マネジャーが去ってしまうと、ユノヒョンはメニューを見ながら「チャンミン何する?」って聞いた来た。

「まずは水と食前酒ですね・・・。」

「水は、ガス抜きでいい?食前酒、ワインがいいよね、チャンミンは?あ・・・俺、これにする!!」

目ざとくメニューにあった、フルーツのカクテルを指差した。

アルコールあんまり強くなさそうな感じ・・・ヒョンらしい。

ヒョンはあんまりお酒に強くない。

あのステージのどや顔からは想像しにくいだろうけどね。体質的にアルコールに弱いんだ。

「じゃあ、僕もそれにしようかな・・・。」

「あれ?スパークリングワインとか白ワインにしないの?」

「はい。ヒョンと同じのがいいです。」

「そうか?」嬉しそうに・・・照れている。あはは、面白いヒョン。

二人であれだこれだと前菜とメインを頼む。こんな時間・・・最近なかったな・・・。

僕達の周りにはいつも誰か一緒で・・・。韓国ではそれぞれに自宅を構えたから、仕事が終われば別々だし・・・東京では一緒に住んではいるけど、マネージャーも他のスタッフも一緒に住んでるから、二人だけなることは、ほとんどないんだ。

「俺さ・・・一人暮らししはじめて・・・改めて、お前の存在、認識したよ。」

突然ユノヒョンが話しはじめた。

「どうしたんです?もう酔いましたか、ヒョン?」

「ばーか!」

「ふふふ。」

「お前は楽しんでるようだな・・・一人暮らし。」

「まあ・・・世話を焼かなくてもよくなりましかたらね、誰かさんの。」

「まったくだな・・・ははは。」

僕だって・・・ヒョンの存在がとても恋しくなる。でもヒョンは、いろんな人に囲まれて・・・きっと楽しく毎日を送ってると思っていた。だから・・・そんなことを言われると・・すごくうれしい。でも・・・顔には出さないけどね。

僕に彼女ができて・・・それがきっかけで、僕達は10年続いた同居生活に終止符を打った。

「お前は・・・俺にとって家族どうぜんだからな・・・。」

ニコニコして言う。

そのうち前菜・メインが運ばれてきて、僕達の心は美味しいものに奪われてしまった。

メインはお肉だったから、赤ワインをたのんで・・・もちろんヒョンの分もね。

赤ワイン、いっぱいくらいなら大丈夫でしょ?ヒョン?

とろんとした目で僕が話すのを肘をついて聞いているヒョン。優しい顔。

「チャンミン、まだおなか一杯じゃないよね。セカンド、パスタか何かたのみなよ。

メニュー持ってきてもらおう。」そういってウエイターさんを呼ぶヒョン。

ヒョン、よくわかってますね・・・、確かに・・・もっと食べたいです。

「チャンミンのパスタ・・・おいしかったなああ・・・。」

「そんな前のこと・・・よく覚えてますね?」

「うん。美味しいものは忘れないんだ。また作ってよ!!」

「何いってんですか・・彼女に作ってもらってください!彼女に!!」

「作るヒマねーじゃんかよううう。」口を尖らして拗ねる。もう・・・ヒョン、可愛すぎ!

「チャンミンはどうなのう?今の彼女とはうまくいってる?」

「いいません!プライベートな話題ですから!!」とふざけて答える。

「はいはい、ごちそうさまです!」

「ヒョンも彼女を・・・。」

そう言って、パスタから顔を上げると・・・・運河の方をぼうっと見ているヒョン。

和やかで・・・優しい顔。とっても・・・綺麗だ。

「ねえ、チャンミン・・・さっきカフェで話してた骨董市の話・・してよ・・・。」

ヒョンが視線を変えず・・・ぼそりとつぶやいた。

「僕もそんなに知らないんですよ。ただ世界的にも有名な骨董市なんです。骨董って言ったら堅苦しいですか・・・アンテイークと呼べばいいかな・・・。」

「チャンミンがもしその骨董市に来れたら・・・どんなものがほしい?」

「そうですね・・・卓上に置くランプとか・・・」

「ステンドグラスの?」

「ああ・・・いいですね。そうだ・・・家具ならそれを置く机がほしいです!!」

「そっかあ・・・あとは?」

「ちょっとした小物類かな?ブックスタンドとか・・・置物とか・・・。」

「うんうん。」

「ヒョンは?何か欲しいですか?」

「今は・・・絵かな。壁にかける。」

「絵かあ・・・難しいですね。」

「うん。この旅行中に・・いいのがあったら買うよ。」

「見つかるといいですね。」

「ああ・・・。」

ユノヒョンの視線はずっと一点を見ていた。話をしてるけど・・・僕の方を見てくれない。

もう・・・なんだよ、ヒョン!綺麗なおねーさんでもいるんですか?

ヒョンの視線の先を追う。

小さなカフェの店先に座るおじさんが二人。おじさんというよりおじいさんかな?

ビール片手に、陽気に二人はなしていた。


次回更新は、あすの18:00です。

【ゆのみん企画第71回お題:Ti amo①】
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