担当 いそ

1 オタクとオタク市場

a オタク:あることに過度に熱中し、詳しい知識を持って いること。又そのような人

b オタク市場:一定数のコアユーザーを有するとみられ、 オタクの聖地である秋葉原などで扱われることが比較的 多いコンテンツや物販、サービスを指す

c オタクの人数が多い市場:アニメオタク約 657 万人

アイドルオタク約 429 万人

 

2 リア充オタクの増加

a リア充オタク:社交性があり、友人関係が広く、恋愛経 験のある普通の「リア充」の若者と見分けがつかないオ タク

a2000 年代前半のオタクのイメージとかけ離れた存在

a 旧来のイメージ:暗く、内向的で社交性が低く、ファ ッションに気を使わない

d 自分を特徴づけるキャラとしての利用

e オタクを公言することの後ろめたさや恥ずかしさの緩 和

f オタクであることの公言=勇気が必要な行動

→一般人に距離を置かれる可能性が高かった

→1988 年~1989 年に発生した東京・埼玉連続幼女殺人事 件の影響

 

2-1 オタクのライト化と広範化

a 「オタク」の意味がファン程度の概念に変化

b 蔑称のニュアンスが含まれる

→アニメやゲーム、漫画などのサブカルチャー(主流文 化に対しての下位文化)に極めて造詣の深い人

c 有名なアニメを好きなだけでオタクを自称

EX) ラブライブ!、鬼滅の刃

d 超メジャー級の作品を 1 本愛好するだけでオタクを自 称する若者の増加

e グッズや円盤にお金を費やさない

→作品に限界まで財産をつぎ込むオタク像の変化 2-2 物を買わないオタク

a オタクの興味がハードディスクに収まるものに変化

→動画や画像の保存

b 昔は情報は固定するモノ

→紙を固定して本にする

 

 

2-2-1 パッケージ

a パッケージを購入しないオタクの増加

→昔の映像系のオタクはたくさんのパッケージを所有し ていた

b 2000 年代の初頭からハードディスクレコードの普及

→アニメの録画保存が可能に

c 動画共有サイトのサブスクリプションサービスの普及 →パッケージ版に付属する特典目当て以外の購入理由の 希薄化

2-2-2 書籍

a お金をかけずに作品に触れ、研究が可能に

←昔のオタクは、作品の資料であるムックやコミックな どの書籍を多く所有

b インターネット上の情報ソースの多様化

EX) 公式サイト、ウキペディア、ファンによる自主的な まとめサイト

c漫画喫茶の増加

c 電子書籍の普及

 

2-3 おしゃれなオタク

aお金の投資先がファッションに変化

b リア充オタクの増加

→交友関係が広く、服装は非オタクより

c オタク全体のファッションセンスの底上げ

→アニメを見なかった一般層がオタクに

d 安価なファーストファッションの普及

→商品が画一的なためダサいファッションになりづらい EX) ユニクロ、GAP、H&M

e 握手会やハイタッチ会の対面型のイベントの増加

→実際に面と向かうアイドルや声優さんへの気遣いから 身だしなみの意識の変化

 

2-4 発信型のアクションなオタク

a コンテンツを発信したり、イベントを企画する発信型 のオタクの増加

→「内向的」、「外に出ない」といったイメージの変化 EX) 歌ってみた・踊ってみたなどパフォーマンスの投稿、 ボカロ P、Pixiv へのイラスト投稿、アニクラ DJ

b 受け手から送り手の変化

→数多のコンテンツを鑑賞し、調べつくし、所有し、語 る消費のプロ

c 「世に発信する」ことのハードルの低下

←ネットインフラの発達により完全匿名で作品の発表が 可能に

d 拡散を重ねれば内輪に向けた情報が不特定多数の外に 可視化される

→オタク発のコンテンツの知名度が上がる

e 初音ミク:様々な企業の広告や CM に登場し世間の知 名度が上がる

 

3 オタクになった理由の変化

a 昔のオタク:作品を愛していたからオタクになった

b 現在のオタク:オタク知識がコミュニケーションツー ルのネタになるからオタクになった。

 

3 -1 オタク知識のコミュニケーションツール化

a オタク知識が会話のネタに

→にわかオタクが発見

b にわかオタクの特徴:週に2・3 本程度、有名で人気 のアニメしか見ない、オタク歴が浅い、無料の TV アニ メしか見ない、グッズを買わない

c アニメが共通の趣味に

←アニメに対する偏見のやわらぎ

d ある程度のメジャー感とポップさがある作品が好きで あれば、文化系の物知りといったポジティブなパーソナ リティが獲得可能

→即席で自分のキャラづけが完了

e メジャー作品が市民権を獲得

 EX)ラブライブ!、エヴァンゲリオン、ONE PICE

 

3-2 ライト化するオタクイベント

a 2014 年からのコミックマーケットのライト化、若年化 b コミックマーケット:1975 年から続く夏と冬の年 2 回 開催される同人誌即売会

→18 禁商品やマニアックな分野の作品が販売されてお り、40 代以上の年長者を含めた濃いオタクの参加率が 高い

c 若年層向けのジャンルの増加

→2023 年冬のコミケではゲーム(ネット・ソーシャル) の分野が最も多い

EX) TYPEMOON 880 サークル、ブルーアーカイブ 1718 サ ークル、その他のゲーム(ネット・ソーシャル)1052 サークル d 同人誌の創作・購入ではなく、見物するだけの層の増 加

→コスプレイヤーや企業ブース目当て

e オフ会の場としての利用

→SNS 上でコミュニケーションを取り、コミュニティを

形成

 

4 オタク 4 世代論

 

4-1 オタク第一世代

a 1970 年代中期から 80 年代のアニメブームを青年期に担 った世代

b 教養主義で選民意識が高い

→作品知識だけでなく、教養が求められた

c 他の大人向けに理論武装が必要

←アニメは子供向けのエンタメとして認知されていた d SF や文学を用いた作品の批評的読み取りや制作手法の 研究

→自身の言葉に権威と説得力を結び付ける

e 時間や財力、熱意の全てをオタ活に注ぐ

→選民意識の誕生

f オタクと一般人との知識の差の存在

←情報を得る機会が少ない

 

4-2 オタク第二世代

a 1980 年代末から 90 年代に 10 代だった世代

→『新世紀エヴァンゲリオン』、『GHOSTIN THE SHELL/攻殻 機動隊』を青年期に体験

b オタク文化への誇りと迫害を経験

→アニメが市民権を得ていく体験とオタクのバッドイメ ージに悩まされる

c DVD コレクター

←円盤によって制作費を回収

d オタクの典型的特徴が定着

←東京・埼玉連続幼女殺人事件の影響

e オタクへの偏見が高まる

←「二次元美少女を愛好する」典型的なオタク趣味が、 犯人のロリコン趣味と結び付けられて報道

 

4-3 オタク第三世代

a ゼロ年代を 10 代で過ごした世代

→アニメに加えてライトノベルの勢いが増す

→『涼宮ハルヒの憂鬱』からライトノベル原作のヒット が続く

b 教養主義が薄れる

→特定のキャラクターや声を当てる声優、デザインなど 好きが細分化

EX) ガンダム seed

c 伝統や歴史に縛られず、各自が想い想いの好きを表明 可能に

d 一般メディアで定型されたオタク像の押し付け

→萌えが 2005 年ユーキャン流行語大賞上位 10 位に -

e モノの所有に対する執着が希薄に

←オタク活動の前提としてインターネットが存在 f モノから体験型消費にお金をつぎ込む

→モノ所有より体験型消費を好む経験が 2000 年代半ば から強まる

g 体験や発信で自らのオタク性を表現

→コスプレの普及、2007 年に初音ミク、Pixiv の誕生

 

4-4 オタク第四世代

a 現代の 10 代後半から 20 代前半

b オタクが生き様からキャラ、ファッションに変化

→作品の体系的なルーツに興味はなく、非常に浅い知識 しか持たない

c 秋葉原の再開発

→マニアックなオタクの街から綺麗な街として観光地 化

→訪れるオタクのライト化に拍車をかける

d オタクに対して社会が寛容に

←アニメやゲームで育った年代が親世代に

e オタクの地位向上

 

5 知識から態度への変化

a 自身が抱く愛を他者に見えるように可視化する

→「パフォーマンス→可視化→他者からの承認」

b オタクのアイデンティティを測る物差しの変化:「知 識量」から「愛を表現する態度」

←ネット環境の普及により手軽に情報を獲得し、いつで も作品を鑑賞可能に

c 現代の作品愛・キャラクター愛の表現方法

→無限回収、オリジナルグッズ制作

 

5-1 無限回収

a 無限回収:元はアイドルオタク用語で好きなアイドル の写真を大量に集めること。現在は好きなアニメキャラ クターの特定 1 種類のグッズを複数、時に何十個集める こと

b 『うたのプリンスさま』に登場する男性のキャラクタ ーのラバーストラップを買い求め、バッグの全面を埋め 尽くす女性ファンの出現

←ラバーストラップや缶バッジは安価で生産しやすく、 購入しやすい

c 意義:特定のキャラクターに対する愛情表明の可視 化

d 資金を一点集中することでキャラへの愛を体現する

 5-2 オリジナルグッズ制作

a 自分の愛の深さを一点ものによって表現

 ←100 円ショップやネット通販の普及

b 他ファンの妄想の鑑賞

←オリジナルグッズは作品愛が妄想として結晶化したも の

 

6 目的から手段へ

a オタクキャラや創作活動による共感を得るオタクの増 加

→手段そのものを楽しむ

b モノ・知識を収集する目的からの変化

b第四世代のオタクに目的は存在しない

→オタクキャラとしての生活自体が目的

d 友人関係の構築

←ライブ参戦、コスプレ、無限回収、SNS 上のコミュニ ティなどのオタクとしての日常生活

 

7 現代オタクの 4 分類

 

a SNS の発達で生じた 3 つのオタク形態

b オタク友達以外の「他人の目」の意識

→コミュニティが外に広がる

c 隠れオタク:オタク性を恥ずかしいと感じる層

→一般人とのコミュニケーションの際にオタクを隠す

 d リア充オタク:オタクキャラをコミュニケーションツールとして生か す層

→オタク趣味を隠さず、人間関係を増やす

e イタオタク:SNS を一般人とのコミュニケーションに使わない層

→SNS 上でオタク同士のコミュニティで集中的に活動 f オタクのアクティブ化

 

7-1 一般人のオタク化

a 一般人のオタク化によって市場の拡大

b エセオタク:コミュニケーションのためにオタクを自称したいだけ のため、知識・体験が浅い

c SNS 上ではオタクキャラを演じることが可能

d リア充オタク:作品の情報や体験を少ない投資と労力で手にいれた元 一般人

e 特定のサークルやコミュニティに狙いを定めた層

←手っ取り早く友人を作るために付け焼刃の知識と浅い 経験を頼りにコミュニティに所属

 

7-2 リア充オタク(ガチ)

a 非オタクである一般人とのコミュニケーション力が高 く、オタク活動に並行して他の活動を積極的に行うオタク

b 一定水準以上のオタク知識・経験を持つ

c 自信が○○オタクであることがパーソナリティ

→他者へ隠さないが、場に合わせて調整

 

7-3 リア充オタク(エセ)

a オタクであることをコミュニケーションツールとして 利用することを第一目的とする層

b オタクのライト化とオタク市場の増加を引き起こす中 心層

→市場性で見ると重要な消費者

c 自身がエセオタクであることは無自覚

d 自身がオタクと決意するだけでオタクと呼ばれる時代

7-4 隠れオタク

a 一般人にオタクであることを隠す

EX) 複数の SNS アカウントを使い分ける、所有している グッズを持ち歩かない、自室の見えないところにグッズ を保管

b 他者から引かれるのを防ぐため

c オタク趣味に否定的な一般人との人間関係のギクシャ クを避けるため

d マルチチャンネルで人間関係を構築し、別チャンネル 同士が交錯しないことに快適性を求める

e 親しい人にはオタクを明かす

f 親しくない人には別の側面を見せる

 

7-5 イタイオタク

a 一般人との関わりが薄く、オタクとの付き合いが深い が自分がオタクであることを隠さない層

→旧来型のオタクとリア充オタクの双方を併せ持った存 在

b SNS によって同好の士とのコミュニケーションが活発 化

c 属性は旧来型のオタク

d 志向の一部はリア充オタク

e 一般人と共有出来ないジャンルのコンテンツを好む傾 向

→対象としているオタクジャンルの影響

 

7-6 残存ガチオタク

a 現在の旧来型のオタクスタイルを貫くオタク

→絶滅危機

b 内向的で社交性に欠け、外部の発信意欲はあまりない c SNS で人と人がつながる時代に周りの目をまったく気 にしないタイプは少ない

 

 

8 ファン化するオタク

a ファンとオタクの境目が曖昧

→オタクの意味の広範囲化

b オタクが頻繁に着脱可能なものに

←生き様からキャラクター性に変化

c 卒業と回帰を繰り返すオタクの増加

→あるコミュニティではオタクを名乗り、飽きてきたら 捨てる

d フレキシブルな生き方

d後追いがいくらでも可能な環境に

←パソコンとスマートフォンで抜け落ちていた情報の補 完が簡単に可能

→昔は一度オタクを辞めると追いつくのに労力とお金が かかる

f 人を手軽にオタクにしたり、オタクを卒業させる

→オタク属性のキャラ化

 

9 考察

a 双方向モデルが流行る理由

→活動を通して自身が抱く愛を他者に見えるように可視化 可能

EX) 二次創作やイベント参加、無限回収

b 多くの人に共感・応援したいと思われる描写があれば、 作品はヒットするのか?

→アニメファンに人気を起こすためには必要

→SNS を通して一般の目に留まる可能性をあげるため c 大きな盛り上り(祭り)が必須

→コミュニケーションツールとして一般人がオタクと自 称するため

EX) 鬼滅の刃の大ヒット、ラブライブ!の紅白出場

 

9-1 アイドル系ヒットの理由

a オタクのアクティブ化とモノからコト消費の変化

→ライブイベント系統とオタクの相性が上がった b 自分の愛を表現する土台が出来上がった

→ニコニコ動画や SNS

→アイドルマスターはニコニコ動画が流行した

c 地上波進出による知名度の増加

→ラブライブ!の社会現象によるコミュニケーションツ ール化

→市民権を獲得したため、オタクを自称出来るコンテン ツに変化

d アイデンティティやキャラ付けをしやすい

→コミュニケーション参加の容易さ

→多くのキャラから推しを選ぶことでさらなるアイデン ティティの獲得

→コミュニティに属しつつ、自分だけの愛を可視化 -