プロローグその２

目覚めると携帯がクツを履いていた。

おそらく着信かアラーム作動で爆音を奏でた為に、
寝ている私に玄関まで投げ飛ばされたのであろう。

携帯からクツを脱がし、爆音の原因を探ると、
それは例のゲーム会社に勤める友人からのメールであった。

「メール見た？」

今見ているところだ。なんという馬鹿馬鹿しい内容だ。
寝ている人間に「寝た？」と聞くようなものではないか。
削除しようとボタンに手をかけると、さらに文章が続いていることに気がつく。
「下のほう見たい」
呪文を唱えたが詠唱失敗のようだ。
やむなくスクロールボタンを押してみると、次のようなことが書かれていた。

「DSi持ってるやろ？
　例のゲームはDSiウェアなので、ダウンロード販売専用なのよ。
　５００円でダウンロードできるからプレイしてみて。
　ヒントは出さないから自力でクリアしてたもれ。」

「たもれ」を見た瞬間に、また携帯にクツを履かせてやろうかと振りかぶったが、
「５００円で遊べる」との情報が私の右手に待ったをかけた。

なるほど…５００円でゲームが買えるのか。

光栄スーファミソフトの消費税より安いというこの事実に、
時代のうねりと澱みを感じずにはいられない。

ともあれ、これは朗報だ。
あとで、さっそくダウンロードしてみよう！

プロローグ

ゲーム会社に勤める友人から一報が届いた。

新しく作ったゲームが近々発売されるから、購入してプレイして欲しいとの事。
プレイするのは構わないが「購入せよ」とはなんとも大層なミッションではないか。
こちとら家族を養うので精一杯のくたびれた会社員であるが故、

何千円もするソフトを買う余裕など皆無なのである。
ただでさえバオバブペプシを飲みすぎて財政難だというのに…。

彼からのメールはゴミ箱に移動した。

時刻は午前２時。
軽くため息をつき空を見上げてみるが、星一つ見えない。
そうか…。室内だからか…。
さあ眠ろう。こんな寂寞とした夜は眠るに限る。
そして良い夢を見よう。
目覚めることを拒みたくなるような素敵な夢を見よう。