『文体練習』 レーモン・クノー | うさぎの本棚

『文体練習』 レーモン・クノー

文体練習
文体練習

ひとつの短い物語が、様々な文体で書き分けられている。
メモ、複式記述、控え目に、隠喩を用いて…など
その数なんと99である。

しかもなんともこの絶妙な言葉遊びは
元々フランス語で書かれたもの。
翻訳者はさぞかし大変だったことだろう。
イタリア語なまりは関西なまりに
ラテン語もどきは漢文もどきに翻訳(意訳?)
されている。
逐語訳するのではなく、作者の意図した
ルールを日本語におきかえて再現しているのだ。

ちょっと紹介してみると…
「メモ」
ソフト帽をかぶった二十六歳ぐらいの男、
首は引きのばされたようにひょろ長い…

「無関心」
ソフト帽をかぶった若い男ですか?
いたかもしれませんねえ。…

「哲学的」
其処に於いて虚栄の長首と無知の帽子的…

「女子高生」
変なやつをぉ、見たんだけどぉ、
首がぁ、すっごい長くてぇ…

「食べ物」
うなぎのように長い首をして、ベーコン巻きの
ピザパイをかぶった…

こんな調子で99である。
最後(99番目)は「意想外」。
このラストに意想外なオチが待ち受けている。