担当:ほし
1 概要
1-1 映画宣伝・拡散
1-1-1 映画宣伝の役割
a これまでのヒットの要因の中で宣伝による効果も多かった
b 「君の名は」では長期的な宣伝
→多くの露出や拡散を可能
c「名探偵コナン」ではポスターの表現方法の変化
→メインキャラやストーリーを明確化
d 映画における宣伝の役割を示す
1-1-2 映画の拡散の役割
a 「名探偵コナン」では推し活などSNS等の拡散によるロングランヒット
1-1-2 映画宣伝・拡散の重要性
a 宣伝によってヒットにつながった事例
b 拡散によってヒットにつながった事例
c 逆に宣伝をしない事例
2 映画宣伝の役割
2-1 映画宣伝の歴史
2-1-1 1970年代後半から宣伝の重要性が露呈された
a 角川映画が出版会社と連動やテレビスポットの多用
b 角川書店との連動で出版と映画がお互いに宣伝し合えるような形で相乗効果を実施
Ex)作家・横溝正史の原作作品を角川が配給
c TVの普及もあり、テレビスポットの活用が多く行われた
d テレビスポット:テレビ局が指定した時間に放送されるCMのこと
e 洋画が多額の宣伝費でテレビスポットを獲得する
←宣伝費の重要性が上がった
f 単純に露出の量が宣伝に効果的となった
2-1-2 宣伝の質の重要性も上がる
a ブロックブッキング方式の確率など、B級映画など多く作られる
←第2回の発表
b TVスポットや紙媒体など宣伝方法の増加
c 露出の量だけでは目立ちづらくなる
d 宣伝がより質や中身が良くないとヒットにはつながらなくなった
2-2 現代のメディア露出の構成比
2-2-1 現代では以前より多用な露出媒体が存在
a 映画館での映画鑑賞に関して、2015年から2018年での直近に観た映画のタイトル情報源についてのアンケート調査の結果(図1)
b テレビCMと答えた人が一番多い
c 劇場の予告編が2位
d テレビ番組内での紹介が3位
e 映画の公式サイト、知人から直接聞いた、ポスター等と続いている
f テレビでの認知が多く、SNSでの認知が少ないことがわかる
g この結果から、テレビ露出の重要性がうかがえる
2-2-2 博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2022」時系列分析
a 調査対象者は15歳~69歳の男女
b 調査期間は2022年の1月20日~2月4日
c メディア総接触時間の構成比(図2)
→全体を通してテレビ、パソコン、携帯電話・スマートフォンの割合が高い
→2022年になって初め携帯電話・スマートフォンが一番割合が大きくなった
d 性年代別メディア総接触時間の構成比(図3)
→男女ともに40代までテレビより携帯電話・スマートフォンの比率が多い
→50代以上は圧倒的にテレビの割合が多い
e スマートフォン所有率の時系列推移と性年代別スマートフォン所有率(図4)
→2022年では全体を通して96.5%がスマートフォンを所有
→全性年代での所有率はすべて90%を超えている
f 10代~20代の約半数はほとんどテレビ番組を見ない
←2020年度のNHK放送文化研究所の国民生活時間調査による結果
g この結果から、携帯電話・スマートフォンの使用が今後も進むことがうかがえる
2-2-3 映画の宣伝ではテレビ露出に加えて携帯電話・スマートフォンから認知できるデジタル中心の宣伝も重要
2-3 映画宣伝の役割
2-3-1 宣伝のメリット
a 映画の認知
b 映画の内容の明確化
c 興味関心の獲得
2-3-2 宣伝方法
a 予告編
←シネアド、公式サイト、公式YouTube等
b シネアド:シネマアドバタイジングの略で、映画館で映画が上映される前に流れる動画広告を指す
c ポスター、チラシ
d テレビスポットの活用
e 新聞や雑誌等の紙媒体
f テレビやラジオなどでの露出
g 試写会や舞台挨拶などの対面での宣伝
h SNS等でのツイート
→多種多様な宣伝方法が存在
3 宣伝によってヒットにつながった事例
3-1 「魔女の宅急便」
3-1-1 スタジオジブリと宮崎駿の名を世間に知らしめた作品
a 1989年7月29日公開
b 興行収入36.5億円
c 前作までの4作興行収入はすべて10億円代
d 「風の谷のナウシカ」(1984)は14.8億円
e 「天空の城ラピュタ」(1986)は11.6億円
f 「となりのトトロ」「火垂るの墓」(1988)は11.7億円
3-1-2 宣伝に力を入れた映画
a 宣伝費に約10億円費やした
b 配給の協力に徳間書店、東映、ヤマト運輸、日本テレビ
c これまでの映画に比べて多い
d 「風の谷のナウシカ」は徳間書店と東映のみ
e 「天空の城ラピュタ」は徳間書店と東映のみ
f 「となりのトトロ」「火垂るの墓」は徳間書店と東宝に加えて新潮社
3-1-3 日本テレビに協力要請
a 映画の出資と宣伝の協力
b 日本テレビはジブリ作品のTV放映権を持っていた
c 日本テレビの番組で「魔女の宅急便」が多く紹介
d 今後のジブリのTV放映や公開直前PRへの前進となった
3-1-4 ヤマト運輸とのタイアップ
a ヤマト運輸のイメージ広告に「魔女の宅急便」のキャラクターのキキとジジを大きく描写
b 広告内に「クロネコヤマトはアニメーション映画『魔女の宅急便』を応援しています」と記載
←ジブリ作品を大きく宣伝
c ヤマト側も応援していることを知らせ、企業としてのイメージ向上につながる
→宣伝に力を費やしてこれまでの作品の成績を大きく上回った
3-2 「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」
3-2-1 リブート作品
a 1996年公開の第一作のリブート版として2018年4月6日に日本で公開
b リブート作品:昔の作品に新しい解釈やコンセプトを持たせて作り直す
c リメイク作品:昔の作品を基本設定やストーリーはそのままに作り直す
3-2-2 宣伝を大きく変化させた方法
a 最初の予告映像は「ジュマンジ」色らしい楽しく愉快な予告
b 2017年12月にアメリカで公開され大ヒット
c 二回目の予告映像では最初の予告色に加えて、アメリカで大ヒットという情報を入れる
←2018年2月下旬
d 「マジジュマンジ」というフレーズを予告映像で多用
e 2017年当時に流行していた「マジ卍」というフレーズと語呂良くマッチさせている
f 予告映像のみならず、公式アカウントのツイートや俳優のPR動画内でも多用
→「#マジジュマンジ」を意図的に多用していることがうかがえる
g キャッチ―なフレーズで覚えやすい、話題性の獲得と狙った
→宣伝では内容よりも印象に残る方法を採用
4 拡散によってヒットにつながった事例
4-1 「カメラを止めるな」
4-1-1 小規模公開が大規模公開へ
a 2018年6月23日に2館で公開
←池袋のシネマ・ロサと新宿K’s cinemaとどちらもミニシアター規模(300席弱)
b 一週間の限定公開の予定
c 想定外の満席や口コミでの拡散、感染が広まる
d 7月下旬に拡大公開が発表され全国公開された
e 興行収入は31.2億円
f 観客動員数は220万人を突破
g 成績は公開から右肩上がりに良くなっていった
h 一般的な伸び方ではない
←基本公開から爆発的に売り上げを伸ばし、だんだんと下降する
i 他のヒット作品と比べイレギュラー
4-1-2 低コスト
a 製作費は約300万円
←お金を全然使っていない
b 邦画の平均製作費は約3.5億円と言われている
c 実写版「進撃の巨人」の脚本を担当した映画評論家の町山智浩のツイート(図5)
←2016年6月5日のツイート
d 製作費のだいたい3倍で興行収入が黒字になる
e 興行収入が30億円を超えるヒット作品の製作費の上限は10億円
→「カメラを止めるな」は製作費をほとんどかけずに興行収入を伸ばしたといえる
4-1-3 テレビ露出が少ない
a 映画宣伝には欠かせないテレビ露出は公開前後2週間でわずか1件のみ(図6)
←テレビでの宣伝はほとんどできていない
b その後は予想外のヒットや拡大公開などもあり、7月後半からテレビ露出が増加
c 興行輸入とテレビ番組露出のグラフ(図7)
←2018年公開の16作品の公開前後2週間の計4週間分のテレビ番組露出本数が横軸、興行収入が縦軸
d 「カメラを止めるな」が一番左側
←テレビ番組露出が一番少ないことがわかる
e 2018年の興行収入一位の「ボヘミアン・ラプソディ」もややテレビ番組露出は少ないものの「カメラを止めるな」よりかは多い
e 2018年の興行収入二位の「劇場版コードブルー」は一番右上とややテレビ番組露出は多い
→公開前後2週間のテレビ露出は圧倒的に少ないことがわかる
4-1-4 テレビ露出が増えていった要因
a 本編の内容が良いのは大前提
←本編が良くなければ良い取り上げられない
b 口コミの拡大、感染がある
c 2016年に公開された「君の名は。」と「シン・ゴジラ」のツイート件数の推移(図8)
d 「君の名は。」は公開から10日間ほどがツイート数のピーク(青線)
←2016年8月26日公開
e 「シン・ゴジラ」は公開から1週間ほどがツイート数のピーク(赤線)
←2016年7月29日公開
f どちらもその後は減少傾向と公開直後に爆発的にツイートされている
g 2018年公開の「劇場版コードブルー」でも上記の2作品と同じような推移になっている(図9)
→ほとんどの映画はこのような特徴をもった推移になる傾向がある
h 「カメラを止めるな」のツイート推移(図10)
←公開日よりもずっと後にツイート数のピークが発生している
4-1-5 「カメラを止めるな」が特徴的なツイート数となった要因
a 公開前にツイートが少なかったのは公開前のテレビ露出の少なさ
←十分な認知がされなかった
b 低予算なため大がかりな宣伝がなかった
←本来は2館で1週間限定公開であったため
c ツイート数が増加した要因
d 様々な分野の有名人たちのツイート(図11)
←有名人がツイートしたタイミングでツイート出現数やアカウント数が増えている
e 声優で活躍する花江夏樹やタレントの指原莉乃など多くの有名人がツイート(図12)
←他にも、俳優の田村心やロックバンドのマキシマム ザ ホルモンなど他分野からの拡散があった
f ツイートの特徴として、内容は伏せてとにかく映画を観るように催促しているだけ
←何もわからないが故に興味がわく
g 本編の内容を伏せるというネタバレ厳禁の暗黙のルールの形成による一体感
h 公開後は#カメラを止めるな、#カメ止め、#ポンデミックが人気トップ3
i 結果、話題性や拡散ができテレビ露出やツイート数の増加ができた
4-1-6 監督・役者の宣伝活動
a 監督本人が映画の公式アカウントを動かした
b 任意で役者たちが自身のアカウントでプロモーションを実施
←SNSでの宣伝に力を入れていた
c 監督・役者・スタッフ合わせて舞台挨拶を最初の館で毎日実施
←身近な距離感での宣伝
4-1-7 監督・役者含めて無名の人によってこの宣伝活動が成立
a 役者同士の一致団結だけでなく、無名がゆえに応援したくなる要素もあった
b 話題性が上がったらより興味関心が湧きやすいのではないか
c 人気俳優の出演や有名監督の作品といったブランド力や話題性の獲得といった利点は得られない
d 低コストかつ無名な人選にもかかわらずの成績では大ヒットに値する
4-1-8 タイアップ
a サラダパンとのコラボ商品
←2018年11月10日~12月23日の期間で滋賀県のつるやのサラダパンとのタイアップ商品を販売
b リポビタンDとのコラボPRムービーの公開
←2019年2月25日より大正製薬の公式YouTubeチャンネル、大正製薬ダイレクトオンラインショップ内にて公開
c 話題性が上がったタイミングでタイアップが多く行われている
3-3-9 第42回日本アカデミー賞を8部門受賞
a 作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、主演男優賞、撮影賞、録音賞、音楽賞
b 2018年の流行語大賞にもノミネート
←「カメ止め」
→興行収入以上の盛り上がりをみせた
5 宣伝しない事例
5-1 「君たちはどう生きるか」
5-1-1 宣伝を全くしない映画
a 2023年7月14日公開
b 内容だけでなく公開の宣伝すら行わなかった
c 公式サイトも予告編もチラシ、大型スタンディ、バナー、TVやネットでのCMもない
←青い鳥人間のラフ画ポスター一枚のみ(図13)
d 興業会社やマスコミ向けの試写も一度も行われなかった
5-1-2 宣伝しないメリット
a 観にいかなければ内容を知ることが出来ないというシステム
←予告編での大まかな内容把握ができないため
b 予告や宣伝で満足感を与えさせない
←伝えないことによる好奇心を刺激できる
c 予告と本編とでのネガティブな矛盾やずれの防止
d ファン層での推察などかえって盛り上がる
e 宣伝費がかからない
5-1-3 宣伝しないデメリット
a 一番は映画公開の認知度や話題性の獲得が得られない
b 内容がわからず興味がわかない
5-1-4 宣伝しない映画にできた要因
a 宮崎駿監督の約10年ぶりとなる作品という背景
←ブランド力や期待度などによって話題性の獲得はある程度可能であった
b これまでの作品で獲得していたコアな宮崎駿作品のファン層による拡散
c 一番のデメリット要素の克服が可能(5-2-3 a)
d メリットを十分に発揮できた
5-2 「THE FIRST SLUM DANK」
5-2-1 「君たちはどう生きるか」同様に露出を控えた宣伝方法
a 2022年12月3日公開
b 2021年1月に映画製作を発表
c 予告もPVを数10秒のチラ見せ程度
d 公開一カ月前にキャスト発表
e あらすじは公開まで未発表
f アニメとは異なる声優陣の起用や宣伝不足もありSNS上で批判が殺到
g 炎上がかえって拡散や話題性の獲得につながる
←バズること自体が理想の宣伝
h 興行収入155億円を突破という大ヒットを記録
i ブランド力や話題性の獲得が可能であった作品
←漫画やアニメでの既存ファンやアニメ放送終了から15年以上という話題性や期待感
6 まとめ
6-1 宣伝によるヒット
6-1-1 「魔女の宅急便」では宣伝費を多く費やして宣伝に力を入れた
a 現代よりもテレビ需要が高かったため、テレビ露出を図る
→ジブリや宮崎駿ブランドの確立の前進となる作品
6-1-2 「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」では宣伝の方向性を転換
a 「#マジジュマンジ」の多用など印象強い宣伝に振り切った
6-2 拡散によるヒット
6-2-1 「カメラを止めるな」ではSNS等の称賛や拡散
a 映画館誘致やテレビをはじめとするメディア露出が一気に増加
6-3 宣伝しない映画
6-3-1 宣伝しないことがかえって宣伝になる手法
a 推察や話題性によってSNSで盛り上がる
b SNS需要の高い現代だからこそ可能
c ある程度映画の知名度やブランド力、期待度がなければ成立しない