとんどだ

僕の浅い経験ではだけど。




手術が終わったのが20時15分だった


待機していた医長の先生が

術後のオーダーを色々出してくれていて

僕の術後の仕事はほとんど終わっていた


すでに夜勤帯だったから

お迎えの病棟ナースも数が足りない

僕が病棟への搬送を手伝った


待機していたご家族に一通り説明をして

時計を見ると


20時25分


いけるか?IKEA


いけるぞIKEA


いけや!IKEA


つまらないダジャレがなんだか頭の中に浮かびまくっていた


そのまま着替えてダッシュで車に飛び乗り

普段使わない高速を使ってぶっとばした


20時56分にIKEAに滑り込み


ホタルノヒカリが鳴り響く店内を

人々と逆の方向に走り


返品コーナーに着いた


「研修中」と書かれた名札をつけた若いメガネの店員が

スクリューと格闘したけれど

案の定ダメだった


後ろの窓口の奥にいる人に

スクリューを渡し


今だとお時間もかかってしまいますので

返金を・・・


と彼は言いかけた


それは困る

スクリューを買いにまたIKEAにこないといけないじゃないか


いや、返金ではなく交換にしてください

すかさず僕は言った


なんだか交換は避けたいという空気を

そのメガネくんは全面に出していた

どうやら手続きが面倒くさいらしい


そんなやりとりをしているうちに


後ろから


治ったよ


と声がして小さい窓口からスクリューが出てきた


見ると

説明書の図と同じように先端を固定できるようになったスクリューが

そこにあった


メガネくんにお礼を言って

僕はIKEAを後にした


メガネくん研修中なのにかわいそうだったな・・・


当直が終わる間際に

滑り込んでくる急患が重症だったり

やっかいな人だったりしたことを思い出しながら


車の中で苦笑いをした


めまぐるしい一日の後半だった









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