担当:ほし

 

1 概要

 

1-1   人気映画のヒットの要因

1-1-1「名探偵コナン」のマーケティング戦略

a 20年以上も映画を公開し続けている

b 年々興行収入は上昇傾向

c 人気を継続し続ける要因

1-1-2 2方面からの要因

a 全体を通しての映画の変化

b ヒットした作品の特徴

 

2 基本情報

 

2-1 「名探偵コナン」の基本情報

2-1-1 原作漫画

a 1994年に連載スタート

b 出版社

←小学館

←現在は103巻まで発売

c 連載

←週刊少年サンデー

e 作者

←青山剛昌

2-1-2 アニメ

a 1996年に放送開始

b 放送局

←日本テレビ

c 放送時間

←毎週土曜日18時~

2-1-3 劇場版アニメ(映画)

a 1997年初公開

←「時計じかけの摩天楼」

b 今年2023年に第26作品目が公開

←「黒鉄の魚影」

c 配給

←東宝

d 製作

←小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテイメント

→「名探偵コナン製作委員会」による映画製作なためコナン映画は製作委員会方式

 

2-2 データ分析

2-2-1 興行収入(図1)

a 初年度の1997年は11億円

←「時計じかけの摩天楼」

b 2002年あたりから興行収入の停滞期

←「ベイカー街の亡霊」

c 2009年から停滞期を抜けてゆる成長期

←「漆黒の追跡者」

←35億円

d 2016年から興行収入が一気に上がりさらに成長期

←「純黒の悪夢」

←63.3億円

e 今年2023年公開の「黒鉄の魚影」の興行収入は136億円(9月6日時点)

←歴代最高を記録

 

3 全体を通しての映画の変化

 

3-1 全作品を通して5つの特徴的な戦略がある

3-1-1 スタジオジブリの撤退

3-1-2 原作とのリンクやつながり

3-1-3 映画の予告、宣伝方法

3-1-4 ゲスト声優の起用やコラボレーション効果

3-1-5 映画公開のタイミング

 

3-2 スタジオジブリの撤退

3-2-1 ジブリが作り上げた消費習慣そのものが継承された

a 2013年の「風立ちぬ」の公開を機にジブリ映画の公開がストップ

b 家族で映画を消費しようという習慣が他のファミリー映画へと移った

c コナンやドラえもん、クレヨンしんちゃんなど

←20年以上も長らく公開されているファミリー映画

3-2-2 3作品とも2013年を機に売り上げを伸ばしている

a 3作品の興行収入の推移(図2)

b 3作品ともに2013年までは興行収入は増減を繰り返している

c コナンは2011年を機に増加し続けている(水色)

d ドラえもんは翌年2014年こそ減少したがその後は2018年まで増加が続いた(茶色)

e クレヨンしんちゃんは2013年から2015年まで増加(赤色)

f 最終的にはコナンと他の2作品とでは興行収入の差は大きく開く結果となった

←この後のコナン映画の変化で紹介

g ジブリ撤退から3作品はそこから売上を伸ばしたといえる

h 今年2023年7月14日に「君たちはどう生きるか」が公開

←スタジオジブリの約10年ぶりの最新作

 

3-3 原作とのリンクやつながり

3-3-1 2014年の「異次元の狙撃手」から原作とのつながりを持たせた

a 映画を観ない原作ファンも映画を見ないと原作の内容についていけなくなる

b 映画を観ざるを得ない状況を作る

→新規層の呼び込みが可能

3-3-2 「異次元の狙撃手」の原作とのリンク

a 原作でも登場する沖谷昴という人物の正体を先に明かす

b 映画のラストシーンで「了解」というセリフ

c 赤井秀一の声

←沖谷が赤井であるというつながりを描いた

d 当時の原作での内容の中で赤井秀一は殺害されたように描かれている

←「バーボン編」

e 原作よりも先に映画でつながりを持たせた

3-3-3 2017年の「から紅の恋歌」でも先行公開を使用

a 映画のヒロインの遠山和葉のライバルであった大岡紅葉を起用

b 原作ではチラ見せのみという状態

c 映画で本格登場させている

→原作を楽しむにも映画は欠かせなくなった

3-3-4 キャラクターの逆輸入

a 逆輸入:アニメや映画で初登場したキャラクターが原作でも中心キャラクターとして描かれること

b 白鳥任三郎

←1997年の「時計じかけの摩天楼」で初登場

c 綾小路文麿

←2003年の「迷宮の十字路」で初登場

→キャラクターの逆輸入も映画を見逃せない要因の一つといえる

 

3-4 予告・宣伝方法

3-4-1 ポスター

a 興行収入が停滞した2004年~2008年あたりと急成長した2016年以降とでポスターの描き方が違う

b 停滞期はコナンや蘭がメイン(図3)

c 急成長期はコナンに加えて重要なサブキャラクターを大きく描いている(図4)

→「今年のコナンはこのキャラクターが重要!」とわかりやすい表現ができる

d 宣伝や拡散が可能

e キャラクターが立ちやすく、注目度や関心度も上昇

f 2016年は「黒の組織」

g 2017年は「服部平次」

h 2018年は「安室透」

i 2019年は「キッド&京極」

j 2021年は「赤井ファミリー」

k 2022年は「警察学校組」

l ポスタービジュアルは原作者の青山剛昌が直筆

3-4-2 次作のメインキャラクターの声を使用

a コナン映画は映画のラストシーンに次回作(翌年)の予告が入る

b 2015年の「業火の向日葵」までは次作のテーマとなる舞台が流れていた

Ex)船や飛行機など

c 2016年の「純黒の悪夢」からは次作のメインキャラクターの声を用いて予告している

Ex)2022年の「ハロウィンの花嫁」のラストでは黒の組織のジンの声を使用

→次回作の宣伝に加え、拡散力や期待度が上昇

d 世界的に人気のあるマーベル映画やワイルドスピードなどの人気シリーズ作品も用いている

3-4-3 当時のトレンドや技術を多く使用

a 2011年では都心の新地下鉄開通、2014年では東京スカイツリー、2018年ではドローンやIoTテロなど

←テーマのマンネリ防止や話題性の獲得

b 映画内のメイン地も年によって異なる

c 実在するロケーションを使用

3-4-5 宣伝時期

a 段階的な宣伝方法

b 2018年の「ゼロの執行人」を例

c 宣伝のスタートは前作のラストの声予告

d 2017年11月に公開された青山剛昌によるディザービジュアル

e 年明けの1、2月頃にメインポスターが解禁

f この間にSNSやサブのビジュアルポスターが公開される

g 予告映像は公開前の3月頃が基本

h 早い段階での宣伝を可能としているのは、製作側が数年先の展開まで考えているため

i 2016年までは毎年考えて作るスタイル

j それ以降は前々から展開を見据えておくスタイルに変更

k今では4、5年後まで考えられているという

←アニメ兼劇場版のプロデューサーでもある近藤秀峰による

→企業とのタイアップや原作とのリンクのしやすさにつながるという

 

3-5 ゲスト声優の起用やコラボレーション効果

3-5-1 コナン映画では毎年ゲスト声優を起用

a ゲスト声優のファンなど、新規層の獲得が期待できる

b 1作目のお笑い芸人の二丁拳銃から始まり、今年2023年までに計41名のゲスト声優を起用

c 2009年までは5名ほどだった

d それ以降は毎年実施し定番化している

3-5-2 コラボレーションも多く取り入れている

a 商品や企業とのコラボレーション

Ex)ベビースターラーメン、カラオケビッグエコーなど

←今年2023年

b Jリーグとのコラボレーション

←2012年の「11人目のストライカー」でのコラボ

c 当時の現役Jリーガーをゲスト声優として起用

Ex)キングカズや遠藤保仁、中村憲吾など

d ロケハンや映像撮影にも全面協力

e 海上自衛隊が全面協力

←2013年の「絶海の探偵」でのコラボ

f 映画内で登場したイージス艦「ほたか」は海上自衛隊のあたご型護衛艦「あたご」がモデル

g 自衛官の制服や艦艇等の装備が忠実に再現できた

→現実味のある描写の再現や新規層の獲得が可能

 

3-6 映画公開のタイミング

3-6-1 GW前の4月中旬に公開

a 26作品すべて4月9日~4月22日の間に公開

b 公開直後の爆発的な売り上げ

c 3週目と4週目のGWでの売り上げ

←大きな売り上げが期待できる

3-6-2 「ゼロの執行人」の週次売上推移(図5)

a 2018年公開で興行収入91.8億円を記録したヒット作

b 公開1週目の興行収入は約16億7100万円

c 2週目は約15億6100万円

d 3週目は約11億8300万円

e 4週目は約18億6100万円

←公開3週目と4週目はGW

f 公開4週で最終興行収入の約3分の1を記録

→長期休みに合わせた公開のメリットがうかがえる

3-6-3 「映画ドラえもん のび太の宝島」の週次売上推移(図6)

a 「ゼロの執行人」と同年代に公開

b 公開1週目から6週目あたりまで好成績

c 3週目の売上は良くなかった

d 春休みに突入した4~6週目の成績は回復した

e 公開1、2週間と長期休暇に売上が伸びる

3-6-4 コナン映画は映画館に行きやすいGWにかぶせている

a より家族が行きやすい時期

b 公開1、2週目とGWで爆発的な初動が可能

→話題性や集団心理にもつながる

 

4 ヒットした作品の特徴

 

4-1 停滞期からゆる成長期へと変化した2009年の「漆黒の追跡者」

4-1-1 アクションと推理のどちらにも重きを置いたバランスの良い作品

a 麻雀牌とアルファベットから推理するミステリアス要素

b 東都タワーでの銃撃戦や乱闘シーンというアクションシーンも多い

4-1-2 ルパン三世とのコラボレーション作品を放送

a 2009年3月27日に日本テレビの金曜ロードショー

←「ルパン三世VS名探偵コナン」

b このルパンとのコラボの影響もあり、壮大なアクションシーンが多く描かれるようになる

Ex)2011年ではダム崩壊、2012年ではサッカースタジアムの爆破など

→推理物の範疇を超える作品となった

c ルパンのファン層にも注目度が高まり新規層獲得効果

d 続く2013年12月7日には「ルパン三世VS名探偵コナンTHEMOVIE」が公開

e ルパンコラボの後の作品の興行収入は上昇する傾向にある(図7)

→ルパンコラボの影響は大きい

4-1-3 黒の組織の登場

a 原作でも最重要キャラであるため注目度は高い

b 2001年の「天国へのカウントダウン」以来の登場

←この年はちらっとの登場だったためメイン登場は初

 

4-2 ゆる成長期から成長期へと変化した2016年の「純黒の悪夢」

4-2-1 黒の組織をメインとして活用

a 原作ファンやライトコア層の映画館誘致

b 2014年の「異次元の狙撃手」から映画と原作が密接に関係し始めた

c 原作ファンも映画を見逃すことができない状況

d 映画公開前のTVアニメでは黒の組織に関連したエピソードを集中放送

→内容の復習や映画の宣伝につながる

4-2-2 コナン映画で初めて事件の推理シーンが登場しない

a アクションがメイン

←殴り合いや銃撃戦など

b 内容や関係性を重視

c 黒の組織のメンバーの初登場

d 安室徹と赤井秀一のアニメより先の初対面

e コナン映画が推理一本ではなくなったといえる

4-2-3 ガンダムとの声優を通したコラボレーション

a ガンダムで「アムロ」の声を演じた古谷徹がコナンで「安室徹」の声優

b ガンダムで「シャア」の声を演じた池田秀一がコナンで「赤井秀一」の声優

c 異なる作品で約10年ぶりの共演

→ガンダムファンにも注目を集める効果

4-2-4 コラボが行われた経緯

a 『オタク経済圏創世記』によると、このコラボの最初は冗談半分で始まったと原作者の青山剛昌は明かしている

b 青山が池田に「名前が赤井秀一だよ?だったら声は秀一さんでしょ」と冗談半分でいった

←それが正式に決定

c 「赤井のライバルで安室ってやつを出そうと思うけど、声優は決まっているよね?」

→安室徹の声優もガンダムに関連した形となった

 

4-3 初めて90億円を突破し興行収入が前作と約20億円以上も増加した2018年の「ゼロの執行人」

4-3-1 ヒットには「安室」への推し活があげられる

a 「#コナン」の日次ツイート数の推移(図8)

b 前年の2017年のツイート数の最高点は10万弱

c 2018年では35万以上にまで急増

d 3倍以上もツイート数が増加

→映画の拡散や宣伝による効果はあったといえる

4-3-2 安室徹の人気性

a 「安室透」に関連しSNS上に投稿された件数の推移(図9)

b 期間:2018年1月1日~2018年9月20日

c 総件数は約508万件に達している

d 特に投稿が多かったのは公開から1カ月ほど経過した5月下旬~6月上旬頃

e 「安室を100億の男に」に関連するハッシュタグの投稿数の推移(図10)

←総投稿数は約13万件

f 前作、75億円、80億円を突破したタイミングで投稿数が急激に増加

→「安室」を100億にするというファンの応援体制がうかがえる

g 毎年メインキャラにフォーカスした内容に変化したことによる現象

h 投稿だけでなく、5回10回と映画視聴のリピートという推し活

4-3-3 安室だけでなくコナン全体として100億円を目指す風潮へ

a 安室にフォーカスした2018年でも到達しなかったため

b 2019年、2020年ともにツイート数が増加(図11)

c 2019年、2020年ともに45万にまで到達

d 2021年ではツイート数が急激に減少

←「鬼滅の刃」の流行により、ユーザーの対象が変化した(2020年10月16日公開)

4-3-4 「ゼロの日常」という安室が主人公の公式スピンオフ漫画

a 連載スタートは  2018年5月

←映画公開と同時期

→注目度も高く、再び映画館に行くリピーターも増加

b 3つの顔を持つ安室の本編では明かされない謎だらけの日常を描いたストーリー

c 原作者の青山剛昌が監修し、作画は他の人が担当(新井隆広)

d 毛利小五郎に弟子入りする私立探偵の安室

e 黒ずくめの組織のバーボン

f 公安警察の降谷零

←謎めいたミステリアスさが人気

 

5 まとめ

 

5-1 コナン映画の興行収入は年々増加傾向

5-1-1 ファミリー映画としての成長

5-1-2 原作とのリンクで映画館誘致

5-1-3 変化した宣伝や早期で段階的な予告

5-1-4 多くのコラボの実施

5-1-5 近年の映画の変化

a アクションシーンの多彩化

←推理物にとらわれない映画に

b 黒の組織やガンダム関連のメインサブキャラの使用

←推し活や伏線回収につながっている