レイフ・オヴェ・アンスネスのリサイタル(東京オペラシティ・11月25日)の感想 | まるこブログ

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先週末の、N響との素晴らしいシューマン協奏曲(←こちら参照)の記憶も冷めやらぬ中、昨夜はリサイタルに行った。


レイフ・オヴェ・アンスネス


1970年生まれのノルウェーが誇りとするピアニスト。

おそらくこの世代で、世界に彼を超えるピアニストはいない…と、私は思ってるし、否定する人も少ないだろう。




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東京オペラシティのコンサートホールへ!


一昨日から寒さが一気に増していて、コートの襟を立てて向かった。


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開場されて入ると、華やかなクリスマスのしつらえ。

この両脇では、ノルウェー製品のプロモーションも行われていた^^;

客席には、ノルウェーの大使館関係者らしき人々も目立ち、やはりアンスネスは国家の誇りなのだな…と再確認する。



ちなみに何年か昔の8月に、ノルウェーのベルゲンに作曲家グリーグを訪ねて行ったことがあるのだが、その時の写真を見直したら、なんと昨夜と同じコートにマフラーを巻いていた!

あの年は雨ばかり降る寒い夏だったとはいえ、8月で昨夜と同じ服装が必要なノルウェー…

もしやアンスネスには、東京の冬など「夏」感覚なんだろうか???




そんな話はさておき…


前半の演目は、シューベルトとシベリウスだった。


シューベルトの冒頭から、「あぁ…これがアンスネス…」と胸が熱い。

なぜって、シューベルトの音楽しか聞こえてこないのだ。

アンスネスは、まるで霊媒師のように作曲家本人を呼び出し、声をそのまま伝えてくれている。


そうなのだ…

これだからアンスネスは、レパートリーの幅が恐ろしく広いのだ!


自然で、変な力がどこにも入らない、とても端正で美しい演奏姿のまま、スッーと作曲家の本質を呼び覚ます。

彼は「自分語り」をしない。

そりゃ、端々にアンスネスらしさは出るけれど、その個性は自然と滲み出る彼の人間性の温かさであって、作品に何か個人的な主張を乗っけることは極力避けているように見える。

だから、シューベルトはシューベルト、シベリウスはシベリウス…が、聞こえてくる。




ところで私には、来日すれば必ず聴きに行くピアニストが、現在3人いる。

1人は、勿論このアンスネス。


もう1人は、ダニール・トリフォノフで、彼はまさにアンスネスの対極にある天才だ。

トリフォノフのリサイタルでは、ひたすら彼自身を聴くのが楽しみで、たとえドビュッシーを弾こうとも、リストを弾こうとも、そこに「あぁ…ダニール…」という本人の煌めきや、言いたくてたまらない何かが濃く加算される。


もう1人は、ユリアンナ・アヴデーエワで、彼女のスタンスは、アンスネスとトリフォノフの中間といった印象。


三者三様に、私は毎回ワクワクしながらリサイタル当日を待ち、いざホールで演奏に接すると、知らないうちに口角が上がりっぱなしになるのだ!




話が横道に逸れてばかりで申し訳ない…f(^.^;)



アンスネスの弾くシベリウスは、これまたとんでもなく美しかった。

「即興曲」から溢れる “雪の結晶” のような美音には圧倒されたし、N響のアンコールでも披露された「ロマンス」は、ホールの違いもあり、昨夜の方がより深々と響いていた。


後半のドビュッシーが、これまた透明感とダイナミックさが共存した超名演。


ショパンもまた、はっきりとドラマの見える演奏で、彼の奏でるフレーズごとにホールの空気は色を変え、自在に動く感じがした。

同じオペラシティのホールで、これまでに何人ものピアニストが弾くショパンのバラードを聴いてきたけれど、素晴らしかった数々の記憶を辿っても別格と思える音楽だった。


アンスネスって…本当に凄い。


どこまでも進化し続けるピアニスト、音楽の求道者だ。



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                  ↑
昨夜のアンコール。

なんとショパンの「英雄」に、シベリウスの「悲しきワルツ」だ。


「英雄」は、先月ユリアンナ・アヴデーエワのリサイタルでも聴いたけれど、さすがはショパン・コンクール覇者の才媛、考え抜かれた曲想とテクニックに魅了された。

一方アンスネスの「英雄」は、まずその余裕に唖然とした。

この人はなぜ、この端正な姿勢から、ここまで幅広い音を出せるんだろう?

こんなにも “ゆったり” した気分で「英雄」を聴くのも珍しい体験だった^^;


来年1月27日(金)の早朝に、NHKのBSプレミアム「クラシック倶楽部」で放送されるそうなので、それも楽しみに待たれる!!



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終演後は、お疲れのところにサイン会も。

私はいつも、どんなに好きなアーティストでも、サイン会には並ばないし、楽屋の出待ちもしないので(←好きな人には自分から近づけない、むしろずっと遠巻きにしていたい、要するに「怖がり」なのだ^^;)、、、普通に帰った。


まぁしかし…これだけ毎回皆勤賞ものでリサイタルに通ってるアンスネス、トリフォノフ、ユリアンナ…に関しては、一度くらいサイン会に並んでもいいかな…

いや、やめとこう^^;

素敵な演奏を聞かしてもらったら、もうそれでいい…


ありがとう、アンスネス!!!







レイフ・オヴェ・アンスネス - ピアノ・リサイタル
2016年11月25日(金) 19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール


【プログラム】


シューベルト:3つのピアノ曲 (即興曲) D 946



シベリウス:即興曲第5番 ロ短調


シベリウス:3つのソナチネ 

     第1番 嬰ヘ短調 Op.67 


シベリウス:2つのロンディーノ 

     第2番 嬰ハ短調 Op.68


シベリウス:ロマンス 変ニ長調 Op.24-9 

 


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ドビュッシー:版画

      Ⅰ.塔 Ⅱ.グラナダの夕べ Ⅲ.雨の庭



ショパン:バラード 第2番 ヘ長調 Op.38


ショパン:ノクターン 第4番 ヘ長調 Op.15-1


ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52