不器用なりのコミュニケーション
「嬉しいです。長山さんらしくて。」そう言った22歳の仲良くしてた男の子がカナダに旅立つ。絵に描いたような好青年な彼と、まったく正反対な不気味なイラストのような自分が仲良くなるようになったのは不思議だ。似た者同士より、正反対もの同士の方が仲良くなるなんてことはよくあること。そんなよくあること、の中でも彼と過ごした時間は自分の中で妙に特別なような感じがした。きっと、自分に持ってない何かを持っているって感覚が反応して、からかったり悪ふざけをしたりしていつしか仲良くなった。これから1人で海外に旅立つ子に対してロクな品も用意してやれないような三十路手前の自分が渡せたもの。いつも自分がポッケに入れて持ち歩いてるサイコロ。もう少し気の利いたもんを用意しておけって思ったよね。流石に。だけどね、ただのサイコロと言われればそれまでなんだけど、なんとなく、彼に「なんで長山さんサイコロ持ってるんですか?」って疑問に思ってくれたことの答えをなんとなく理解してくれるような気がした。分かってくれるような気がした。だから、彼に肩身離さず持ち歩いてるサイコロを渡した。きっと、周りから見たら「なんで?」とか戸惑われるかもしれない。そんなこと俺にも分からない。言語化できないナニか。言語化できないからサイコロを渡した。渡したら嬉しそうにしてくれた。「いいんですか?長山さんがいつも大切に持ってるもの」なんて言われながら。「長山さんらしいですよ、サイコロをプレゼントしてくれるの。」笑っちゃうね。「握りすぎて壊しちゃいました!」とか笑いながら日本に帰ってくる日を楽しみにしてたいですね。短い間だったけどありがとう。行ってらっしゃいだな。帰ってきた時には飯でも行こう。