聴覚 ー消費者心理と五感マーケティングー Q&A

 

Q1 店舗などのBGMによってどのくらい客単価やリピート率がアップするのか具体例はありますか?
A1 ロヨラ大学の心理学者ミリマンは、レストランでスローテンポ(1分間に72ビート)の曲を流したときと、アップテンポ(1分間に94ビート)のときでは売り上げがどう異なるかを調査しました。その結果、ランチタイムではアップテンポの曲のほうが11.6%、ディナータイムではスローテンポの曲のほうが15.7%、売り上げが増えたそうです。
 急いでご飯を済ませたい人の多い昼食の時間帯では、アップテンポの曲を流すと回転率が上がったことが増収の要因とされています。一方、ディナータイムではゆったりした曲を流すとお客の滞在時間が長くなり、飲み物やデザートの売り上げが増えたと考察しました。

Q2 音を通してイメージを形容できるとのことでしたが、マイナスなイメージを持たせるためにCMで使われている音楽はあるのでしょうか?
A2 マイナスなイメージを狙ったケースは今回見つけることができませんでした。あえて映像と音楽の「ズレ」を狙ったCMを見つけたので紹介します。
 それはサントリー食品インターナショナル「ペプシネックス ゼロ」テレビCMの「桃太郎」シリーズです。2014年3月の「Episode ZERO」がオンエアされて以来2017年12月「Episode 5」まで続きました。内容は小栗旬が演じる桃太郎が犬・サル・キジを仲間にし、ハリウッド俳優のジュード・ロウ演じる鬼の一族と戦うというものです。このBGMとして起用されたのがThe Heavyの”Same Ol’” という曲です。CMの音楽プロデュースを担当した冨永恵介氏はこの曲について、壮大なイントロはどこか演歌を感じさせ、その後の歌い出しは英語詩のロックというバランスがうまく伝えたいイメージにはまったと発言しています。「映像に音楽がマッチしつつもちょっとズレていることがより印象的になる可能性があると考えている」とも発言しており、意図的に「ズレ」を生み出そうとしていることが分かります。

Q3 燕楽とはどのようなものですか?
A3 中国宮廷での宴饗(えんきょう)音楽の総称のことで、宴楽とも書きます。南朝宋代の宮廷俗楽のことを指すこともあります。唐・宋代の胡楽(中国古代北方民族の胡の国で行われた音楽)を盛りこんだもので、国家的祭典や宮廷の祝宴で皇帝を賛美するために演奏されました。日本の雅楽は、唐代の燕楽が伝来したものといわれています。雅楽とは奈良・平安時代に完成し、宮廷・寺社などで行われた音楽や舞のことで唐楽、催馬楽、東遊びなどがあります。


Q4 バイクの排気音はどのように変えるのでしょうか?
A4 マフラーというバイクの後方の排気口を覆う金属製のパイプの長さや太さによって変えることができます。バイクの排気ガスは高音であるとともに高圧力であるため、マフラーを抜けると急激に膨張し、周囲の空気を振動させます。その時に発生するのが排気音です。マフラーが太い場合は低音になり、マフラーが細い場合は高音になります。マフラーが短い場合は音が大きくなり、マフラーが長い場合は音が小さくなります。またマフラーの先端の切り口の形を変えることでも、音の響き方を調節することができます。

Q5 共鳴音や阻害音のように、イメージを表す音は他にどのようなものがありますか?
A5 共鳴音と阻害音は子音における分類ですが、母音にも同じような分類があるので紹介します。例えば後舌母音は日本語で「あ、お、う」のことで、発音時に舌が後ろに下がる音で「大きい」「甘い」「暗い」などのイメージに繋がります。反対に前舌母音は「い、え」のことで、舌が前に出て発音され、「小さい」「すっきりした」「明るい」などのイメージに繋がります。このように、発音するときの舌の前後と高さも、その音のイメージに影響していることが分かっています。