タイトル: 羅生門 デラックス版

なぜ今時こんな昔の映画を観たのか?と、つっこまれそうですが、黒澤 明監督の映画はまだ観てないものが何本かあり、今回は「羅生門」を観てみました。


まぁ、みなさん知っていると思いますが、ストーリーは芥川龍之介の「藪の中」が原作で、平安時代におきたある殺人事件を中心とし、その事件に関係する人々の証言がぜんぜん違うという不条理を中心に話は進んでいきます。


まず最初にビックリしたのが、一番最初の森のシーンです。

この映画、もう50年ぐらい前の作品ですが、老人が森を歩くシーンで「これどうやって撮ってるんだ???」と思わせる凄いカメラワークをみせてくれます。今でこそハンディカメラやデジタルカメラでどんな位置からでも簡単に撮れますが、当時の技術を考えれば、やはり唸らせます。そして、この映画、モノクロ映画なのですが、非常に陽光の輝き、木漏れ日の陰影が鮮やかで、観るものに色彩を感じさせるという点も素晴らしいです。


次に面白いと思ったのは、男の本性、女の本性、そして、人間の本性を見事に描き出しているということです。男の建前、プライド、強さ、を誇示しないと生きていけないサガ、女の受身、弱さ、内面に秘めた、強者に翻ることのできる強さ、人間の、自分自身が一番かわいいというワガママさ・・・・・・・・・・・・・


さらにとても面白い演出が、殺された人間の霊魂をイタコを使って交霊させ、死んだ本人にも証言させるというアイディアです。誰がそこまで考えますか?(笑)


結局、最後は真実がわからず「藪の中」ということですが、それでも黒澤監督の「人間を信じたい」という、ちょっと説教くさいメッセージでエンディングを迎えます。


やはり黒澤監督はタダ者ではなかった・・・・・・・・・というのが私の感想です。